308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[ わたしの意思を確認したあとは、 彼らの手際は非常によかった。
武器として準備していた刃物であるとか、 バケツだとかを粛々と取り出したのね。
今からやるの? と怖気づいたわたしに、 ご主人は有無をいわさない口調で告げたわ。
こういうことをするのにも、 体力がいりますからね。 少しでも余裕のあるうちというわけです
シャツを汚さないよう肌着姿になって、 戸惑っている間に準備が整えられていた。]
(+30) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 行きましょう≠ニ奥さんに言われたとき、 なんとなく、本当になんとなくだけれど、 ようやく合点がいったような気がしたの。
お店から食べるものがなくなってしまって、 家にあるもので食い繋ぐしかないと悟ったとき、 どうしていいわね≠ネんて言われたのか、 わたし、これっぽっちもわからなかった。]
(+31) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ ねえ、これは仕方がないことよね? ]
(+32) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ できるだけ大きいのにしましょうと、 ご主人が声量を抑えた低い声で言ったわ。 わたしは段取り通りにひとりで部屋に入り、 休んでいる犬たちの中からその子を探した。]
……クーパー、こっちへおいで。
[ うつ伏せになって目を閉じていたのに、 クーパーは耳をひくりと揺らして、 のそのそと機嫌よさそうにやってきたわ。
ゆさゆさとその立派な尻尾を振って、 真っ黒なきれいな瞳をわたしに向けていた。 わたしはその首筋から背を撫でてやった。
こうなってからはあまり、 ブラッシングもしてやらなかったと、 少し脂っぽく束になった毛並みに思ったの。]
(+33) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ いつもならもう何匹か、 構ってほしそうに寄ってくるんだけれど、
犬たちも消耗しているのか、 今日ばかりは皆関心を示さなかった。
わたしはクーパーの首輪をつかんで、 部屋の外へと誘導したわ。
ここから誰も使っていない、 客間のバスルームに連れていくことになっていた。
クーパーは不思議そうにしていたわ。 客間に入れてやることなんてなかったから。 けれどバスタブの存在にシャンプーだと思ったのね。 バスルームの中に連れて入ろうとすると、 いやいやするように足を踏ん張って抵抗するの。]
(+34) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ できるだけ静かにことを終える必要があった。
お隣のご主人はわたしに、 クーパーと一緒にバスタブに入るよう言ったわ。 指示された通り、クーパーの首輪を引いて、 空のバスタブに一緒に入ったの。
ご主人はクーパーを抱きしめているよう言った。 そして自らもまた、クーパーを抑え込むよう、 片方の手を体に、片方の手を鼻先へと伸ばしたわ。
そして、奥さんが手早くナイフを突き刺した。 クーパーの喉元を狙った手つきに躊躇いはなかった。]
(+35) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 当然、クーパーはひどく暴れたわ。 大きな声で吠えさせないようにと、 鼻先をつかんでいたご主人は手を噛まれた。
それでもご主人は叫び声もあげず、 クーパーとわたしに覆いかぶさるようにして、 獣の体を抑え込もうと躍起になっていた。
逃げ出そうと藻掻く四肢が、固い爪が、 何度となくわたしの皮膚を破いていった。 それでもわたしは必死にしがみついていたの。
奥さんが片手でクーパーの頭を抑えて、 繰り返しナイフを突き立てるたびに、 生臭い液体がわたしに滴り落ちてくる。]
(+36) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ クーパーは死んだわ。]
(+37) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 彼が動かなくなったとき、 旦那さんは思い切り蛇口を捻った。
水がわたしたちの上に降り注いで、 バスタブに飛び散った赤を薄めていく。
奥さんの息は上がっていた。 ぜいぜいと肩で息をする彼女に、 ご主人は彼女の弟を呼ぶよう言ったわ。 それから救急箱を取ってくるようにも。
