194 花籠遊里
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/*さかなしんでる
(-0) 2014/09/21(Sun) 02時頃
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[森の奥の奥の小屋には、小さな月が、堕ちている。
なんて、まるで御伽噺の様な――終わりで、始まりを。]
(+9) 2014/09/22(Mon) 01時半頃
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――…亀吉。
[嘗て、ある城に仕えて居た頃に。その主に授かった小屋。 その風貌はまるでヘンゼルとグレーテル、かの魔女の住む家だと嗤う者も居るだろうか。 されとて親も、形見も、何も無い自分には初めての贈り物。初めての自分のもの。家に自分のものを揃えて置きたいと思うのは――そう、ごく自然の事だと。 頬に当たる温風が首筋さえ撫で、森の奥へと流れて行く様を横目に、彼の不安>>+3>>+4を剥がれぬ濡れ紙のように脳裏に張り付けながら、ただただ先を想い踊る胸を抑え。
その兄妹の御伽噺のように、道標のパン屑は無い。 野薔薇に抱かれる塔へ向う王子の為に、誘ってくれるものさえ無い。 そう、この秘密基地を知るのは夜に微睡む月と、森の影。 ――そう、泡沫の様に切ない幸せを望む二人と …影、のみ。
宵闇は、館のみに留まらず。]
(+10) 2014/09/22(Mon) 01時半頃
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― 現在 ―
…ん、……あ。
[ぱちり。自分で閉じた覚えの無い目蓋を押し上げる。 見えたものは仄暗い世界。感じたものは冷たい床。
――嗚呼、籠から出たものは、所詮夢だったのか。
そんな絶望に似た情を胸に燻らせながらも身体を起こそうとした時に、一閑後頭部に響いた痛み。まるで夢では無いと示してくれたそれは、ハッピーエンドでさえ無いと暗に指し示しては嗤ったように思えた。
今一度床に突っ伏したならば、冷たい感覚にもちいさく呻きでも上げただろうか。]
…どこだ、ここ。
[確か、確かと思い巡らす。 かの淡藤が――否、好い人が、腹を空かせているだろうと街へ出たその先で。 好い人の為に、先ずは休める物を集めようとしたその矢先に。 立ち憚る影はまるで走馬燈。数人の影は自分を包み、軈てはその影を、…手元の狂気を振り翳し――記憶はそこで闇に呑まれて消えている。]
(+11) 2014/09/22(Mon) 01時半頃
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…帰らなきゃ。
[ただ自分を突き動かすのはその衝動。彼の不安気な眼差しが胸を射抜いては、焦燥感がせり上がり。
そう、帰らなくては。自分達の家へ。 これから綴る、物語の行き先へ。 ――そうでなければ、月が、泣いてしまうから。
然し重さを伝える四肢は、妙な金属音と共に。ぐるりと暗がりを見渡し見えたのは、自分と同じ様な人と。 ……この町に在ると言う、小さな娼館の名前、だろうか。]
…――ちょっと、……笑えねえよ。
[身を売られたか、売られる道中か。真相は定かでは無いけれど。 翅を未だ持つ蝶を閉じ込めるような鉄籠は、蝶の胴を押し当てても揺らぐ事は無く。
幼い記憶の奥底で、じんわり思い出すは近辺に住む悪趣味な金持ちのこと。 嗚呼、これじゃあ物語は綴れないと。震える唇は彼の名前を紡ぐ。]
(+12) 2014/09/22(Mon) 02時頃
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― 人売りの馬車 ―
[皮肉な物だと、一人自嘲した。 籠から逃げ出した蝶は形を変えて花籠へ、戻る事になるだなんて。
目前で繰り広げられるは花の売り買い。人による人の欲の為の、花の売買。ひとつひとつ乱雑に摘み上げられる花達は、それまた乱雑に分別されては要らぬ根を、足を伐採される。――契約書と言う名の鋏に依って。
