―回想/花と名乗る女と―
[拗ねた風に同意を求める様>>0には、一つ鼻を鳴らすだけで。夕飯の献立を忘れるのは、ただの老化じゃないのか、なんて。意地の悪い返しは口にはしない。
――見たところ、彼女の年の頃は自分と然程変わりない様に思うから。そんな事を口にしたのなら、そっくりそのまま返ってきてしまう。
まあそれに、そもそも彼女がそんな反応を求めているとも思ってはいない。素直に答えるのであれば、随分強欲な女だと、呆れるばかりだ。らしいといえばらしいのだが]
忘れているのなら、思い出しますよ。
……それが本当に大切なら、思い出せるんじゃないんですか。
[父と母と、弟と妹。ちらとその姿を脳裏に思い描けば、その姿はいつまでも鮮明なまま。家を出てもう四年にもなるから、勿論その姿は変わってしまっているだろうけれど。彼等の事を忘れる等、ある筈が無い。
そう確信してはいるけれど、それでも、もし忘れてしまったのなら。そしてそれに気付けていないとしても……どうやっても思い出してやると、半ば意地の様に考えて]
(29) 2015/01/22(Thu) 09時半頃