―回想―
竹林に逃げ込み、追手が過ぎるまで静かに身を隠した。
追手が去った安堵からかへらりと笑い抱き着いてくる彼>>7に対し何があったのか問いただした。
彼が素直に事の顛末を話したならば「馬鹿はお前だろ」と注意をしただろう。
「春松には大切な人がいるだろう。父ちゃんを心配させるような事はするなよ。」
と抱き着く彼に微笑み優しい口調で伝えた。
―家族―
自分が昔に失ったもの。彼にそれがまだあるなら失くさぬよう壊さぬように守っていってほしい。そう思うのはやはり繋がりに憧れを持っているからなのだろうか。屋敷の主人が義父になってくれていればまた違ったかもしれない、春松のように。
「そうだ、茶屋で麩の焼きを買ったんだ。あと逢引とは何だ、そんなことをした覚えはないぞ。」
少し照れくさそうそうに笑いながらそう付け加え、春松に麩の焼きを分け与えた、彼の好みに合うなら受け取って貰えただろうか。
(16) 2015/01/22(Thu) 03時半頃