25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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…あぁ、そうか。
[思い出したのは血塗られた記憶。 あの椿の花は主の下へたどり着けるはずもないのだと。
何故ならば…
白い指はそっと、帯の上からするりと己の腹をさすった。]
(*2) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[広間の客席の末席へと陣取れば、舞台にて歌う雛鳥の声。 庭で戯れに歌っていたものよりも、僅かに艶めいた声に思わず目を見張る。]
のう、旦那。 幾人かは酷い雑草が混ざっているようだが、あの子は…よいね。
[寄ってきた肉風船の主催に酒を注がれつつ、言う声は他の花にも聞こえるか。]
(9) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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雑草はどうせ、腹の足しにでもするつもりなのでしょう?
[勝手知ったる慣れたる事と、醜い主催に囁いて。]
あぁ、噂のみ聞く空蝉の君も、ただの空っぽであるのならあなたの脂肪に変えてしまいましょうかね。
(*3) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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[年経ても衰えず、更に容姿が艶を増すのは。 花上がりの分際でここまでの地位に登りつめたは。
こうして祭に花を添えながら、子を欲しいと乞う貴人達のために胎を貸していたからゆえか。 一人食い、一人産むそのたびに、色香を艶を増していく。 それはまるで、遠い昔に死に絶えた男の対たる生き物に近づいていくかの如しこと。]
(*6) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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お前は本当に、よく躾けられているね。
[雛鳥を褒めて見せるのは、他の花への挑発か。 宴が進み興が乗れば、己の琵琶と合わせたいとも思う。]
(16) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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種をつけぬ花など、肥やしにしかならぬ事。
[く、と喉奥で哂うは声なき声。]
新しく、面白いものが来るというのは、そなたの事か?
(*8) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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[傾ける杯は、甘い柘榴を漬けた酒。]
張り切って歌いすぎては、喉が渇いてしまうよ?
[こちらを見て健気に歌う雛鳥を手招いて、褒美に果汁でも与えようか。]
(28) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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色の白いは、それだけで珍しい…とは些か時代遅れかと。
[邦夜と視線を交わしつつ、口をつくのはやはり苦言か。]
こんど学院に小言を言いに行かねばなりませんね。 せめてまともに挨拶のできるくらいではないと、外へ出すのは師匠の恥ですよ、と。
(34) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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お前の歌は心地よいが、張り切りすぎて喉から血を吐くのは見たくはないよ。
[行儀良く杯を受け取る様子に目を細めて。]
皆であわせるのも、良い趣向だと思うよ。 手習いをなぞる以上の技量が必要になるものだが。
[先に立って声を掛けるイアンの様子は、昔と同じように思えて。 それゆえにその視界を塞ぐ白い布が喪章に見えて痛々しく思う。]
(37) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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芸を見せる気がないのなら、酌をして回るくらい気は使えぬの?
[そろそろと逃げようとする短い秋色の髪の姿に、かける声は小姑のようか。]
噂の君だとちやほやされようと、お前はいまだ咲きもせぬ花だ。 誰も買い手がつかねば、安宿で誰にでも股を開くようになるか、内臓を売られて捨てられるだけですよ。
(42) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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[聞こえてきた笛の音に、瞠目する。 音が似るは同じ笛だからというだけでもない。 ならばこの笛の主が、彼の人の夢を継いだ子なのだろうか。
先代ほどの艶はなくとも、その音色の真摯さは耳に心地よいものだ。]
(47) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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それは、失礼。 手負いでは仕方がありませんね。
[溜息一つ。 酒が入ると些か口煩くなるのは玉に瑕か。]
ですが不注意も、お前の実力のうちと見られますよ。 ようやく見せた芸がそのそそっかしいドジではあまりに笑えぬ。 お気をつけなさいな。
[ふと、気を利かせた下男が愛用の琵琶を持ってくるところか。]
(54) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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ほう?
[若桜の様子に、すいと目を細めて。]
彼が怪我をして役に立てないのなら、お前が彼の分まで皆を楽しませてごらんよ。 見たところ、大事な友達…
いや、コレは恋人同士かい?
