[「そりゃあ大変。」「取ってらっしゃいよ。」
これっぽっちもそんな事を思っていない間抜けた声が、欠伸でもするかのような調子で奏でられる。]
[何処で落したの、なんて御節介を焼こうものなら怒られるのは分かっているので、閉口の儘。裏口の扉に凭れ掛かりながら赤い影が揺られるのをぼんやりと眺めていたのだが。>>43>>46おや、剣呑。]
(喧嘩っ早い坊ちゃんの事だから、直ぐに手が出そうなのはこれまた明瞭。遠目に見えた、相対する影の事は此処からじゃ分からなかったが、高見の見物をしたい気持ちは大人として抑えて、ゆったりとした足取りで近付いてぱん、ぱん、と、乾いた掌を叩き、そして、静止した。)
……そこまで、そこまで。ウチを通ってっていいから、
さっさと坊ちゃんはお家に……。
[そこで止まったのは、その相手をまじまじと見詰めたから、だった。けれども。まるっきり子供扱いした所為で不機嫌を醸し出した、赤色の坊ちゃんの御蔭で我に返る。彼の事は、御当主様に怒られるよ、と一蹴すればすごすごと引き下がる。それを知っていたので、今回も常套句としてそれを使う。]
(案外と扱い易いのが、助かる。)
(55) 2016/06/14(Tue) 14時半頃