― 朝凪亭 ―
[無常にも、朝はやってきます。
冷たい井戸水で顔を洗い、犬のように首を振ると、水滴がきらきらとまだ暗い空に散らばりました。
再び眼鏡をかけるわずかに当たった吐息がレンズを曇らせます。
冷たく静かな町は、つい先日お祭り騒ぎがあったとはとても思えないほど静かで、くらいものに見えていました。
ハナにできるのは、日課である水汲みだけです。]
[ひと仕事を終えても、かまどに女将さんの姿はありません。
母親がどことなく疲れた顔で、ハナを労いました。
『今日はあとできょうかいに行くからね』
確かにそういっていたのですが、少女は生返事をして通りすぎてしまいました。
隅っこ、いつもの従業員が食事を摂る席に習慣で座ります。
やがて、階下にヤニクが降りてきました。
ハナはぼんやりと窓の外を見て、それに気づく様子がありません。]
(32) 2013/12/24(Tue) 22時半頃