194 花籠遊里
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 02時半頃
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── 東雲の頃 ──
[ベルさまとの閨、その『蝶』が飛び去ってしまわれて 後片付けをと動き出せるようになるまで 丸窓を見上げていた頃にございます。
花主さまのお気配は、淀んだ空気にてすぐにわかるのでございました。
宵闇色をした長いお髪が少し何かで焼けておられるようでした。 僕は着物を纏い直して、花主さまへと正座し 彼の歪んだお言葉を、今日も耳にするのです。]
(*0) 2014/09/17(Wed) 02時半頃
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[慈しみに満ちた、歪な言の葉>>1:*57 僕はこれをもう幾歳聴いてきたことでしょう。
愛でるだなどと、しもしない癖に。 愛しいだなんて、思いもしない癖に。
本当のところなど、どうかは判りませんが 僕はいつも、そう思っておりました。
花吹雪のように舞い散るは>>1:*59 今宵の僕につけられた値でしょう。 幾らのものであったのかなんて、知ろうとも思いませんでした。
ただ、見下す花主さまの足元。 落ちた花弁を数枚手に取り、恭しく頭を下げたのでございます。]
(*1) 2014/09/17(Wed) 03時頃
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花主さま。 櫻にこの対価で、花の苗を与えては下さらないでしょうか。
庭に、秋を迎えたいのです。
[花の苗を与えて頂くには数枚で事足りるでしょう。 それ以外はいりませんと、僕は足元に跪きます。 膝を揃え、内股を『蝶』の残り香に染めたまま。 頭を地につけ指をつけ、願い請いました。
其の姿はきっと他の『花』たちも この地下牢で幾度か目にする、東雲の光景だったでしょう*]
(*2) 2014/09/17(Wed) 03時頃
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── 中庭 ──
[宵に染まる空の下、硝子に阻まれた箱庭の中。 射干玉の眸と同じ髪と、櫻色のリボンを揺らして 僕は中庭におりました。 手には一回り大きな軍手を。 錆びて欠けたスコップに、差し口の曲がった如雨露。 そして花の苗と共に、あちらこちらを行ったり来たり。 額には少し汗をかくほど、ちょこまかと 動き回っているのでございます。]
苗、頂けてよかった。
[自然と頬が綻びます。 贅沢などそれほど沢山とは出来ぬ身です。 こうして苗を買い与えてくださる事には とても感謝しているのです。]
(4) 2014/09/17(Wed) 03時頃
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[僕はきっと、昼頃から中庭に居たでしょう。 あっちにはアイビーゼラニウムを。 こっちにはサンタビリアを。 奥にはカーネーションを。 白、ピンク、オレンジと秋に似つかわしい色合いを添えていきます。 ある『花』に告げられた事も知らず>>3]
……貴重なものは、さすがに無理ですよね。
[困り眉で、手前には代わりのコスモスを植えていきます。 中庭で草花に囲まれて、小さな僕がしゃがんでいると 宵に紛れても見えるのは、櫻色のリボンだけでしょう**]
(5) 2014/09/17(Wed) 03時半頃
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[この世には、ちょこれいとの匂いのする花があるのだそうです。 その色を、その香を、知りたかったのですが どうやら手に入らなかったらしく 置いてあったのは、似た色の オレンジ色をした秋桜でした。]
…────。
[細く、少し長い息を吐き。 僕は中庭で、秋をお迎えする準備をしていたのでございます**]
(*8) 2014/09/17(Wed) 03時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 03時半頃
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[昨晩より欠けた月が秋の夜空に浮かんでおりました。 不意に見上げれば、額より頬を伝い落ちる汗が ふわふわに仕立てた土の上に、はたりと音を立てて落ちました。 大きな軍手で、浮かぶ汗を拭います。 頬が土で汚れてしまいましたが、また後でお顔を洗うことにいたしましょう。
秋の櫻、橙の隣へと薄紅色を並べて。 無意識にもふっと、笑みをこぼしていたのでございます。]
(8) 2014/09/17(Wed) 12時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 12時半頃