自分まではまだ数も在るだろうか。 恨めし気に役人を見ることはあるけれど、売られる花には一瞥もくれず。共に咲くことになるだろう花のことなど、知りたくも無いと顔を背けては茎となる前の手足に力を入れ
――そうしている内に聞こえて来た声>>+13には、思わず大きく顔を上げた。]
(+21) 2014/09/22(Mon) 17時半頃
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…キミこそ…、…亀吉を知ってるのかい。
[その姿は花売りには到底見えず。ただ傲慢な売り人買い人の側に立つ彼はまるで「花」。まさかと睫毛を震わせるけれども、返答を貰わずには声も出ず。 ただその代わりに、否元から懇願する気は有ったのだろうが――急いだように言葉を紡いだそれは此処から出る術を尋ねるもの。
「ねえ、ちょっと、ここから出してくれない」
なんて、冗談めかし、苦笑混じりに籠を押す。 まるで少しだけで良いからと、無垢な子供が境界線を知らずに大人に疑問を掛けるように。
…そんな事をすれば、子供で無い自分は、地位の持つ立場でない限り。此処の役人が余程の「甘人」でない限り。彼の身に降り掛かるモノが視えているはずなのに。]
(+22) 2014/09/22(Mon) 17時半頃
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[ただ脳裏に浮かぶ朧月は今や好い人。 其れがどうにも泣いているような気がして、かの瞳が魅せたいつの日かの寂寥が余計に気持ちを焦らせる。余裕を見せたつもりの言葉はただ早歩きしているようにも思た。
然しそれでも、気のせいかもしれないけれども。 星に宿されたとんでもない出来事が、堕ちた月へと降り掛かる様な胸騒ぎがした。]
…――俺、急いで帰らなきゃならな、…いんだけど…さ。
[ 一刹那。 気持ちを誤魔化し弛めた頬を引き締め、神妙に言の葉を紡ごうとしたその視界の隅にて。遠い遠い道の果て。大きな屋敷に造られた窓辺>>+20。
そこに彼が、居た気を持ったならば。 …今や花に成り掛けた蝶の顔は強張り、ただその紺瑠璃を酷く揺らし咽は水に飢える。]
(+23) 2014/09/22(Mon) 17時半頃
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[こてりと。緩にちいさく余所余所しい返答へ首を傾げた。 男はただ前籠で花や蝶が行方不明になっているとは梅雨知らず、無知故に訝しむ視線さえ投げながら――そうして来たる返事にはこくりと浮かんだ疑問を腹に降ろしては「何かが在った気がした」窓辺から視線を外す。]
―――み、…水揚げ、
[ぱちり、ぱちりと瞼は瞬いた。 廓に通って居た自分が知らぬわけではない其れ。以前酒場にて小耳に挟んだことによれば其のような花を買った人さえ。]
……それ、一歩間違えば俺…ヤバいでしょ。
[伏せ掛ける瞳は凄みさえ垣間見え。自分が自分の気に入らない輩に抱かれること、そしてその姿なんて考えたくも無いと、首を振り髪を揺らし。ひとつ、瞬き。
首筋に掛かる髪先に擽ったさを覚え、その首元へと手を置いたのならば。軈ては吐息を空に混ぜ、彼の提案>>+24にこくりと首を縦に振った。]
……裏切らないでよ。
[そんな言葉を手土産に。]
(+25) 2014/09/22(Mon) 20時半頃
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まって藤之助さん筆早い
(-47) 2014/09/22(Mon) 21時頃
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[何故そんなにも尽くしてくれるのかと、疑問は心中を渦巻くけれど。 その後の月言葉が鼓膜を叩けば、「キミは、」と。]
もしかして、キミは。
[行方知れぬ花のことは、知らないけれど。確か櫻が数本の花を教えてくれたと、和やかな宵闇を脳裏に。
軈てその後のの姿も彼の主人の元へと消えたならば、少しして鉄籠から出されることもあっただろうか――]
………鶴、と。
