157 南十字四丁目
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猫しか聞かない歌を聞きたがるなんて、変な子。
[口づけて、唇が塞がれてしまえば、歌えない。 この子のために歌えるのは、次はきっとこの子の耳がもう聞こえなくなってから。
腕に触れていた指先を、滑らせて腰まで。 下半身のラインをなぞりながら、煽り立てる。]
……ここじゃ、だめね。 家まで一旦、戻らない?
[この場所は、皆の集合場所になっている。 ここで殺人はさすがに気がひけるし、思ったほどにこの場所には、誰かを傷つけられるものがない。]
(1) 2013/12/25(Wed) 01時頃
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[ここから、家まで。帰路から少し離れたくらいのところだ、そう遠くもない。 無人になってしまうコンビニに少し申し訳なさも覚えたが、消し方もよく知らない蛍光灯はつけっぱなしにした。誰かが戻ってきてもいいように、も込めて。
そして、二人で南十字星のひかる空の下家路を辿った。]
星、綺麗だよね、今日。
[そんなことを呟いて、空を仰ぎ見る。 眩しいくらいの星明かりだった。
家についたら、台所に向かって果物ナイフを隠し持とう。 鞘のついたナイフは、包丁を抜き身で持つよりは危険も少なく持てるだろうと。]
(6) 2013/12/25(Wed) 01時半頃
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[行ってらっしゃい、と妹を外に送り出す。 もうこの"四丁目"にはいない祖母のことを、それでも案じる優しい妹だ。 それを好機と思ってしまうのは、哀しい。
台所に向かって、ガスコンロの火をつける。問題なく点るそれに、このままガス中毒や火事なんてのも考えられるのか、と過ぎった。 が、ナイフをカーディガンに忍ばせて、コンロにはやかんをかけるだけ。 窈が戻るまで、あたたかいお茶を淹れて待つつもりだった。]
(12) 2013/12/25(Wed) 02時頃
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……何、それ。
[分かっているんだろうか、この子は。 これから愛を確かめながら、望みの死を得るのだ。 その間際に椎茸。笑いをこらえることはできなくて、ふっと吹き出した。]
お茶、入ってるよ。 飲んで、あったまったら……続き、しようか。
[身体を重ねて、お互いの温度を混ぜ合う続き。 自分の分の湯のみを手にして、窈を隣に座らせる。]
(15) 2013/12/25(Wed) 02時半頃
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さっき、心中しようっていったのはあんたじゃない。 そうでなくても、ここに残ったら女しかいないんだし。
お嫁さんになるのはちょっと難しいなぁ。
[愛されているのだか嫁に出したいのだか、判断に困る事を言う。 つい笑ってしまうのは、目の前の娘が愛しいがゆえに。]
窈のことなら、お嫁さんに欲しいけどな。 たくさん可愛がって、いつまでも一緒にいるのに。
[緊張が無意識に滲んだのか、喉が渇いて。 まだ熱めのお茶を、すっかり飲んでしまった。 お茶を飲んで動く白い喉。湯のみを持つ白い指。 愛おしい、と、実の妹を見ながら、思う。]
(17) 2013/12/25(Wed) 03時頃
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……健やかなる時も、病める時も。 死が二人を分かつまで、愛し、慈しみ、守ることを、ここに誓います。
[うす赤い頬に触れ、窈の目をじっと見つめる。 口にしたのは教会の、結婚式の謳い文句。 避けられなければ、そっと目を伏せて誓いのキスを。 そのまま肩に手を滑らせて、ゆっくりと床に押し倒す。]
(19) 2013/12/25(Wed) 03時半頃
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さっきは、名前で呼んでくれたのに。
[少しだけ意地悪く言いながら、先ほどの続きとばかりに下半身に手が伸びる。 事を急いてしまうのが、自身の欲望なのか、殺意に似た緊張の滲みなのかは、わからない。]
窈。ねぇ、また――鈴、って呼んで。 姉妹らしくないみたいに。
[言いながらも内腿を擽るように、マニキュアの指で柔らかさを味わう**]
(21) 2013/12/25(Wed) 04時頃
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うん――いっぱいに、愛するよ。 みんな、みんな、あんたの……窈の、言うとおりに。
[折り重なっていた身体。首の拘束の分下までは動けない頭を、窈の胸の膨らみに押し付ける。 肉の柔らかさ、心臓の音。漏れる甘い声も身体というスピーカーから聞きながら、下半身に伸びた指先を、下着に近づけた。 太腿との境目が描く流線形をなぞって、合わさりに辿り着く。 中指をそこにあてがい関節を折り曲げるが、下着の内には向かわない。 その向こう側に行くのは、窈の求めがあってから。
向こう側に逝くのを、この手が決めてしまうまで、それまでは窈の求めるままに。]
(23) 2013/12/25(Wed) 14時頃
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うん――…… ね、窈。目、つぶって。
[おねだりに応えるように、小さな布地に手をかける。 腰と太腿の間だけを慎ましやかに隠すそれをゆっくり引き下ろしながら、窈の視界を塞がせる。 襞合いを弄るのを左手に変え、右手で忍ばれた果物ナイフを抜くために。]
(29) 2013/12/25(Wed) 21時半頃
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ん……愛してる、窈。いつまでも、
[ぴったりと、身を寄せる。吐息も、伏せられた目の睫毛が震えるのも、身体が愛の痺れに跳ねるのも、すぐ傍。]
いつまでも、愛してる。あたしの――妹。