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[今宵はどんな蝶が、誘われてやってくるのでしょう。 ベルさまは来てくださるでしょうか。 昨夜の誠が、もうすでに形を変えていようとも。 僕はそのお顔を見ればきっと、ベルさまと名を呼んで手を振りお迎えするでしょう。
暫しの考え事は続きます。 その間も僕は黙々と、中庭の花壇を秋の色に移し変えていくのでありました。]
(11) 2014/09/17(Wed) 13時頃
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[どちらからか、声がしたように思います。 それはどちらが先でしたでしょうか>>10>>12 硝子の向こうに黒と金のニ蝶を見つけ 僕はそちらの方へと足を向けました。]
ベルさま、こんばんは。 あなたさまも…お目にかかるのは初めてではありませんね、こんばんは。
[微笑み絶やさず、僕はお二方に挨拶を告げます。 そして昨夜、朽ちた花から採っておいた花の種を数粒 そっとベルさまへとお渡ししました。]
次にお逢いしたとき、ベルさまにお渡ししようと思っていたのです。 こんなにすぐに逢えるなんて。
[花の種は『光輝』という意味を持つ夏の花。 日に向かう姿は夏にありふれた、けれどどれも美しく咲くもののひとつでありましょう。]
(13) 2014/09/17(Wed) 13時半頃
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僕は櫻子と申します。 昨夜も中庭でお姿を拝見したのですが…
[その時は月明かりの下、映える銀糸と共にでありました。 あの晩は亀吉さんをお買いになられたのでしょうか?]
お花が、お好きなのですか?
[『花』ではなく、花のつもりでの言葉です。 中庭で二度もお見受けしましたので、お花が好きなのでしょうかと 小首を傾げて訪ねてみたのでございます。]
(14) 2014/09/17(Wed) 14時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 14時半頃
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はい、櫻の子と書いて「おうじ」と読みます。
[傍によると、片方の『蝶』は僕の名前を口にしました>>15 そのあと直ぐにベルさまへと種を渡していたのですが 眉尻がお下がりになられたことには、気付くことが出来ませんでした。
向き直り、問う声に返るのは 小さく動くだけの唇が放つ声でありました>>16]
(24) 2014/09/17(Wed) 19時半頃
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月、ですか……──ふふっ。
[僕は思わず、袖で口許を多います。 銀花にお誘われになった『蝶』なのでしょう。
長らく此処に在る身です。 『花』に魅せられた『蝶』も、幾度となく見てまいりました。 目の前の彼がそうかは知れませんが 「花より月が」と答える姿に、微笑ましい笑みが零れたのです。]
ペティンガーさま。
[名をお聞かせ頂けたなら、その微笑を見上げます。 『蝶』同士、ご挨拶なさるのならば 『花』は『花』らしく口を噤んでいることでしょう。]
(25) 2014/09/17(Wed) 19時半頃
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[お二方の握手を見守っていれば>>17 次にはこちらに向いて下さったベルさまの手に 種を預けることを許されました。
涙のような雫型、不規則に入った縦縞。]
はい。 向日葵の花の種でございます。 少し前まで、大きな花を咲かせていたのです。
僕が育てたんですよ?
[少し自慢げに、僕は笑顔でお答えします。 和やかで、柔らかな『しあわせ』を 確かに今日も、僕は感じていたのでございます。]
(26) 2014/09/17(Wed) 19時半頃
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はい。 今宵も佳い『花』と出逢えるとよいですね。
[『蝶』は移ろい行くもの。 引き留める手も術も、『花』にはないのでございます。
ベルさまが廓の中へと戻るのをみつめながら>>23 『花』たる櫻は、微笑みを携え 恭しく少し頭を下げて見送るのでありました。]
(27) 2014/09/17(Wed) 19時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 19時半頃
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本当は咲いたものをお渡しできればよかったのですけど。
[季節の移ろいに枯れた花を渡すわけにはいきません。 花は咲き、咲けば散ります。 散った花を渡すわけには、いかないのでございます。]
太陽の花、ベルさまみたいでしょう?