[そんな呼名を宙に吐き、ひとつ。ふたつ。歩を進める。 ――その呼び名は、亀と名につく彼と対局したような――それでいて、お揃いの物ではあったけれど。]
(+32) 2014/09/22(Mon) 23時頃
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[足の裏は鉄籠の硬いものから地面の柔らかな其処へと。 ゆうるりと音も立てずに、まるで影のように静かに。逆を言うならばお淑やかに。…そんなことが似合う人柄でもないけれど、せめてもの少しの間、その主への本心を隠すかの様に。
鶴と、名を紡いだ声は果たして誰かに、隣に咲く花>>+26に聞こえただろうか。
紺瑠璃の裏には夢を隠し、その夢さえ隠すように瞳を伏せる。]
…連れて行くなら、早くしてくれるかい。
[――但し素直な口先が、主の逆鱗に触れたのならば。 添う花の前で頬を叩かれでも、しただろうか。]
(+33) 2014/09/23(Tue) 00時半頃
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[主の姿に少しだけ肩の荷を下ろしたのは寸分。読めぬ宵闇よりかは大分マシだと呆れさえ滲ませた笑みを浮かべ、――そうして告げられた期間>>+36には、即座に笑みは凍ってしまった。]
…一ヶ月?…長すぎる。
ここから先を行った森の中、そこに月が落ちてる筈だ。 …きっと。
[震える声は何の為か。悪寒は胸を過っては背筋を這い、ただ悪戯に気持ちを焦らすのみ。
「…だから、そこを始めに探して」 続けた聲は低く地面を這いずり回る。 脳裏にちらついた月光の名残>>+24は消ゆることを知らず、「万一其処に居なければ」、と、…薄汚れた金持ちの存在を、静かに紡ぐ。]
―…怪しい動きなんて、するもんか。
[月さえ。そう。彼さえ無事ならば、例えこの身が永久に地下の宵闇へ沈むこととなろうとも。 然しそうでないなら別だと――唇は歪に形を変えては、続いた質問にはただただ秘密と顔を背け]
(+37) 2014/09/23(Tue) 01時頃
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…紫。キミが月と何の縁があるかは知らないけど。 信用は、する。今だけは。
でも俺は、キミが罰されることになろうとも、その身を救うことはしないかもしれないよ。
[後に続けた言の葉は、冷酷とさえ譬喩されるかもしれない。 余裕があれば、もしかしたら、若しかすると、援護に回った飾り言葉さえ、自信を無くしては地面へと落ちて逝く。
ただ、キミに何かあることで、淡藤の頭が垂れてしまうのなら。
その時はその時だと、温情は腹に沈めた。]
――だから、だけど。…共に月を、探して欲しい。
(+38) 2014/09/23(Tue) 01時頃
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[その疲れた表情>>+39に、何処か遠い昔のデジャヴュを感じたのは――疲れているのかもしれない。なんて]
…探したりは、しないの。……大切なもの。
[羨ましいと、正直に伝えられる欲にはただ移った困惑を示し。 願えなかったと言を紡ぐその怖色は、どんな色に染まって居たのか皆目付けることさえせずに。ただ、はきりと言うならば。その色は「後悔」のようにも思えた。]
( なら、もうそれ以上は )
[「キミが苦しむようなことは、しない方がイイんじゃないのかな。」
慈悲とも、御節介とも、余計な言葉添えとも取れる其れは、彼の横を通り過ぎる際にちいさくこすりを上げては目前の花へと。 草臥れた花はまるで生気さえも無く、…次に摘ままれたのならば、直ぐに折れてしまいそうだとさえ、不謹慎な感想を持った。]
…キミ、ここから離れた方が、いいよ。
[そうしてその背を、そっと前へと押し出しては、欲の渦巻く娼館へと足を踏み入れた。*]
(+41) 2014/09/23(Tue) 01時半頃
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――その入口に、宵闇は亡かった。
かの花籠より随分質素に感じられる扉を潜り、踵を鳴らす。まるで隅々へ響いた踵音は娼館に吸い込まれては、廊下の奥の奥、遠い暗闇へと消え融けて行く。
