[ぽつりと落とした自分の懸念に、気のせいだ、などと言われたところで。>>28
この子供が――あと数ヶ月も経たないうちに、自分を置いてってしまうと。
自分は誰よりも、知っているはずなのだから。
なかば恨むような心地のまま、腕を掴んできた手には、思わずと身体が震えた。拒絶される前にと、手早く先の答えを紡ぐ。]
……置いていける訳がないだろ。
おまえが居なきゃ、…駄目なんだ。僕は。
[言葉だけを取れば、とうてい弟に掛けるものではない。それでもどうせ理解しているだろうと、こじ開けられた本心を隠しもせずに、言葉に乗せた。
かといってどうすれば良いかなんて、濁された返答から汲み取れはしなかったのだけれど。]
………、
[弟が常のように拒絶したならば、そのまま退がって距離を置く。
もしもめぼしい抵抗がなかったとしたら、回した腕を強く引いて、その肩口に再び顔を埋めるだろう。
どうしても今は、顔を合わせたくはなかった。
すっかり常の調子に戻ってしまった弟が、僅かに憎らしくて仕方がない。自分はまだ、ようやく呼吸が落ちついたばかりだというのに。]
(31) 2014/07/04(Fri) 03時半頃