[カラン、と扉につけたベルが音を立てた。バイトの青年が入ってくる。ベネットは、密かに溜息をついた。
本当は今日は、新刊整理で開店前に来てもらう筈だったのだ。けれども来ないので、結局自分一人でやらなければならなかった。この子は遅刻もミスも多い。
そもそも、元来気の長い方ではないのだ、ベネットは。
本は好きだが、だからといって大人しいわけでもひきこもりがちなわけでもない。外で泥だらけになって、帰りに鞄から取り出した本を読みながら歩くような、そういう子供であった。
そろそろ我慢がならなくて、つい素のままの口調で悪態を吐きそうになる。だが、辞められても困るのだ。小さな本屋といっても、一人で回せるわけではない。街の本屋だから、歩くことの難しい老人に本を持って行ってあげることすらある。
本気でバイトを募集して首を切ってしまいたいと考えながら、その彼に声をかけた。]
僕は外に本を届けてくるから、店番よろしくね。
それと、もうちょっと早く来てくれるとありがたいんだけど
[青年は小さくすいませんと呟いて、らんぼうにレジに座る。
ベネットは心の中で舌打ちをしてから、街へ繰り出した。]
(34) 2014/10/01(Wed) 03時半頃