[街の外れの湖のほとり。そこに一軒のあばら屋が建っている。
傾いた柱にも、壁の代わりとばかりに掛けられた簾にも蔦が這い、廃墟と言って差し支えない様相で辛うじて建っているその小屋が、イナリの住処だった。
風通しの良好な――いささか良好過ぎる物件だが、しかし全身をもふもふの柔らかな毛で覆われているイナリは一切気にする様子もなく。火にかけた鍋の中身を柄杓でぐるぐると掻き混ぜている。時折掬って粘度を確かめては、また掻き混ぜる。それを延々と繰り返している。
鍋の中身は、夜空のように青い。
透明な湖の水と、星を砕いたような青色。それからいくつかの、磨り潰した草の根やら何かの粉やらを混ぜて、どろどろになるまで煮溶かして。
粉屋で見立ててもらった青色>>0:23は、少し他の材料が混ざったところで濁ることなく、一層深さを増していく]
(0) 2019/10/10(Thu) 01時頃