270 食人村忌譚
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うん! 食べたいもの、いっぱいある、から。 いっぱい、お願いしたい!
[容の言葉に、元気良く頷く。嬉しそうに、それは嬉しそうに、いらえをした。続く言葉にも、元気良く頷く]
うん、早く、おうち帰るね。 ちゃんと、早く、おうち帰るね。
[容と娘とでしばしば交わされる約束、それが果たされるかは、五分五分だ。娘はともすれば何かに気を取られて、何かに夢中になって、ひたすら辺りをうろついたり何処ぞに居座ったりなどするし、ふと男に連れていかれる事も多い。 母と二人暮らしていた小屋に、娘は今も一人住み続けている。容や、ゆりや、村人達にかわるがわる世話をされて、今もようなく、暮らし続けている**]
(27) 2017/11/23(Thu) 03時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 03時半頃
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― 翌日 ―
にー。 にー、にー。
にゃー。 にゃー、にゃー、にゃーっ。
[日が沈み、また昇って。朝の村を、娘はぱたぱたと駆け回っていた。空き地めいた材木置き場の片隅、灰の縞柄の一匹の猫を追って。呼ばわるように鳴き真似しながら、右往左往に]
――あっ。
[その途中。娘の意識が、ふと、他に向いた。 見えたの、は遠く歩く、一人の少女、愛理の姿。彼女の出鱈目な歌を、娘は真似たり、別の出鱈目を歌ったりと、その度「一緒に遊んで」いるのがしばしばだった]
(48) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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あいりー! あいりー、おはよー!
[愛理に向かい、大声で呼ばわる。ぶんぶんと大きく手を振ってみせる。と、愛理は気が付いた様子で娘の方を向き]
? ……行っちゃったー。
[だがそのまま、去っていってしまった。それを見ると、娘は少し残念そうにして、 ただ、すぐにまた、猫を追い始めた**]
(49) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 17時半頃
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あ。 すすむ!
[それから少し後。娘はまた、猫以外に意識を動かされた。それは、丁度、その両手がついに猫を掴み上げた瞬間。掴むなり弛んだ娘の手から、猫はぬるりと脱け出ていった]
すすむ、おはよう。 すすむ、元気? 私は、元気だよ!
[逃げてしまった猫はもう忘れてしまったように、娘はぱたぱたと進に駆け寄り、矢継ぎ早に声をかけた。 進。その少年の初夜を娘は相手にしていた。あるがままに行為を促し、あるがままに行為を受け入れた。それから度々、少年は娘に伽ならぬ伽をする事があった、 その、進の話を、娘はいつも大人しく聞いていた。大人しく、といっても、すぐにわからない言葉を聞いたりしたし、大人しいが過ぎて眠り出す事もあれば、いよいよ飽きて昔話やら何やらねだる事もあったのだが。 何しろ娘には、進がそうして語る話は難しくて、大体が何もわからないのだ。ただ、その語る声色は娘は好きだった。「あたまいい、すすむ」の]
(80) 2017/11/23(Thu) 22時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 22時頃
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元気?
うん、おなかの子、元気だって。 おばさま、言ってたよ。
[子供の具合を聞かれて返す、言葉は娘の家に近く住む女からの見解を伝えるもの――畢竟、全くの他人事のように]
ええとね、私は、猫さん見つけたんだ。 だから、追っかけてたの。 でも、猫さん逃げちゃうから、大変だったんだよ。
[何処へ行くのかと訊かれれば、笑って、熱心に楽しそうに、今しがたの出来事を語って]
(95) 2017/11/23(Thu) 22時半頃
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はーい。 わかった!
[進の忠告に片手を真っ直ぐ上げる、返事ばかりは元気良く強かに。ただ、それが真っ当に――その身がいよいよ重くなるまでは――果たされるはなかなか難しい事は、知れたところか]
ううん。猫さんは、もういいの。 私、ごはん、食べたい。 おなかすいた。
[ふるふると首を横に振り、零す。旺盛な食欲ばかりは、身重らしいと言えたか。と、新たに現れた姿に]
えつおばさん! おはよ……あっ! 猫さん!
[たたた、と嬉しそうに駆け寄っていった]
(128) 2017/11/23(Thu) 23時半頃
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あのね、猫さん、さっきここにいたんだよ。 それで、追っかけっこ、してたの。 でも、猫さん、逃げちゃったから。 また会えて、嬉しい!
[にこにこと笑い語りながら、両手を江津子の方に、猫の方に伸ばす。二度の捕獲を受けてか幾分大人しくなった猫、その両脇から手を入れ、そのまま引っ掴むようにぎゅうと胸寄せる、およそ丁寧とは程遠い仕草で抱き締めて]
? あれ。 猫さん、おけが?
……あ! えつおばさまと、おそろい?
[彩る赤に気付けば、首を傾げてから。 江津子を見ては、思い付いた、というよう声をあげた]
(148) 2017/11/24(Fri) 00時半頃
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そっかあ。 おそろい、良かったね!