背後を振り返っても、道標は無い。 前道も茨に呑まれてしまった。
真の信を置けるものは夜に咲く花、夜空の月。ただ変わらぬ光を、…慈悲を。情を。変わらずに躯へ与えてくれるただ一人の「 」。
《パンは鳥に食べられてしまった。》 《進む道は、茨道。》
いつの間にか、夜のろうそくは燃え尽きてしまった。うれしげにはしゃぐ朝の光が、もやに烟る山の頂で爪先立ちしている。
(+42) 2014/09/23(Tue) 01時半頃
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《行って生きのびるか、とどまって死ぬか》
籠の中から翅を空に、天に伸ばした時から、進む道は前にしか無く。
「だから、この先を」
――歩めばキミを 見付けられるだろうか。 月を森に隠した筈が、今度は自分が迷子になってしまったと、口端は震えながらに弧を描く。
そうして、その先。視えぬその先を見る為に。紫の言葉さえにも意にも介さず――否。少しばかり、同情したのかもしれない。草臥れた花に。色褪せた紫に。 だから、だからこそ。 走ったその先、開けた場所に月が大きく咲くまでの道程を、只管に。
「……待ってて。」
―― 走る。
(+43) 2014/09/23(Tue) 01時半頃
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衝突に衝動に呻く花々。 耳に入る怒声。 背後を追う葦音。 耳を劈く激しい音は銃口でも鳴らしているのだろうか。
それでも耳に蓋を、意識に板を立て。視界を過った>>+24月明りだけを頼りに、格好悪い程我武者羅に足を動かすのは本能か、はたまた理性か。
「 こ…ッの…!!」
――まるで禁断の果実を齧り逃げる罪人だと、人は背を指差しせせら嗤うだろうか。
石畳を駆け下りては、人混みを掻き分け。紛れ込む宵闇の影には冷汗さえ混じえながら。息が浅くなっていることなどは当に知らず、洒落た地面を蹴り立て独り、奔る。 濡れた衣服が気持ち悪いと、そんな冗談さえ捨て置いて。
(+44) 2014/09/23(Tue) 02時頃
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――まるで見た目に魅せられ本質を知らずに恋をした白雪の王子だと、人は嗤うだろうか。
かの月の下、隠れる銀月に手を差し伸べた夜はまだ浅く。 その夜綴った愛情は、そう、自分の欲を満たす為のものだったと――言い切れはしないけれど。 震える彼を、憂を滲ませる彼を前に抱いた感情は「罪悪感」。 それが何処から来たものなのか、心中を探り当て見付けたのは「恋心」。 愛しい者を虐げ泣かした青年の、可愛く無い一つの情。
芽生えた胸花はただ擽ったく。到底慣れるものでは無いと知りながら。 それでも月を追ってしまう自分は、牀榻な莫迦だと、彼は微笑うだろうか…あの日のように。
(+45) 2014/09/23(Tue) 02時頃
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礼儀のノックは必要無し。
舞い散る鮮血は稀に見ゆる紅の螢。
月に集る薄汚れた小虫は見た目に違わぬ音を立て床に崩れる。
そうして擦れる鎖は月を空へ戻す為の重い釣り糸。
――「嗚呼、やっぱりここに居たんだ」と。 月人は路を辿り、光に揺蕩えば安堵を込めてはにかむ。
幼少の頃から毒を食した蝶が毒を持つ翅を伸ばす様に、また「青年」も毒を散らしては紅月に唄い。
ただ一つ、その鎖を断ち切ったのならば。 軈ては「彼」へと手を差し伸べて、人は唄う。
(+50) 2014/09/23(Tue) 02時頃
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「…綺麗な綺麗なお月様。俺と一緒に、永久に逃避行をしてくれませんか。」
――なんて。**
(+53) 2014/09/23(Tue) 02時頃
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