[たっぷりと窈の身体を味わう。愛らしい首筋も、胸のふくらみも、やわらかい二の腕も、みんな。 くちりと音を立てながらねぶって、時に甘く噛み付いて、自分の行為を刻み込む。 左手が奥を探るたび艶の乗る声を耳で捉え――そして、ふいに離れる。]
(31) 2013/12/25(Wed) 22時半頃
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――だから、気持ちいいまま、逝ってほしいんだ。
[姉とはいえ、女の力だ。果物ナイフで人間を突くなら、勢いに体重を乗せなければならない。 愛おしい女に跨って膝立ちになり、濡れた左手すら柄に添えて、一息に振り下ろす。 躊躇いはもうない。ないが……きっと、酷い顔をしていた。 見られなくてよかったと、ほんの少しだけ思う。
あまりにも短い、性愛の交わり。 それで気持ちいいまま逝ってほしいだなんて我儘が過ぎると思ったが、これ以上続けていたら、望みを叶えてあげられなくなりそうだった。]
(33) 2013/12/25(Wed) 22時半頃
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[あんまりにも愛おしすぎて、刃を捨ててしまいそうだったから。]
(34) 2013/12/25(Wed) 23時頃
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/* えっこれも出るの これも透けるの 表に見えて……ないよね……? 見えてるの??
(-12) 2013/12/25(Wed) 23時頃
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[長い時間を、そのまま過ごした。]
(43) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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[そのまま、というのは、文字通りそのままだ。 窈に跨って、ナイフを胸に突き刺して抉って、びくりと強く身体が跳ねたのすら収まって、衝撃で開かれた目と見つめ合って、それが最期の瞬間力尽きたのかそれとも自惚れるならばかすかな幸せかで細まって、びちびちと飛び散った赤い赤い血が床と服と腕とを汚した、そのまんま。 ただ脱力したように、事切れた窈を見下ろしていた。
赤黒くなった手指や顔やの血が乾いてかさかさに軋んで、なお見下ろしていた。]
(44) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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……いなくならないんだね。
[静かすぎる部屋で、それだけ言った。 例えばあまりにファンタジーだけれど、死んだら死体が消えて元の世界に戻るのだとか、そういうものを想像していた。 眼下の妹は、どれだけ待っても還らない。
これでは向こうに戻れたのか、こちら側の情報としては何もわからない。 つまり、無意味に妹は自分に殺された可能性もある、ということでは、]
……行けたよね、窈。 あんたが見たかった"真実"――見えてるんでしょ、そっちで。
[可能性は、いくらでもあった。いや、むしろ死ねば戻れるなんて、はじめからオカルトのきらいが過ぎる。 それでも、窈は行けている、と思いたくなるのは、単なる自己の正当化だろうか。]
(45) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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[ふらりと、ようやく立ち上がる。 シャワーを浴びよう、と服を脱ぎ捨てた。 思えば下着をおろしてしまいながらもこちらは着衣のままなんて、アンフェアな行為だったかもしれない。 返り血に濡れた今となっては、黒を着ていてまだ救われた、と言ったようなところだけれど。]
これ、も、洗わなきゃかな――
[窈の胸に刺さったナイフを、無理矢理に抜き取る。また血があふれた。 一緒にシャワーで洗って、鞘に戻して。 それから、また持ち歩こう。 ひとまずは旅館に。きっと、誰かいるだろうと思うから**]
(46) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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/* 実は いるが この空気に挟まれない!
(-24) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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/* 志乃! たすかった!
(-25) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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[南十字星が冴える中、濡れた髪を乾かしもしないで、また黒服に身を包んで家を出た。 次に誰の血に濡れるかわからない。黒以外の服は着られずにいた。
風が吹けば寒い。自分は何をしているんだろうと自問しながら、旅館に向かっている。 みんなを、還さなければ。 それが窈の願いなら、叶えてからでなければ自分は命を絶てない。 ある意味殺人鬼になろうとしている自分が可笑しくて、夜空の下で笑った。]
(70) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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[そして、夜道で歌っている。 歌が聞きたいと言っていたあの子に、この声が届けばいいと*]
(*0) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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