……お祖父様にも困ったもんだ。
[放り出したのは、今時古風な布張り表紙の冊子。
31世紀になった今も引き継がれるそれは、所謂見合い写真。
「良家の娘さんだぞ。
一度会ってみなさい、絶対気に入る。」
使い古されすぎて擦り切れるんじゃないかという常套句。
痛む頭に、ひっつめた長い黒髪を解き。
皮張りの背凭れに身体を預ければ、深く息を吐き出した。]
気に入る気に入らないの問題じゃないんだけどな。
こればかりは何度言っても、わかってもらえそうにない。
[いくつもの分野に系列会社を持つ、劉コンツェルン。
旧財閥解体後も富の繁栄を極め続ける現在進行形。
二十代後半という若さでその一部の企業の社長を任され、行く行くはという噂を裏付けるだけの業績を上げている。
現会長である祖父との仲も良好。
ただし、己が同性愛者という一点を除いては。]
(23) 2015/11/10(Tue) 20時半頃