(55) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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[貪欲に競い合うくらいが好ましいと思うは、己の通ってきた道ゆえか。 煽る事で実力を引き出せれば、それはそれで面白い。
後に続くものは、正攻法で先達を食い殺すくらいでなければ。]
(63) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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[絡み合う笛の音、鳥の声。勇壮なる舞の足踏み。 琵琶の胴をいとおしげにひと撫ですると、それに拍子を合わせるように弾く弦。
古き友の舞に合わせる音は、かつて肩を並べる頃に似て、 だがその頃よりも、老練な艶を帯びている。]
(70) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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[調べは技巧に優れても、決して己がでしゃばるのではなく、 むしろ若い者達の技量を確かめるように、添えて支えて際立たせるが如く。
久々にその気になっているのは、酒が入ったせいだけではない。]
(82) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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…そう、くるか。
[かつて芸を競い合った頃の如く、舞手の拍子を煽る如き撥の音。
されど、ついてくる笛の音と歌が振り落とされぬ程度には気を使って。 この地位についた今でも、やはり自分は芸事が好きなのだと。
視界の端、いい心持で身体を揺らす肉団子はこの際脇に置いておく。]
(85) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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[それは満ちたる月の下、舞い散る花の嵐の中で鳥達が気ままに遊ぶような。
仕合ではなくじゃれあいである事は、昔馴染みのふたりにはよくわかっている。]
(99) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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[全身で楽しいを発しているような雛鳥の微笑みに気がついて、 一つ高みに手招くように、こちらもニコリと微笑んだ。]
(100) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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それにしても、並ぶとホント似ているなぁ…。 おぼろんと双子プレイできただけで割りと本懐!
(-27) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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[時に煽るほど激しい気性を見せる己と、静かでも有無を言わせぬ凄みで正論を説く同じ顔の片割れと。 育った立場、通ってきた道、それがやはりにじみ出るものなのか。]
(106) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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[最後の一音の余韻にしばし目を閉じて。]
多少これで、見所のあるものも見えたでしょうかね。
[疲労の中にも何かを掴んだ様子の雛鳥を、微笑ましげに眺める。]
あぁ、それで…お前は何が出来るのだい? 止めるのは、それを聞いてからでは良かっただろうに。
[自ら煽っておきながら、その言い様はあまりにアレだが。 若桜と本郷と。何処か似たような気性の二人は、全くそりが合わぬか、うっかり合えば吸い付くように添うかのどちらかであろう。
そも、本郷の慕う昔の花も、最初は酷く仲が悪かったのでは…。]
(117) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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あぁ、乾の住職様のご子息でしたね。 挨拶にも行かず、とんだご無礼を。
[傍へ来た僧侶に緩く頭を下げて淡く笑む。]
この立場になっていまだ日の浅い若輩者です。 お父上には兼ねてよりお世話になっておりました。よろしくお見知りおきを。
[そう挨拶をして、舞台上の花が頭を下げるのを見るとニッコリと軽く会釈した。]
(121) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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済まぬ。あまりに不義理が続いてしまって気まずくてね。
[水臭いとの旧友に肩を竦めて少し眉を下げた。 訃報も耳に届いていたけれど、駆けつける事の出来ぬ時期でもあったし。
