― 草屋 ―
[ふわり、と先触れのように白檀の香りが漂う。]
こんにちは、コーラ。
今日もよいお昼寝日和でございますね?
何やら騒々しい声が聞こえた気がしますが、お取込み中でしたかねえ。
[「草」と書かれた看板をくぐって、白い狐が顔を出した。あちこちに生えている草を踏まないよう慎重に、それでいて優雅に舞うような足取りで店の奥へと歩いてくる。
いつものように体を横たえている草屋の主人にそう挨拶して、]
ところで、ここは榊なんぞは扱っているのでしたっけ?
もしあるなら、枝を何本か頂きたいのです。
お代は……今日はこの水しか持ち合わせがないのですが、それでよろしければ。
[そう注文した。
一体何本持ち歩いているのか、湖水入りの小瓶をコーラの鼻先に差し出しながら、店の中に生えている草を見回した。草というより庭木だが、果たして扱っているだろうか。]
(56) 2019/10/08(Tue) 23時半頃