[昔の事など僕に知れるはずもありませんでしたが、僕は過去の御方と同じように ベルさまを太陽のような方だと喩えました。 こんなにも朗らかに笑い、美しく、そして情熱的に照らすことができる方なのですから。]
花は愛でれば、美しく咲くのですよ。
[そう、告げる言葉には他の意味が含まれたように感じられたでしょうか。 僕は、それを思って口にしたわけではありません。 ですがどこかに、そんな思いがあったのかも、知れません。
去り行く背に、僕は微笑んだのでございました。]
(39) 2014/09/17(Wed) 20時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 21時頃
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[『蝶』が二つ、話し合う様を見るのは櫻の微笑みでした>>42 お喋りされているのは、羨ましく思うばかり。 外という世界を知らず、夜にしか咲かぬ『花』には お喋りをするという何気ない刻が、それはそれは 楽しく、嬉しいものに思えていたからにございます。
ベルさまと僕とのお話も終えた頃、ペティンガーさまからお声がかかりました。 「なんで笑ったんだい」>>43 その問いに、失礼なことをしてしまったと 少し眉尻を下げるのです。]
申し訳ありません。 昨夜ここで、銀花と戯れるあなたさまをお見かけしましたので。
亀吉さんのことが、お気に召されたのだなって。
[書物に見る、絵画のような光景でした。 昨夜見た光景を思い返しては、微笑ましく思ったのです。]
(51) 2014/09/17(Wed) 21時半頃
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[さわさわと、肌寒さをつれた秋風がそよいでいます>>44 中庭に植えられた秋も、その身を揺らしていることでしょう。
眩い色彩とはまた違う、中庭の花たち。 誰も気付かないでしょう。 その花々に篭められた意味も。 寄り添いあう色の意味も。
或る色ばかりが増えた、そのわけも。
僕でさえ自覚などしていないのですから。 きっと誰にも、わからないでしょう。
胸の裡、呪詛が>>19通り過ぎることも いまはまだ、ありません。]
(56) 2014/09/17(Wed) 22時頃
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……藤之助さん?
[そよぐ秋風に射干玉の糸は幾らか弄ばれ、櫻色のリボンが揺らぎます。 髪を軍手で押さえるようにしていれば 窓の向こう、見える人影があったでしょう>>58
『蝶』の前ではありましたが 昨日の宵と変わらず、僕は少しだけ声を大きくいたします。]
とうのすけさーんっ。
[気付いてくださるでしょうか。 じいっと射干玉を向けては見るのですが どこかそのお姿は寂しそうにさえ感じられるのです。]
(60) 2014/09/17(Wed) 22時頃
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[丁度、声をかけた頃にございます。 時折目にする、小奇麗な『蝶』が藤の花へと話しかけておられました>>59]
わっ!
[僕の呼び声と、『蝶』からのお誘いに 藤之助さんが戸惑われてはいけないと思い 僕は咄嗟に、ペティンガーさまの後ろに回り この小さな姿を、隠したのでございます。]
(62) 2014/09/17(Wed) 22時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 22時半頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 22時半頃
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[僕がペティンガーさまに隠れてしまう前のことです。 銀花と喩えましたその『花』のお話に なにやら思うところがありましたようでございます。
続けました言葉に、うろたえる姿までお見せになって>>68 僕は失礼にも、もう一度微笑んでしまうところでありました。]
お判りやすい、御方ですね?