音と舞があっている時だけは、あの頃に戻れたような気もしていたけれど。 舞台から客席への距離と、喪章の如き白き目隠しが、やはり間を隔てたままだ。]
(126) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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元はこれにて身を立てる身でありましたから。
[愛しげに琵琶を撫でる指はなまめかしく、僧侶の目にはいっそ卑猥にすらみえようか。]
老いた姥桜でも、祭の季節にはついつい気持ちが若めいていけません。 もう少し若ければ、お傍に置いて頂けましたか? [笑み混じりにまるで誘う如き言葉。]
あぁ、この雛鳥は…昼間に庭で囀っておりましたので。 良い声だけでなく、教養も備えたいい子ですね。
(133) 2010/08/03(Tue) 04時頃
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…根は悪い子では無さそうだが、人前に出せるほどに整えるにはかなりの腕が必要かな。
[若桜のふわふわアタマをみてぽつり。 それを見て思い起こしたのは、ある方の連れていた虎の子か。]
(139) 2010/08/03(Tue) 04時頃
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[さて、餌食に喰らわれたは、虎の親か虎の子か…。]
(*15) 2010/08/03(Tue) 04時頃
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とわにお傍に御仕えするのは、流石に…義父がおりますゆえ。
[首をかしげて微笑めば、粋に衣紋を抜いた背に、ちらりと覗く花の紋。]
花の祭の最中ならば、一夜の夢くらい見るのも悪くはないとは思います。 [小声で囁くは本気か冗談か。 弦を押さえていた長い指は、淡く紅引いた唇をそっとなぞった。]
(145) 2010/08/03(Tue) 04時頃
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[花時代の艶をいまだ失わぬかつての花は、若き僧侶をそっと絡めとるように微笑む。
頬へと伸ばされる手に、そっと回りから気取られぬように唇を軽く触れ。]
…ここでは、人目がございます。 [意味ありげに見つめると、小さく囁いた。*]
(151) 2010/08/03(Tue) 04時半頃
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[法師の肩へとしなだれかかり、画家の指先を窓の月のごとく眺めながら酌をする。 時折、卓の下にて絡めあう指先。]
ほぅ、これはまた…なかなかに雅な趣向で。
[笛の音が画家の所作へと彩りを添えていくのには、流石に感嘆の声も出たか。
睦み合うような己の所作は、やがて花の殆どが身につけねばならなくなるだろう世界の作法にて、 また、幼く穢れない者たちに見せたくないとも思う大人の穢らしい一面でもある。
あの雛鳥にはさせたくないとも、だが手を出してみたいとの裏腹な気持ち。 それは胸の中に秘めたままで。
今はただ、この生真面目そうに見えた法師が色香に当てられて艷めいていくさまに見惚れる。 このような方ほど、よくお乱れになるのだから。 向ける視線は、まるで獲物に狙いを定める猛獣のごとく。 同じ顔がこのように人に媚び、いちゃつくさまは、やはり高嶺の当主には目の毒か。
宴席が一通り落ち着く頃に促されれば、法師と共にそっと華やかな場から姿を消すもまた良し。]
(193) 2010/08/03(Tue) 09時頃
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…まぁ、これは…… [舞い立つ胡蝶は夢のよう。 手妻の使い手が今迄いなかったわけでは無いが、これ程の腕は珍しく、 また、それがひょうきんそうな彼の雰囲気に似つかわしいか。
それにしても、]
佳い、月…… [カンバスの上の紅い月を眺めて呟く微かな声は、何処か不吉な昏い色。]
(212) 2010/08/03(Tue) 11時半頃
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[名乗りすら被る仲の良さに、思わず微笑ましげにコロコロと笑う。]
のう、法泉殿。 …今宵の花は対の者が多いのかしら。 仲睦まじいのは佳いけれど、纏めて手折るのは中々に難しいのでしょうね。
[それぞれに 別な主の元へと行けばなかなか会えぬは、あの旧知の仲の舞手と己も同じだったが故に。]
あの二人は、全く違って、違うからこそ佳いのでしょうね。
(217) 2010/08/03(Tue) 11時半頃
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つがいで飼うのが無理ならば、共に血肉となってもらうも一興か。
それならば、彼岸でも共にあれようて。 主にはぐれた花の如く、迷い出る事もなかろう。
(*17) 2010/08/03(Tue) 12時頃
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ええ、みなさまもごゆるりと。 [琵琶は部屋へと片付けさせても、弾き手の向かうは違う部屋。 寄り添いてゆく傍らのお方は、己を良い音で奏でてくれようか?]
