159 せかいのおわるひに。
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― 学校の運動場 ―
………。
[少女は分かっていなかった。錠の思うことを。>>4:101 寒さに身を縮めるように首をすくめて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す錠の顔を、 首を傾げつつ眺めていた]
え? え?
[撫でられたことへの驚きもさることながら、 ――今から、という言葉に、飛び上がりたいほど喜びたい気分になった]
はいっ、じゃあお願いします、――最後の授業を。
[ぺこり、と頭を下げる。 教科書もノートもシャープペンシルもないけれど、 先生と生徒がいれば授業は成立するのだから]
(6) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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デメテル、………遅いなぁ。
お兄さんと会わせてもらえるって思ったのに。
[デメテルを最後の授業に付き合わせるつもりはないが、 やりたいことがまだなされていない状況を思えば、自然と表情は曇る。
少女は、知らない。 デメテルの兄が、彼女をひとりにして逝ってしまったことを]
(8) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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お仕事熱心で素晴らしいことです。
[ちょっとだけ調子づいた口調で返す。>>15
少女も、当初は地面をノート代わりにしようと棒状のものを探していた。 ちなみに桜の樹の下に置いたままのシャベルは却下だ。掘るには向くが書くには向かず。
やがて視線は地面から校門の方へと忙しなく向き、 デメテルの戻りの遅さを気にかける言葉が零れ、]
もちろん! 探しに行きますよ。 ……校門の方行って戻ってこないってことは、………あっちの方にいったのかなぁ。
[提案めいた言葉に一も二もなく頷いて、 校庭の端をぐるりと一周するように小走りで進む。 校門のところ――にはいない。 このまま端をぐるりと行けば未だ燃える校舎の近くまで辿り着くが、 恐れは、感じなかった]
(18) 2014/01/23(Thu) 01時頃
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[嫌な予感がする。 少女が脳裏に浮かべていた、兄妹水入らずの光景の想像図も、 その予感のせいで、どこかに行ってしまう気がする。 デメテルにあげたあのチョコレートを、二人で仲良く食べている姿が、遠ざかる]
ここもいない、ってことは……校舎の方に何か用なのかなぁ。 もしかして……まだ人がいたとか?
[立ち止まって一休みして、デメテルと二人、思い出を火葬した場所を見やって。 それからまた、一歩を踏み出した**]
(19) 2014/01/23(Thu) 01時半頃
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はいっ……、気を、つけます。
[後ろから聞こえる錠の忠告に頷いた後、>>32 すぐには近づけないこの身の代わりにはなるかと、声を、飛ばす]
デメテルー、どこー? いたら返事してー。………けほっ、
[咳き込んで、慌てて口を手で押さえながら方向を変えて進む。 その間ずっと、前だけを見て。 後ろは――背中は、すっかり錠に任せた気になっていた]
(33) 2014/01/23(Thu) 14時半頃
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[かつての少女は、自分を消したいと思っていた。 本棚にある、とある物語の主人公のような末路>>2:94を迎えてしまえれば、と。
もし今の少女にあの時のような自滅を望む心があったなら、 衝動的に燃え盛る校舎へと飛び込んでいただろう。火ではなく煙で死ねそうだ。 だけど今の少女はそうせず、]
火事だーーー! 火事だよ、逃げてぇ――!
[叫び――と呼ぶにはか細い声をあげる。 火をつけている最中に叫べなかった分を帳消しにするかのごとく]
(34) 2014/01/23(Thu) 14時半頃
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[そういえば、この前見たお芝居にも似たようなシーンがあった。 叫んでいたのは主役の人ではなかったけれど。
お芝居とかドラマとかには、メインで見るべき“主役”がいる。 だけど自分の人生をお芝居とかに例えた時自分の周りにいるのは、 “準主役”とか“脇役”とか“端役”とかばかりだ――主役は、自分自身なんだから]
[そんな、とりとめのない思考は、デメテルを発見したことで途切れる]
だいじょうぶ? ――――って、 ひっ、 な、何これ、また大変なことになってるじゃん!