[軍手で口を隠し、耐えられぬ笑みを隠しました。 傲慢で高慢な、けれどとても判りにくい彼の『蝶』とは全然違う御方だと 庭を泳ぐ視線を確かめながら、思っていたのでございます。]
(75) 2014/09/17(Wed) 23時頃
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[庭の花々を眺めていらっしゃった ペティンガーさまの唇が紡がれた言葉は 随分とお低く、なにか負の感情を含むもののようにさえ思えました>>69
ですが、その後続いた声と 判りやすいと喩えました、先の彼の態度をもって 僕は曖昧では在りますが その意味を薄っすらと、理解したのでございます。]
ベルさまは昨夜、僕をお買いになられましたから。 そんな風に見えるのかも、知れません。
[情事交わればこそ、そして甘過ぎるほどの蜜に毒に 二人して溺れた昨夜があるからこそ 他者にはそんな風に見えていたのかも知れません。]
(76) 2014/09/17(Wed) 23時頃
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[「花って、蝶と寄り添う合うこと、あるの。」
その問いには、はいとお答えするべきなのでしょうか。 それとも、いいえとお答えするべきなのでしょうか。
ふっと、脳裏を呪詛が駆け巡っていきました。
何もお答えすることが出来ず。 何をお答えしたいのかもわからず。 答えることから逃げるように、窓辺に視線をそらしたからでしょう。 その時に、藤之助さんと『蝶』を見つけたのでございます。]
(79) 2014/09/17(Wed) 23時頃
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‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
[それは『愛』を知り、そして亡くなった。 僕を育ててくださった、丁という『花』の言葉でした。]
(*27) 2014/09/17(Wed) 23時頃
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櫻子は、藤之助さんに見つかってないかと、そろり顔を出しました。
2014/09/17(Wed) 23時頃
櫻子は、ヘクターさまのような色の花を射干玉に映しております。
2014/09/17(Wed) 23時頃
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[そう、とペティンガーさまの背から顔を出します。 顔を傾けたような姿勢では、櫻色のリボンがゆらゆらと 風に揺れていたことでしょう。
藤之助さんは、白き『蝶』に抱き寄せられ 手を振らされているようでした>>72
けれどお嫌そうな表情ではありません>>77
不思議な光景に困惑しつつも 大きな軍手をはめた手を、おずおずと振ってみるのでございます。]
とっ。 申し訳ありません、御召し物は汚れませんでしたかっ?
[少しして、土で汚れた身体を近づけていたのだと気付きました。 慌ててペティンガーさまから離れましたが お召し物を汚してなど居なかったでしょうか。]
(80) 2014/09/17(Wed) 23時頃
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[お召し物が汚れていらっしゃるようでしたら 申し訳ございませんと謝って、その土汚れを払いましょう。 大丈夫でしたら、ほっと胸を撫で下ろすのでございます。
白き『蝶』と藤の『花』は、どうやら睦まじく 今宵の品定めであるならこれ以上の邪魔はなりません。 視線を送ることは控え、代わりに射干玉が宿したのは 秋の色をした秋櫻の一輪でありました。]
ペティンガーさま。 …先程の、ことですけれど。
[僕はゆるりと唇を開きます。 しかし言葉を紡ぎ終えるまで、顔は俯いておりました。 眸と同じ射干玉の髪は、表情を隠してくれていたと そうであって欲しいと、僕は願っておりました。]
(100) 2014/09/18(Thu) 00時半頃
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『花』と『蝶』が寄り添えるのは 籠の中、夜の夢だけに、ございます。
理由は様々ではありますが 僕たちは、此処にしか咲けぬ『花』。
理由は様々でありましょうが あなたさまがたは、花々を移ろう『蝶』。
『特別』などなってはならず。 『特別』などつくってはならず。
全て、す べて───……
[どうしてでしょう、言葉が震えてしまうのは。 きっと秋風が冷たすぎるからで、ございます。]
(103) 2014/09/18(Thu) 00時半頃
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……───ゆめ、ものがたりに、 ございます。
(104) 2014/09/18(Thu) 00時半頃
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好意を持つことなど許されません。 悪意を持つことさえ許されません。
本気になっては、なりません。
甘い夢も、苦い夢も。 愛の囁きも、 ……意地、悪な …囁きも
この籠の中で起こる全て
夢物語なのでございます。
[酷く声が弱く掠れた部分がありました。 謂い終わった後、僕は一度だけ眸を伏せました。 長い睫毛が『蝶』と『花』の代わりに その身を寄り添わせたのでございます。]
(106) 2014/09/18(Thu) 00時半頃
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[僕は誰に言い聞かせているのでしょう。
傍にいる『蝶』に? 傍に来ぬ『蝶』に?