(247) 2010/08/03(Tue) 13時半頃
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[法泉の部屋へと向かう折、すれ違う姿は白拍子。]
迷い子は いまだあわれに 彷徨うか とうに泡沫の あわときえても
[ちろり、淡い紅引く唇を舐める。]
(269) 2010/08/03(Tue) 14時半頃
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[広い寝台の傍らへ、からりと転がる下駄の音。 敷布に広がる長い髪。 帯解かれ、衣も髪も乱されて。
時折交じる艷めいた嬌声。 月下美人を刻まれたこの白ルのやわ肌に、幾人の貴人が乱れ、醜態を晒したものだろう。
法師の逞しき腕に抱かれ、一夜の淡き夢を紡ぐ。**]
(278) 2010/08/03(Tue) 15時頃
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[その背へとゆるりと回す白い腕。
かつて花も盛りの頃合いに、野心溢れる花主達はまことしやかに噂した。 その花を抱けた男の末路は二つ。 運開け巨万の富を得るか、若くして散るかの二つに一つ。
噂の真偽は、誰にも判らぬことなれど…]
(315) 2010/08/03(Tue) 17時半頃
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[子を為して大成するか、食い殺されるか、二つに一つ。 それゆえ高嶺を名乗れぬ花は、2つと居らぬ高嶺の花と。]
(*21) 2010/08/03(Tue) 17時半頃
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…乾様も、お父上同様…血は争えぬようで。 このまま色に狂うなら、容易に手の内に落ちましょう。
[嬌声に混じって聞こえる囁き声。]
良い体つきをしておりますし…寺にて節制しておられるのなら、味の面ではあなたのお気に召すのでは?
(*23) 2010/08/03(Tue) 18時頃
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わたしは悪食ですから…脂のしっかり乗ったものも嫌いではありませんよ。 それに…祭りにて喰らうはただのエサではないのですから。
[子息を送り込んできた家のいくつかは秘密裏に、その子ではない世継ぎを望んでいる場合もある。 当人たちはおそらく知るまい。]
(*25) 2010/08/03(Tue) 18時頃
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[白い肌、漆黒のひととき前の髪。 汗の香と枕元の香油が香る中、その引き締まった身へと縋って。 薄紅に濡れた唇は、求めに応じて柔らかく交わされる。]
お会いしとうございました。 …貴方のような優しい方が、初めてであればよかったのに。
[耳元へ返す睦言。いとおしげにその頭を胸に抱く。 ひとひら、ひとひら、綻ぶように、いたわるような指に開かれ、色づいていくからだ。 熱い衝動を深く重ねる時にすら、その所作はあまりに優しくて。
息もまだ乱れたままに、胸元に縋ってうっとりと余韻に浸る。 つかの間の一夜の夢のことだから、答えずただ淡い笑みを返すのみ。]
(332) 2010/08/03(Tue) 21時半頃
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[それでもやはり、己は罪深く浅ましい。 男の腕の中で眠る時にすら、夢に見るのは違う方のこと。
「このまま見つからず居られたら、ずっと一緒に居られるのに」 同じ顔に違う装束。 納屋に寄り添って身を潜めたのは、漆黒を切りそろえた二人の童。
己が彼に成れなかったか、彼が己に成れなかったか、 幼い二人には抗うことは許されず、二人は分かたれそれぞれのみちへ。 羨むことが無かったのは、彼の背の荷の方が重そうに思えたから。
堕ちて穢れてしまった己を、彼はどう思っているのだろうか…]
(338) 2010/08/03(Tue) 21時半頃
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[やがて夜半に目覚めれば、眠る法師を起こさぬように、 そっと身支度を整えて、夜の霞がごとく消え去る。
夢の名残に残すのは、胸元に歯を立て刻んだ紅色の花びらが如き痕ひとつのみ。]
(343) 2010/08/03(Tue) 22時頃
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[一人部屋へ戻りて、窓辺から見る月は僅かに足りぬ。 あの日二人で身を寄せ合って、こわごわ見上げた納屋の窓の月には。]
おやおや。 随分と大きな猫が屋根の上へ。
[本邸の屋根の上に見えた影を、思わず窓を開けて微笑ましく眺めた。]
よくあのようなところへ登れるものだ。
(348) 2010/08/03(Tue) 22時頃
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[窓から漏れ聞こえるは、本邸の宴からの笛の音か。 ゆるりと寝台に足を投げ出したまま、窓辺に持たれて耳を澄ます。]
誰を想うて、吹く笛か…
[夜風がふわりとカーテンを揺らす。]
(361) 2010/08/03(Tue) 22時半頃
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恋すれば、芸は色香と艶を増す…
[幾人かが競い奏でる笛の音は、それを纏っているや否や。 確実に分かるのは、あの時の雛鳥の声が、幼いながらに艷めいて聞こえたことなれど。]
されども、それに溺れては…焦がれた炎は身を焦がす…か。
(364) 2010/08/03(Tue) 22時半頃
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…ほぅ?
