「…きゅ、…休校…ですか…?」
その声色は僕にしては大きなものであったかもしれない。据えていた腰を態々に離し、此方へ寄って来た彼女には、彼女の目付きには、心を萎ませ一歩後退りをしてしまった。だけどそののちに告げられた言葉には酷く狼狽。見開かれた瞳はいちど大学へと向けられはしたけれど、直ぐに彼女へ戻します。
「…そういえば、そうだったかもしれません…」
答えは曖昧なものであったけれど、脳裏には確かなビジョンを。気安さを兼ねた気軽さを以って話し掛けてくれた目前の方には、無駄足をせずに済んだと小く感謝の言葉を送りました。「教えてくれてありがとう」。ぼやけた視界を正すように二三目を擦り、また僕は口を開くのです。
「…君、同じ大学…ですよね?僕はティソ・フィノデル。…あなたの名前をお聞きしても、良いですか?」
恐る恐るとさえ聞き取れる言葉の数々は、彼女にはどう取られてしまうのでしょうか。下がる眉は隠しきれずに、緊張で手汗を滲ませる手の平を硬く握りました。**
(30) 2014/10/01(Wed) 03時頃