254 東京村U
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[その事務所と家を足して2で割ったような部屋の主──鈴里みよ子は、ぺたぺたと奥の狭いキッチンから紅茶のポットをもってくると、ノートPCの前に座った。
エンターキーを押すと休止状態だったPCが立ち上がり、「解放治療カルテ」のファンがやっているらしいブログが表示された。
「ずっとおいかけてきたけど、昔から追ってたから 最近人気ですぎてサミシイ><;;」
等々書かれた内容をスクロールしていく。]
(310) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[とりあえず場所を変えなくては。 さっき電話に出たのは駅の中央東口改札の近くだった。 電車を使わず改札を出るか、それとも何かに乗り換えるか―― 一二三宛に急いでメッセージを書いた。]
『新宿、いられなくなっちゃった』 『別の駅で会えない?』
(311) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[コメント欄には投稿者に同調するように「今のままでいてほしい〜」という意見がちらちらと散見される。 変わってほしくないというのは、鈴里にもなんとなく感覚はわかる。ただ、人気が出すぎていやだ。という意見はよくわからなかった。 ──好きなものなら、広まってほしいと思う。]
でも、一気に有名になっちゃうと それも考え物なのかしらねぇ……
[カーソルを動かして、ブラウザのタブを切り替える。表示した「知らない街ニキ」についてのまとめたブログのコメント欄を眺める。だんだんと日につくレスの数は、あからさまなくらいに減っている。]
(312) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[今の世の中はあまりに情報過多だ。何かが起きたとしても、 あっという間に消費されて忘れられていく。
けれど、 それでは]
もったいない、わよねえ
[あまりに、夢も希望もない。]
(*7) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[画面をみたままため息をつく。と、 テーブルの上に置いたスマホが震えた。
みると「硯友社」のLINEグループに 新規メッセージが届いたところだった。
『作業すすんでますか』
イヤホンのアイコンがふきだしでしゃべっている。 発信者名は「サミュエル」となっていた。 団体メンバーの中ではわりと最近参加した青年だ。]
(313) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[渋谷で座り込んでいるところにアンケートをもって話しかけたのがきっかけでやりとりをするようになった。当時のアンケートの回答は「なんでもいい」。それなら、と団体支部に来るかと誘ってみたところ、本当についてきてからの縁だった。
「もちろん」
と、短いレスを返すと、すぐに既読がついた。『そうすか』とリアルタイムで反応がくる。]
(314) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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PPP イルマは、メモを貼った。
2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[開きっぱなしの画面に続けて吹き出しが並ぶ。今度はさっきよりも長いメッセージだった。
『さっき、病院の方から連絡きました。 先生、今日は急患が入ったから、 そっちに顔だしはなしだそうで』
『それで、あの例のお母さんとお父さんですけど 今日は病院に泊まってかれるってことで。 院内は電波ダメなんで、俺だけ今外ですけど』
続けて、二連続でそう連絡が並ぶ。]
(315) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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それは…………… 間違いなく、事件だよね。 それも、かなりヤバイ系の。
……キルロイちゃんが、事件に首をつっこむタイプだったとは、知らなかったな。
[厳密には入間の一件は違うかもしれない。 自分宛に電話が来たとあっては、無視を決め込むわけにもいかないだろう。 しかし自分の一件は違う。出目照子は、彼に危うさを感じた。 他人の事件に足を踏み入れると、切り上げ時を見失って破滅してしまいそうな。]
危ないこと、しちゃヤだよ。 お人好しなのか好奇心旺盛なのか知らないけど、出目は心配です。
(316) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[一二三からの返事はどうだろう。 入間は、指定された場所に、すぐに向かうつもりでいる。 続けて一二三にメッセージを送った。]
『きつゆるい先生わかる?』 『代々木いったら、最悪泊めてくれるかもって』
[従兄にも、『新宿に居られなくなった』とだけ送って、一二三の返事を待った。]
(317) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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PPP イルマは、メモを貼った。
2016/09/30(Fri) 23時半頃
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娘さんの言ってることが全て事実なら、ですけどね。
[そうは言ったが、心は信じる側に傾いている。 実際に話していて、あれが演技だとは思えない。 そう信じ込んでしまっている、考える事も出来なくはないが……]
はい……気をつけます。
[どっちもだろうな、今日の行動を振り返ってそう思った]
(318) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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[顧客との電話連絡を終え、またふさぎ込みはじめたジリヤに、本郷はペットボトルのお茶を差し出した]
『おつかれさん。今夜は麻布を避けて西武沿いのマンションで休め。物は後で運ばせる』
[ゾッとした。自分の身が狙われていることを改めて思い知らされた]
はい……わかりました。ありがとうございます。 あ、あの、この携帯、もうすこし持ってていいですか? ゆうくんから、すぐ折り返しかかってくるかも……
(319) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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そんなだから、出目の案件にも あんまり突っ込まない方がいいんじゃないかな〜……なんて、思ってみたり?