[今までの吹き手のものとは違う。 有り体に言えば「なってない」と言っても良い。
されど、その音は…誰のものよりもより強く、滲み出る何かを帯びている。
吹き手をこの目で確かめたいと思うも… さすがに今は夢のあと。母屋まで行くには身が怠い。]
(377) 2010/08/03(Tue) 23時頃
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これもまた、おもしろき音色よ。
[返す言葉は気怠げに。]
宴席はまだ続いているようだけれど…今少しは身を休めたくてね。 [ひとときの淡い眠りだけでは消えぬ甘い余韻に、今は酔うばかり。]
(*32) 2010/08/03(Tue) 23時半頃
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あぁ、月が…満ちる、ね。
[くす、と微かに笑う音は、蕾が花咲く時を待つ。]
(*34) 2010/08/03(Tue) 23時半頃
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[つかの間の眠りを破ったのは、こいに溺れた水音か否かは…さて。
いつもとは違う刻限に眠りに落ちてしまったがゆえか、 それとも、あまりに月が明るいからか。 すっかり目が冴えてしまって、落ち着かぬ。 夜着の合わせのみを整える程度で、下駄の音と夜風を伴って漂うは霞。 未だ足元は少々危ういが、そのふらつく足の運びすら艷めいた所作に見えてしまうか。]
(483) 2010/08/04(Wed) 04時頃
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[やはり大人は穢いと、思われてしまうかも知れないけれど。 それでもいつしか歌に誘われて、姿を見れば手を差し出すか…**]
(485) 2010/08/04(Wed) 04時半頃
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…そなた、は………
[月の光りに照らされて、その子はあまりに儚く笑む。 絡めた指先。拙い口づけが白い指へと火を灯す。]
天翔ける 両の翼を 捨ててでも 鳥は望むか 月の囲いを
[夜着が濡れることも構わず胸へと引き寄せるのは、 枝から落ちて芽吹き、いままさに咲かんとする一輪の花。
今宵既に他のものに抱かれ、幻を紡いだ唇が、 潤んだ紅石榴の雫に触れ、そっと吸う。]
このままわたしの元へ来れば、お前は変わってしまうよ? 気ままに囀る雛鳥では、居られなくなる。
[濡れて冷えた体温は、このまま抱けば溶けて消えてしまいそうで。 されど、それでも奪いたい。このまま喰らってしまいたい。 そんな衝動は胸の奥を既に痛いほど焦がしている。]
(505) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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わたしの腕は止まり木ではなく、お前を囚える籠になってしまうだろう。 それでも…
そなたの歌を、わたしは聞きたい。 枝の上でも、舞台でもなく
この、腕の中で。
(506) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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[月の光に当てられて、思いは胸を焦がすのみ。]
あぁ…このまま穢れず美しいまま、永遠にわたしの中に納めてしまいたいのに、 この子が穢れに染まりきり、艶やかに色を変えるさまにも心惹かれてしまう。
[喰らってしまえば、永遠にそのままを留めて置けるけれど…]
(*37) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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満ちては欠け、また満る、空に輝く月が如くに、 せいを喰らいて死出へ導き、新たなせいを蒔く我らなれど… [複雑な胸の内は、焦がれる痛み。]
花ひらくを、楽しみに待っているよ。
(*40) 2010/08/04(Wed) 11時半頃
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[湯船満たす清い湯と、まっさらな替えの着物が、 南端の角部屋に用意されたかは返答次第。
気怠げな 朝の眠りに 寝乱れて かいなに縋る 夢はうつつか
独り寝の夢か、ともに見たかも、返答次第。]
(516) 2010/08/04(Wed) 12時半頃
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…儚く壊れて消えてしまったかと……
[低く掠れた声で、すり寄る温もりに目を細める。
朝の光のなか、乱れた夜着もそのままで、 華奢な身体に刻んでしまった、幾つもの紅い花びらを辿る。
幾度も啼かせて囀り疲れただろう身体の、 塗り込められた香油の香りにいまだ淡い夢を…]
(525) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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糧として、喰らうのならば…
[そっと腹を撫でるのは、一夜の夢を見せた法師のことか。]
食べ頃ならば、若い桜の猫が盛りか。 だが、ようやく開く花のお目見えならば、先ずはどなたかに、一夜の夢でも魅せてごらんよ。 いくら美しくとも、徒花は要らぬ。
