人狼議事

301 十一月うさぎのないしょ話


【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト

 ― 最寄駅より ―

[木枯らしが足元を駆け抜けていく。
 空は秋特有の、濃い水色を刷毛で塗ったような凹凸の無い晴天だった。

 重いロングコートを纏う五体は北風にもめげないが、四つ折りにした紙片を摘まんだ指先からは色が抜けていた。冬の足音が近づく11月にあって、指の末端まで血熱を送り届けるには若さが足りていなかった。]

 寒いですねぇ、耳の奥がキーンと鳴ります。
 
[電車から降りて十分も経っていないのに音を上げる。
 骨の芯まで冷やした冷気は、肺から呼気を追い出したように咽喉からも独り言を搾り上げた。耳の中まで北風に洗われているようだ。
 自分よりもゥンと薄い紙片はピラピラ、ペラペラと悲鳴を上げっぱなし。
 読み辛さに眉尻を下げ、黒革のビジネスバックを小脇に抱え直すと路傍で紙片を拡げた。

 最寄り駅に丸が付けられ、更にそこから赤いインクが蛇行し、路地へと向かっている。]

(19) 2019/11/21(Thu) 23時半頃

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