[もちろん、そう言われて引き下がるとは思っていないのだけれど。]
(320) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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それとこれとは話が別です。
[即座に言い放った]
(321) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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ですよね……。
[肩をすくめて、苦笑い。]
……話すよ。約束だもんね。
(322) 2016/09/30(Fri) 23時半頃
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あー……言いにくい。 ほんと、あんま心配しないでよ? これでも大人なんだし、明日はちゃんと警察行くから。
えーっとね……ちょっと、さっきの話と似てるんだよね。
あの……居たの。あれが。あたしの家にね、
……知らない人が。
[少し前から、誰かに尾行されていたこと。 家が見つかって、荒らされたこと。 家の中に、立ち入られたこと。 5日前から、家に帰っていないこと。 そしてついに、今日、対面してしまったこと。 夢中で逃げて、駅前までたどり着いたところで電話を受け取ったこと。 そこで荷物を置いてきてしまったこと。 要領を得ない、原稿の用意が間に合わない話し方。 記憶を手繰り寄せながら、自分でも少し混乱しているのだろう。 すべてを話し終えて、二杯目を飲み干したときには、目尻にわずかに涙が浮かんでいた。]
(323) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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[円卓へ僅かに身を乗り出す。 小さく頷いて、照子が語り始めるのを待った]
(324) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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『ああ、任せる。きたら知らせろな。 他の客には準備中とでもいっとけ』
[本郷は、三ノ輪が率いる男たちの中に混ざり、エレベーターの中へ消えた。 鬼が居なくなったことで、その場にいた末端構成員たちの緊張がほぐれ、ワッと一斉に雑談がはじまった]
『おい、見たか、例のヤリ部屋(2002号室)。 ありゃ、清掃の連中かわいそうだなー!』
『準備室(2005号室)もヤバイことになってんだろ? 手当もらってもオレは勘弁だぜ〜』
[耳にはいる言葉のどれもが、ジリヤの胸を鋭くえぐった。 膝の上に置いていた本をとり、再び胸に抱きしめて、 迎えがくるのをひたすら待った]
(325) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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[照子が語り終えるまで、口を挟むことはなかった。 グラスが空になったところで、ようやく口を開く]
誰にも相談してないんですよね……辛かっただろうに。
[そんな感想を漏らしてから、更に言葉を続ける]
ただ、もっと早く相談してほしかった。 ……って、思います。
[責めるような言葉はそれくらいにして、話の中身へと思考を向ける。 聞いた限りでは、ストーカーのようにも思えるが]
警察もすぐ動いてくれるとは限りませんからね。 さっきの娘さんも警察に連絡したけれど、駄目だったって言ってたし。 それで、その相手は……知らない人なんですね? 全く、見覚えもない。
(326) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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[結局ご飯は駅近くのサイゼリヤで済ませてしまった。 8時過ぎの電車に揺られながら、視線は離れていく新宿の街を見ていた]
本当、いなかったな。 あの人……。
[たまたまいなかっただけかも知れない。 いなくなって欲しい、とまでは思わないけれど、いなくなって、それでこんな風に話題が上がることを、少しうらやましいと思った]
(327) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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私がいなくなっても、誰も、気づかない――。
[ぽつりと口から出た言葉に、自分で驚いて、口元を押さえた]
降りなきゃ。
[自宅付近の駅に着くと、慌てて電車を降りる。 どちらかが帰っていれば、遅いと叱られるかも知れない。
でも、そのことを期待する自分もいて、マンションそばまで来ると上を見上げた。 ついている明かり、――リビングに誰かがいる、帰っているのはどちらだろう? それとも、二人共だろうか。
少し小走りになってエレベーターへと駆け込んだ]