(*51) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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腹が空いて堪らんならば、一番食いでが有るのは小山のような肉饅頭では無いかえ? [くく、と落とす揶揄。]
ああ、雛鳥は食後の水菓子に…
(*52) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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流石に少し…戯れが過ぎたか……
[部屋を去る雛鳥を見送って、乱れたままの寝台に身を投げ出す。 情けなく重い腰をさすって、夢の続きをいましばし。]
(536) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[まどろべば、傍で囀る声も心地良く。 はべる姿もいじらしい。
気の利かぬ下男が朝餉を持てば、 冷たい果汁くらいは口にするか。]
お前は育ち盛りなのだから、ちゃんと食べなければね。
[そう勧めつつ、傍にいる様を微笑ましく眺めながら、 好きなところにいれば良いと申しつけて、 己は昼頃まではゆるりと過ごすつもり。]
(550) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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|
技巧だけは、かなりのものか。 [窓から漏れ聞こえるを耳にして。
ひと味足らぬは焦がれる思いか。 雛鳥の歌に加わった艶や、あの狂い咲きの笛の音のような。 何かするつもりなら、そっと窓から見守る所存。]
(*61) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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植えたいのなら、誘うて蒔いて構わぬのに。
その為の、祭りであろう?
(*62) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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Q.一夜ニ戦とはお盛んですね。
A.喰われるのと喰うのでは別薔薇ですから。
(-131) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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どうせなら、花遊びに慣れぬお方を誘ってみては? 天満月の御子息とか。
(*77) 2010/08/04(Wed) 18時頃
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お前を抱いて…食いたくなってしまうのはまずかろう?
喰われるのもごめんこうむりたい。
(*79) 2010/08/04(Wed) 18時半頃
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[後先考えぬ無茶が祟ったか、まだ昨夜の疲れが抜けないが、 流石に雛鳥に腰をさすってもらうとか情けない事は出来なくて。
湯を浴び、衣に袖通し、帯を締めればシャンとする。]
そなたは、ちゃんと休めたか? [あまりに囀るその声が、己の熱を煽るものだから、 華奢なその身に障りは無いかと少々心配になったりもした。]
(656) 2010/08/04(Wed) 23時半頃
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[威勢が良い方が踊り食いが楽しいとか、そういえばそんな話はあったけれど、そんな事が噂になっているなどとは存ぜぬ。]
(*104) 2010/08/04(Wed) 23時半頃
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[部屋に軽い食事を運ばせると、ついでに伝えられる旧友からの言伝。]
なるほど、それも良い。 …何処か適当に、場所を整えてもらえるか?
[細かい手筈は先方に任せ、琵琶の手入れを丹念に。 雛鳥が付いてくるかは彼次第に任せるつもりではいるが。]
イアンとは、わたしがまだ花だった頃に共に技芸を極める友でね。 わたしの音で彼が舞うことが、恐らく一番多かったはず…。
(669) 2010/08/05(Thu) 00時頃
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|
…愛い奴め。 [殊勝な言葉と恥じらう様子に目を細める。 そのような仕草を見せられると、このまま二人きりこうして引きこもっていたいくらいだが、流石に周りの手前そうもいかぬか。]
(693) 2010/08/05(Thu) 01時頃
|
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良い心がけだ。 見聞を広める事は、芸の肥やしにもなるだろう。 [旧友との芸での語らいに同席したいとの願いを聞きいれる。 舞台の手筈が整う頃に、琵琶の包みを持たせて供をさせる気だ。]
(698) 2010/08/05(Thu) 01時頃
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