[体を這う手の感触に、シーツ越しだというのにぞわりと皮膚が粟立つ。咄嗟に嘔吐きそうになる胃を、喉を押さえて、耐える様に強く目を瞑った。
は、と。短い息を何度も吐き出して、込み上げてくるものをやり過ごす。いっそ吐いてしまおうかとも思うが……少なくとも彼の前でだけは、もう惨めな姿を晒したくはなかった]
さ、わるな、
[彼の問いには答えずに、何度も繰り返した言葉を再び口にする。……それが果たされた事は一度も無いと、分かっているのに。
随分遅れて振り払おうと動いたその手には、どうにも力が入らなくて。彼の手に辿り着く前にシーツにぱたりと落ちた。
握り締めた右手は、例の如く傷が開いて血が滲んでいる]
さわら、ないでくれ。
――もう、嫌だ。
[この言葉も、いつだか彼に向けて言った気がするけれど。あの時とはもう随分と違ってきてしまっていた。
シーツの下、顔を覆って。涙と、汗と。その下にある歪んだ顔につくづく嫌気が差す。
……嗚呼、こんな事なら]
(+27) 2014/07/03(Thu) 21時頃