[倒れている人。 広がる、炎の赤よりも暗い紅。
とっさに回った思考は、状況を問うより身の安全を確保することを優先させよというもの]
(35) 2014/01/23(Thu) 14時半頃
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とにかく、ここは危ないから――、
[逃げよう、と言い切る前に声はか細くなって消える。
だって、倒れている人の片方は、 デメテルがおしまいの時を過ごしたいって言ってた彼女の兄で]
そんな……どうして、……ひどいよこんなの。
[まるで、悲劇を見ているような――いや。 これはもう悲劇以外の何物でもなかった**]
(36) 2014/01/23(Thu) 14時半頃
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なんで。 なんで、……謝るの。
[デメテルが兄(や倒れているもう一人の人)に手をかけたようには見えなかったから、>>40 とっさにそう言った後で、]
もし……火事のせいだって言うなら………。 謝るのはわたしの方だよ。
ごめん、……ごめんね。
[そう付け足して、俯いてしまう。 ここで少女と出会わなければ、燃えている学校の近くで再会することもなく、 もっと穏やかな最期を迎えられたかもしれないのに]
(50) 2014/01/23(Thu) 21時半頃
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そんな、そんなの、わたしだって。 どうしたらいいのかわかんないよ……。
[少女が自分を消そうと願わずに今日まで生きてこれた理由のうちのひとつは、 治る可能性はある、という“希望”を持てたことにあった。
それをデメテルにも持ってほしいと願うには、 状況がひどすぎるし、何より時間が足りなさすぎる。
視線は空へ向き、やがて後ろを辿ってから、 デメテルに近付いた錠へと向く。 先生であり、奥さんを亡くした人でもあるから。 何かの答えを求めて、言葉に耳を傾ける]
…………。
[錠のようにすぐに言葉が出てこない自分が、もどかしい]
(51) 2014/01/23(Thu) 21時半頃
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……意味。
意味がないことなんて、ないよ。 もしかしたら、掘り起こさないで終わっちゃったタイムカプセルみたいに自分のことを思ってるかもしれないけど、 そんなこと、……。
[デメテルがここにいること。死せずして。 その価値、その意味、その意義。
それは少女には計り知れないけれどデメテルの中にまだ残っているんじゃないかって、 わずかすぎる望みをもって言葉を紡ごうとする。
なんでこんなかっこいいセリフが浮かんだんだろう。 これもまたあのお芝居のせいかもしれない。
けど駄目だった。最後まで言えずに終わってしまった。 何もないって、言ってしまった。>>49]
(52) 2014/01/23(Thu) 21時半頃
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違うよ、デメテルが二人をこんな風にしたんじゃない……! 私が……、タイムカプセルのこと話したせいなんだからさ。
[だけどこれだけは聞き過ごせない。 首を横に振って告げる。泣き叫ぶような声音]
……だいたい、お兄さんが死ぬ前にそう言ったの? デメテルのせいだって。デメテルが悪いんだって。
[彼女の兄の最期の言葉は――何だったのだろう。 恵まれた死、なんていうのはないと少女は思うのだが、 そう思ってほしい気持ちは、分からなくもない。
そういうことを、あるいは嘆くことはないんだと、思って逝ったのだろうか**]
(53) 2014/01/23(Thu) 21時半頃
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デメテル……。
[泣いてもいいのに、と。>>54 どう見てもうまく笑えていないデメテルを見て思う。 涙を止めることはできなくとも拭うことはできるから。ポケットの中のハンカチで]
変、なの……、お礼を言われるなんてさ。
[だけどそれもデメテルが自分で決めたことなら。 もう、非を唱える言葉の持ち合わせはない少女は、黙り込んでしまうしかない]
(67) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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優しい人………だったんだね。最期まで。 聞いてた通りの。
ほら、つまりは言ってないじゃない。デメテルが悪いって。 だから、……。
[だから、………どうしよう。 止まった思考を錠の言葉がぎこちなく動かす。>>59]
やりたいこと…。
(69) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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[それなら、まだあった。 デメテルの兄に会えたなら中華まんのお店の様子を見に行きたかったし。
そういえば。期間限定で4つそろえると消える生物を模したあんまんを売ってた際、 「次は紫色の作ってくださいよ」と一方的に約束させたのだが。 果たされずに世界は終わりそうだ。なんという。
でも、今は]
デメテルの好きなようにすればいいよ。ここにいるにしろ……、残るにしろ。
その代わり、わたしも近くにいていいかな。
(70) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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[それから、錠の方を振り返って頭を下げる]
ごめんなさい……。 せっかく最後の授業、受けさせてくれるって話だったのに。 でも、
友達を放ってわたしだけ……ってわけにはいかないんですよ。
[昨日までは確かに友達ではなかったかもしれない。 でも、今日ここで出会って、職員室で一緒にお茶を飲んだんだから、 もう友達ってことでいいじゃないか。
そう、決めたのだ。 他ならぬ少女自身が]
(71) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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[本当。本当の本当。 デメテルの傍にいるのを望んだのだって、負い目からじゃなくて、 友達とはこういうもの――辛い時にそばにいるものだって思ったから]
わたしの方こそ、ありがとう。 楽しかったって言ってくれて。嬉しかったよ。
もしかして、……初めて、だったのかなぁ。
[だとしたら、初めてにしておしまい。 悪くない響きだと、思った]
あれ、先生って空気読めないって評判だったんですか?
[だとしたら少女がその辺の情報に弱かったか、 あるいは錠の旗色悪い面は見ないようにしていたかのどちらかか>>75]
(80) 2014/01/24(Fri) 00時頃
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