『舗装された石畳の道に、高らかな足音が響く。
少女はぱっと顔を上げ、足音の方へと目を向けた。
彼の美しい金色の髪が、眩い太陽の光を浴びて輝いている。
まさしく彼こそが、少女の待ち望んでいたその人であった。
手元に集めた色とりどりの花を慣れた手つきで編みながら、
少女の瞳は彼を捉えたまま離れない。
やがて彼も恐ろしい戦争へと向かう日がくるに違いない。
出立のその時、凛々しく敬礼をする彼に、
祈りと願いを込めた花輪を捧げよう。
それはきっと、彼の髪の色によく映えるだろう』
[安く質の悪い紙が万年筆の先を幾度も引っ掛け、その度に染みを作る。所々滲みの酷い箇所を見て、思わず溜息を吐く。
これは誰に渡すわけでもい文章だ。
私小説でも無ければ、戯曲でも無く
――そう、文章と評する他は無い、ただの文字の羅列だ。
つまり汚れても読めなくても構いはしない性質のものだが、
それでも染みは好ましくは無い。]
(21) 2014/11/11(Tue) 20時頃