[泣き喚く少女はまだ気付かない。
飛び降りる直前に集っていた野次馬が1人もいないこと、それどころか市街にたくさんあった人影が霧散していることにさえも。
嗚咽を零し、右手首を左手で痛いほどに握りしめた。
あんなに苦しんだのに、なおも死ねない自らの運命を呪うように。]
……っぐす、……ぅ、え?
[涙で滲んだ虚ろな碧眼が、片膝を地につけて身を屈めながら自分へと穏やかに声をかける男を映す>>22。
見慣れぬ異国の顔立ちはつい先ほど出逢ったばかりの男とあまりにも似通っていた。寧ろ、本人だろうか。
ならばここは。最後の希望としていた、死後の世界でさえもない。
普段の自分なら泣きじゃくっているところを見られ、羞恥で飛び上がったかもしれないが。
死ねなかったことへの思い故か、全く見知らぬ相手ではないということが拍車をかけたのか。
心配してくれる男を見つめながら再び涙が流れた。]
(26) 2014/10/28(Tue) 18時半頃