[――ことん。
小さく聞こえた音に薬師は顔を上げる。勘定場から降りれば、音の方へと近付いて行き、風を受けて郵便受けの中で揺れる一通の手紙>>#1を見付けた。
故国の家族からかとそれを取るが……開いてみれば、何とも馬鹿げた内容に小さく鼻を鳴らす]
……鼠小僧。
[趣味の悪い悪戯だ。しかもわけが分からない。こんな事をして、何が楽しいんだ?
そもそも薬師の大切な物は全て全て海の向こう。"宝物"なんて、わざわざこんな辺境の地に持って来たりはしない。此方で宝物と呼べる程の物を手に入れてもいない。
であれば、薬師の宝物を盗むだなんて、そんな事が出来る筈がない。
――そう、思うのに。
何やらざわりと心が波打つのは、どうしてだろう]
……思い出して、ごらん……、
[手紙に書かれた最後の一文を声にしてなぞれば、一つ舌を打ち。薬に欠けはないだろうかと、棚を確認する事にした]
(32) 2015/01/20(Tue) 09時半頃