奥さんは何も言わずにナイフを置き、 代わりに外に置いていたバケツや、 鋸やハンマーなんかを中に引き入れた。 そして、弟さんを呼びに行ったわ。]
(+38) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ わたしはもう何も考えられなかった。 クーパーの亡骸を抱えたまま、 呆然と座り込んだままのわたしを、 ご主人は見下ろして静かに言ったわ。
このあとは我々でやりますから、 ケガの手当てをして、着替えて、 少し休んでくださって結構ですよ
その言葉の意味を、 ゆっくりゆっくりと咀嚼しているうちに、 奥さんが弟さんを連れて戻ってきたの。]
(+39) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 彼女は部屋に戻ってきたあと、 動けないわたしの腕を取り、 バスタブの中から引っ張り出した。
その間も、傷の手当をされるときも、 わたしはされるがままだったわ。
最後の決断をしたのは自分のはずなのに、 心も頭もどこか遠くに置いてけぼりで、 この現状に追いつけていないようだった。
無意識に涙を流していたわたしに、 奥さんは一度だけ固い声で、 ごめんなさいね≠ニつぶやいた。*]
(+40) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ キッチンに立っていた。]
(+41) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ お隣のご主人と、奥さんの弟さんは、 わたしたちにビニール袋を渡して、 一度車でどこかへ出て行ったわ。
何かを処分するためかもしれないし、 子どもたちへのカモフラージュのためかも。 誰も詳しくは聞こうとしなかったし、 彼らはそう時間を置かず帰ってきたわ。
その一方で、 わたしと奥さんと、お父さんのお嫁さん。 3人で口数少なく作業を進めていた。]
(+42) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ どんな味でどんな食感なのか、 誰も知っているわけがないから、 どちらもわからないように、 ミンチにして濃い味をつけることにした。
例えば独特の風味がして、 何の肉かと話題になるのが怖かったのね。
電気がもう来ていないから、 どうやって火を入れるかという話だけど、 外に窯があるからそれを使うことにした。
やっぱりもう長いこと使ってなかったけど、 おじいさんのいたころは晴れた日に、 そこでピザを焼いて庭で食べたりしたの。]
(+43) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ ああ、懐かしいわ。 つぶやいたわたしの声は平坦で、 一緒にいたふたりは何も言わなかった。]
(+44) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ 冷凍のパイシートが、 電気の来なくなった冷凍庫の中に、 でろっと柔らかくなって残っていたの。
わたしたちはそれを、 ちぎれてしまわないよう慎重に広げて、 ミートパイを作ることにした。
他に入れる野菜も何もなかったし、 仕上がりは不安だったけれど、 生地に包まれて中身が見えないというのも、 わたしたちには都合がよく思えたのね。
生焼けになるのが怖くって、 わたしたちしつこいくらいに火を通した。]
(+45) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ 大した量でもない、うまく膨らまず平たい、 てっぺんのひどく焦げ付いた、 丸い不格好なミートパイがひとつできたわ。]
(+46) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ わたしたちは3人そろって、 疲れ果てたような顔をしていたと思う。
ふと振り返るとカーテンの陰から、 ウィレムがそうっとこちらを見ていた。
咄嗟にわたしは微笑んで、 大窓のほうへと歩いて行って言ったわ。]
今日は、少しだけれど、 ちゃんとごはんがあるからね。 ほら、皆を呼んでらっしゃい。
[ 数秒置いて理解したように、 ウィレムは踵を返して駆けてった。]
(+47) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ その背中を見送って、 わたしたちは食卓の準備をしたわ。
9人で食べると、 ほんの一口、二口ね≠ニ、 奥さんが疲れた声でつぶやいたの。 だからわたし、何気なく言ったわ。]
……わたしの分はいいから、 子どもたちに多めに切ってくださる?