猫さんと、おそろい。 私も、おそろい、なれるかなあ。
[江津子の返答に何かしら納得したように言い、腕の中の猫の顔をじっと見つめた。 猫に移った赤は、更に娘の襟元にも少しく移って、だがそれを気にする様子はなく――そもそも最初から猫に付いていた泥やら葉やらについても、意は介さずと]
おべんきょう。 頑張ってね。
[ふと焦り出す進の様子には、そう微笑みに応援の挨拶を向けた。彼が向かう、通う其処に、娘はいた事がない。無論、不要、無意味、と判ぜられたからだ]
(170) 2017/11/24(Fri) 01時半頃
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[神社に――ゆりに、 容に、 「ごはんをくれる」あてについて二人が話すのは、ふんふんと頷いて聞いていた。実際のところ、村の誰に彼に世話を焼かれるのが当たり前な中でも、その二人は特に娘に施してくれる相手ではあった]
えつおばさまは、お仕事?
[お肉を作る、お仕事。それがおばさまは、とてもうまい。皆が話すのを聞いて、それはよく知っていた、それが娘の認識だった。その勇姿を見る機会こそ、そうあるものではなかったけれど。 何とはないように聞いてみなどして、]
(174) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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うん。 一緒に、行く。 えつおばさまと、一緒に行く。
[向けられた提案に、こくこくと頷いた。娘にとっては、江津子も、今しがた去った進も、大好きな村の、大好き、の一つだ]
おせんたく、する?
わかった。 おせんたく。
[続く言葉にも、頷いて。 猫を抱えたまま、江津子が向かうに従った*だろう*]
(175) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 02時頃
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― 道中 ―
わ! すごい、すごーい!
[猫と江津子と行く、道中。江津子が器用に片手で卵を割り食べるのを見ると、目を丸くして感嘆を零した。 きらきらとした眼差しで江津子の手を、顔を、卵を、見やり]
うん、食べる!
[問われればすぐ頷いて、彼女に卵を食べさせて貰う。楽しみと味わうのが入り混じる、満足げな顔で飲み下した]
(236) 2017/11/24(Fri) 23時頃
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めれんげ?
[ふいに江津子の口から出た、初めて聞く言葉、聞き慣れない響きに、首を傾ける]
甘くて、雲みたい…… めれんげ。めれんげー?
[その説明には興味を惹かれたし、響き自体も気に入って、娘はそれを何度か繰り返し。 ただ、話が変われば、そのまま]
(237) 2017/11/24(Fri) 23時頃
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おなかの、? …… ととさま? おなかの、ととさま。
[向けられた問い。先程よりも大きく首を傾け、まずは何を問われたのから、ゆっくりと考える間があって、そうぽつりと返し]
ううん。知らない。
[ふるり、首を横に振って答えた]
不安? こわい? 不安。こわい。 誰かのそば。
[それから。継がれた娘への慮りには、一つ一つ、あるいは考えるように、あるいは覚えるように、繰り返して]
(242) 2017/11/24(Fri) 23時頃
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とのがた。とのがた。 ……とのがたは、さびしい? そば、いないから、さびしい?
[殿方、との一連には、一層悩むように、首を傾げ傾げしつつ。娘は江津子と共に、目的地へと辿り着いた]
(243) 2017/11/24(Fri) 23時頃
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― 神社 ―
ゆりさま! おはよう! あっ、シノ! おはよう!
[神社に辿り着く、と、ゆりの姿を見つけるなり元気良く腕を上げて挨拶し――もう一人の姿、シノにも同じように挨拶を向けた。すれ違いに去る姿、手を振り続けて見送り]
うん。 猫さん、きれいきれい、だね。
[江津子の申し出には、手の内の猫を明け渡して]
(247) 2017/11/24(Fri) 23時半頃
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ごはん、作る、おてつだい?
する! おてつだい、私、する!
[ゆりの提案を聞くと、手を上げてぴょんぴょんと小さく二度、その場で跳ねた。 江津子と語る様子には、その顔を、じっと黙って見つめていた、けれど。手を引かれれば、たったとついていっただろう]
(249) 2017/11/24(Fri) 23時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 23時半頃
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あけのしん。
[厨に響く、小気味好い音。とんとんというそれは聞いていると娘には面白く、それにやはり、「かかさま」を思わせるものでもあって。聞き入っていた中に、紡がれた名。 明之進、その少年と、娘はゆりが言う通りよく遊んでいた。齢の割に物憂く大人しい、だが優しい気質だった少年に、娘が遊んで貰うという形ではあったのだが]
あけのしん、足、速かったから。 足、美味しそう、だね。
[蘇る記憶を口にしながら、その肉を眺めた]
(275) 2017/11/25(Sat) 00時半頃
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/* あけのしん もぐもぐ
(-85) 2017/11/25(Sat) 00時半頃
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あけのしん、しあわせ? 私が食べたら、しあわせ? だったら、いいなあ。
[ゆりの言葉にゆるりと笑みつつ、指示されるに従い、肉を千切った。一手、一手、それは糧へと昇華されていく]
うん。残さない。 あけのしん、ぜんぶ、食べるよ。 食べてあげるよ。
[言い聞かせにはしっかりと肯定を返す。 終わりは、彼自身にでも向けるかのように]
(282) 2017/11/25(Sat) 00時半頃
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[そうして。食卓には、彼が並ぶ]
おなじ。
[同じ時期だと、己が孕んだのと同じ時期に彼が死んだのだと、言われれば娘は記憶を辿る。少し前。明之進が死んだ頃。――あの頃が「三月前」なのだと、さかしまに考える]
あけのしん。 あけのしん?
[生まれ変わり、語られる言葉に。娘は珍しく己の腹を見下ろし、また撫でる、そんな仕草をして。語りかけるように、呟いた]
――いただきます!
[後。挨拶と共に掌を合わせて]
(286) 2017/11/25(Sat) 00時半頃
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