………"蝶"の心地はどうだ?
相手を好きなように出来る、心地は。
[後処理も済ませた後、脱ぎ捨てた衣服を手繰り履きながら問い掛けた。その表情は、きっと相手からは見えない。まだシャツの前を寛げたまま、耳打ちの為に相手の肩を抱き、引き寄せて、唇と耳を重ねる。
"これ、やるよ。"
声音は、そう動いただろう。同時に五ミリ程の厚さの紙を、白い着物の袖に隠す。それは後から確認すれば紙の金だと分かるはず。]
それは好きに使え。ただし、端金でもサービスに対するチップでもない。
すぐに使えば煙草にも菓子にもならァ。集めれば……ま、使い道は考えろ。
………4日後だ、それまでは毎日顔を出そう。
お前がそれをどう使うか教えてくれよ。
[それはそれは、酷く長く、遠回しで、身体を張った、遊び。
こんな戯れは、此れで終いの心算、だけれど。
蝶が丁であるのか己が丁であるのか惑った男は、知らず知らず優しく唇に触れていた。
丁を置いて、また次の花へと。
明日が最後だと知らぬ身はふらりと籠を後にする。*]
(49) 2014/09/17(Wed) 21時半頃