[ ええ、深い理由なんてなかったわ。
そして、言い切ってから顔を上げたの。 すると、奥さんはじっとわたしを見ていた。 感情の読めない、深く暗い目をしていたわ。]
(+48) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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だめよ、あなたも食べなきゃ
(+49) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ ……こうするしかなかったのよね?*]
(+50) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[外回りの日は簡単にやってきた。 気乗りしないお出かけ前の子供みたいに、 俺は緩慢なしぐさで持ち物を確認をする。
食料をいれるためのリュック。 あと、金属バット。
万が一にもゾンビの体液に触れないように 口元にはマスクをして、 長袖のパーカーにズボンを着用。 「準備できたか」という元帥と一緒に、 バリケードから外に出ていく。]
(+51) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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……へ、こうなるとゲームの中の世界みたい
[数日ぶりにみた外は、荒れ果てていた。
爆発物飛び交う戦場じゃあるまいし 建物こそしっかり残ってはいるものの そこに人影は見えず 時折見えたかと思えばゾンビだったりする。]
(+52) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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「できるだけ日陰を歩けよ。 空からカラスが襲ってくることがあるらしい」
うへ。ゾンビカラス?
「わかんねえけど、 多分、人間の死体を食って 人の肉には慣れてるんじゃねえのかな」
うえーー…………
[やっぱ帰りましょうよ、って元帥に言いながら、 俺達は死んだ都内の中を歩いていく。]
(+53) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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[コンビニ、スーパー、デパート、 ドラッグストア。
そういったところを重点的に回りながら、 未回収の缶詰や、犬猫の餌 ――水でふやかせばまだ食べられるそうだ、を リュックの中に詰めていった。
病院なら院内食とかもあるかも、と そう提言したが、止められた。
今や病院はゾンビの巣窟であるらしい。]
(+54) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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[店舗の見回りが終わった後は、 鍵が開いたまんまの家を物色する。 RPGの勇者が家の棚を漁っても怒られない状況。 体感してみて思うけど、めっちゃ気味悪いな。] 元帥ー、なんか面白い話して
「あるわけねえだろ……
! 誰かいる」
[さすがに咎めに来たのか、 足音が近づいてくるのが聞こえてバットを構えた。 ……壊れた足を引きずってくるゾンビ一匹。
俺は、逃げよう、って言って、 元帥がその前にゾンビにバットを振り下ろした。]
(+55) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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[あっけなく殺されていくゾンビを目の前に 俺は何もいえず、そいつの姿を見ていた。 埃をかぶった机の上には夫婦の写真がある。 卓上カレンダーのとある一日が赤く花丸で囲まれていて 「結婚記念日!」と丸っこい字で書かれている。
倒れた女ゾンビの薬指には、指輪が光ってる。
台所の鍋の中には 食べられないまま腐っていったカレーが満ちていて 冷蔵庫を開ければ、小ぶりなケーキが二つ。
きっと、この女の人は旦那を待ち続けてたんだろう。 ゾンビになっても。
先日リンチにされたサラリーマンを思い出した。]
(+56) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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…………ナイスファイトォ しかしやんなっちゃうわね。 こう……生活感のあるエネミーってやつですかぁ?
生前が偲べちゃうとさあ
「考えんな。基本的にこいつらは俺達の敵だ。 それ以上のことは邪魔になるだけだ」
[言いながら、元帥は おはぎみたいになったゾンビに手を合わせている。 冷蔵庫傍の棚から、缶詰を見繕う。 盗むみたいにしてリュックに詰めた。]
(+57) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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[仲間からこんな話を聞いたことがあるんだ。
ゾンビ騒ぎになってから、 「絶対に離れない」って誓いあった男女が 翌日、女の方が感染してるってわかって 男が激怒した話。
”俺も感染してるなんて冗談じゃない” そう言って男の方は女をリンチにして殺して―― 結局、女とイロイロしてた男の方も感染してた、
そんなオチの笑えない話を 仲間たちは笑い飛ばして、酒の肴にしていた。]
(+58) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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[人間は慣れてしまう生き物だ。 なら、最終的に残酷なのは、 ゾンビと、人間と、どっちなんだろうな。
ゾンビを撲殺しても冷たい目をしたままの元帥に それを眺めながら食料を漁るのをやめない俺に、
そんなことを思っていたよ*]
(+59) 2020/10/25(Sun) 18時半頃
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