…で、あんたは鼠小僧に会いたくて会いたくて、会いたくて。
遥々、とおーくまで出向いてきたクチかい?
この街の人間じゃあないだろ。
慣れない言葉なんてさ、使うもんじゃないと思うけど。
[その言葉がどこか滞って聞こえるのは、耳に馴染みの無い言葉ゆえか、それとも使い手が慣れぬゆえか。
彫深い顔も高い鼻も。明るい色の髪さえ見えもしなければ、人間の情報となるのは声のみ。
会話が始まったのを良い事に、女の影に隠れてそそくさと立ち去る何人かの気配には 気付いていたけれど、声を掛けることはしない。
先の今で声を荒げて、騒ぎにでもなったら堪らない。
・・・なんせ、この場所だって無断で拝借してるんだから。]
今日はしみったれて、困るの困らないのって。
[置かれた小銭を手で探り当てて、ひとまず袂へ放り込んで。
随分と軽く持ち上がる袖に、眉を寄せる。
茣蓙の上で足を組み直しては、さてそろそろ場所でも変えようかしらと 三味線を抱え直した。
お捻りをくれた“お客人”の存在を、忘れた訳じゃあないけれど。]
(29) 2015/01/18(Sun) 12時頃