―イアンとの別れ―
[空中でイアンに接した瞬間、激しい電撃の余波が狼へと襲いかかった。
ぶすぶすと焦げ付く臭いを発しながら、背に触れる熱い体。
力を失った『人』の肉体。
肉体を貫く雷電に全身を痙攣させながら、辛うじて地面に着地し、四足を踏ん張った。
恐らくは、周囲の全てが水に覆われていたためだろう。
着水すると同時に、一時的な雷撃は周囲に拡散され弱まっていく。
呼吸を整えろ。そう言い聞かせ、歯を食いしばりながら狼の早い呼気を収めていたところで。
背中の上から、よく聞きなれた声が自らの名前を呼んでくる>>3:149]
……………………。
[初めて背に乗せた>>3:123>>3:124時よりも、はるかに力を失っている。
あの時も同じように呼びかけられたが、それとは異なる状態なのは了然のこと。
狼は、答えない。ただ、挙げられていく名前の一つひとつを、痛みに耐えながら耳にする。
やがて、聞きとれない声を1つ挟んで挙げられた、知らない名前が――――]
(10) 2013/06/19(Wed) 01時半頃