(328) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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『オレ代々木まで行っても大丈夫なの?』
(329) 2016/10/01(Sat) 00時頃
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『むしろ木露先生はさっき会ったけど』
『大丈夫そうなら代々木行く。ウチは連絡すりゃ多分なんとかなるし』
[新宿三丁目の駅から山手線へと乗り継ぐ*準備*]
(330) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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……個人的には相談したかったけど、あたし達、編集者と作家だよ。 逆の立場でキルロイちゃんがもしストーカーに悩まされたとして……あたしに相談してくれた?
[手で目尻を拭う。さっきよりちょっと鼻声だ。]
見えなかったよ、顔は。 部屋の明かりで逆光だったし、外の光は暗かったし。 追い回されたときも、顔は見なかった。
……キルロイちゃんを危ないことには巻き込みたくない。 ストーカーに付きまとわれた女が頼る男の人なんて……いかにも狙われそうな立ち位置じゃない。 大丈夫。これ以上は。ちゃんと自分で解決できるから。
でも…………。
(331) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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今だけは……ごめん。一人になるのが怖い。
泊まっても、いい? 床に転がしてくれるだけでいいの。
(332) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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[雑談のなかで"消えた殺人鬼"についての憶測が飛び交い、尾ひれが膨らみ、三合会説や復讐屋説、しまいには『クローゼットの怪物説』や『ベッド下の男説』にまで発展している]
(……ちがう……ちがう、ちがう、ちがう! みんな……勝手なことばっかり!!)
[ならば自分はどうだろう?自分が今夜見たこと、体験したこと、全ては事実だったのか?それとも頭の病気で、"もう一人の自分"という幻覚を見ていただけなのでは?
ならば、あの憎らしい男たちを実際に殺したのは――]
(333) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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『来るなら二人でって言ってたよ』 『でも最終手段として考えてだって』
[と、一二三に返事を送った。 それはそうだろうな、と、実際文字にして改めて思う。 見知らぬ高校生二人、しかも一人は顔もしらない、わけのわからないことに巻き込まれている女子高生。 出来れば部屋にはあげたくないだろう。]
(334) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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『じゃあ代々木向かうわ』
『日付は多分またぐと思う』
『女の子一人なんだから気をつけろよ』
[そうLINEで送って、山手線の到着を――――]
(335) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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あの人なら……
[ポーチから取り出した財布を開き、カードポケットから丁寧に1枚の名刺を取り出した。そこに記されている名前は――
『ホラー作家 木露 流衣』]
この人ならきっと……解決してくれる。
(336) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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……分かりました。 納得はしてないけど、今日はもう疲れてるだろうし。 話の続きは明日で。
[巻き込みたくない、自分で解決という言葉。 それが腹立たしくもあるが、それ以上を続けることはしなかった]
ええ、こんな話をさせといて一人にさせるわけないじゃないですか。 ただし、泊める条件として俺が床で寝ます。 出目さんはベッドで寝て下さい。
(337) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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『じゃとりあえず代々木で会お』
[と一二三に返事をして、入間も代々木へ向かった。**]
(338) 2016/10/01(Sat) 00時半頃
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