『 』
『 』
[慰めるように。抱き締めるように。背後から肩を腕を走る、甘い抱擁。白い花びらが、舞って、散って。目を見開く。上がった悲鳴は、自分のものか、他の誰かか。]
やめろ……煩えんだよ!黙れ、ッ!……っ、アイツを、
[叫んで毟り取る。引き千切った後から、零れ落ちる赤い滴と噎せ返るような花の香りが舞って。
床に押さえ付けられた。首筋を剥き出しにされる感覚。錯乱した意識は、最早何に抵抗しているのすら分からない。懇願に近い拒絶が、喉を割る。やめてくれ、]
アイツを、オレの中から、連れてくのは───
[ぶつん。
痛覚に信号が走って、唐突に意識が沈んでゆく。それきりどうなったのか覚えてはいない。
ただ、両腕に咲いた白い花達だけが、さやさやと甘い匂いを放って揺れていた。
──泣かないで。かわいそうなシーシャ。まるでそう言いたげに。]**
(26) 2014/09/07(Sun) 04時頃