[コロコロ、コロコロ。
口の中で飴を転がしながら廊下を進む。手には紙袋に詰められた、血で濡れたトレーナーが一着。飯のついでに、と隣から取ってきた物だ。持ち主が分かるなりいっそ燃やしてやろうかとも考えたが、すんでの所で思い留まった自分は中々に偉いと思う。
それでも洗って返してやる義理は無いので――そもそも自分が借りたものでも無いのだし――固まった血がこびり付いたままのそれを持って来たのだけれど]
……おや、丁度良かった。
[そうして歩いていれば、廊下に蹲る目当ての人物の姿>>5。部屋を尋ねたものの反応が無いので困ってはいたのだが(これを持ったまま食堂に入るのは流石に気が引ける)、これで目的を果たせそうだ。
――彼に以前、ナイフで斬りつけられた事はしっかりと覚えている。本音を言うならば、話しかけたくも無い所ではあるのだけれど]
オスカー、これ返しますよ。
[嫌そうな声を隠そうともせずに、震える相手の肩も無視して。丸まった背中に当たるように、手にした紙袋を放る。
彼が泣いていようとどうしようと、自分には何の関係も無い事なのだから。
彼が特に引き止めない限り、そのままこの場を去って食堂へと向かうであろう]
(10) 2014/06/29(Sun) 22時頃