………咲くことを拒む『櫻』に?]
(*28) 2014/09/18(Thu) 01時頃
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[中庭彩るは秋の色。 夕焼けのような橙色。
秋に咲く櫻。
自覚してしまう前に、眸を伏せましょう。 僕はこの廓に咲いた『花』。 散った『丁』の教えの元に。
微笑み絶やさず色香を放つ、『花』の一輪であるために。]
(*29) 2014/09/18(Thu) 01時頃
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[「聞いちゃダメなことだったかな。」>>109 そういわれた時、口を噤めばよかったと何度思ったか知れません。 僕の言葉に、同じく間を置く「夢」の一文字>>110
傷付いておられるのでしょう。 とても判りやすい御方です。 寄り添いたいと願っているのでしょう。 淡藤揺らす、彼の『花』と。
だからこそ、紡がなくてはならない言の葉でありました。 言い聞かせるように、落ちる言葉は 一体誰を、言い聞かせるためのものだったのでしょうか。]
ごめん、な さい。
[謝罪が零れ落ちました。 俯いた僕には、彼の表情は見えません。 僕の表情もまた、彼に知られることはないでしょう。]
(114) 2014/09/18(Thu) 01時半頃
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[微笑むことなんて、今は出来そうにありませんでした。]
(*30) 2014/09/18(Thu) 01時半頃
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[宵闇に融ける囁き>>111に、まだ顔を上げられず。 ペティンガーさまの指先が僕の髪を、手を救い上げた頃 漸く面を上げて、眉を下げた表情で なんとか微笑んで見せたのでございます。]
夢物語は、大好きですよ。
[幸せで終わる、嘘ですから。 誘いの言葉を受けたなら、少しの間逡巡した後。]
地下に行かれますか? それとも、もう少し静かな場所にでも。
[お話だけなら、何も地下へ向かうことはないでしょう。 どちらにいかれますかと、微笑みました。]
(116) 2014/09/18(Thu) 01時半頃
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── 追憶の一片 ──
[それは歳を遡ることいくつの事であったでしょう。
ある日、新しい花見習いが来ると告げられることも無いままに 突如この廓にやってきた一輪がありました>>*26 何も知らず、何も判らぬまま 髪を乱し乱されやってきた花は 銀月の色を有した、淡藤の一輪でございます。
僕には彼が、怯えているように見えたのです。 何も知らぬ世界につれて来られ、困惑しているように見えたのです。
眸が触れ合った気がしました。 ですから僕は、安心させるようにと 彼へ微笑んだ事を覚えています。]
(*32) 2014/09/18(Thu) 02時頃
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「大丈夫ですよ。」
[そういって、手をとり。 小さな身体で彼を庇い立ち。 『花』には『花』になるための規則があると教育係を買って出ました。
『花』は美しくなければならないと ですから乱暴に扱わないでくださいと 連れてこられた御方のその手を、無理やりに剥がしたことを覚えています。]
(*33) 2014/09/18(Thu) 02時頃
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[その『花』が、手折られてしまうかもしれないのです。 きっとそれを、花主さまは許しなどしないでしょう>>1:1 昨夜も一人、『花』が姿を消しておりました>>1:#0
行方など、知れません。
亀吉さんがそうならぬ為にも、お伝えしなくてはなりませんでした。 もしもまだ、『夢物語』に終わらせられるのならと。 余計なお世話を、焼いたのでございます。 そこに、自戒を含めながら。
僕自身へと、言い聞かせながら。]
(*34) 2014/09/18(Thu) 02時頃
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[其の度にあの呪詛が 『丁』の涙が 中庭に植えた秋櫻が
心を締め付けていくようでありました。]
(*35) 2014/09/18(Thu) 02時頃
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[ペティンガーさまはどちらをお望みになられたでしょう。 どちらにせよ僕は、大きな軍手を外して仕舞い 『蝶』の掌をとったのです。
淡藤が睫毛を濡らしていることも>>113 その手を傷つけていることも、知らぬままに**]
(117) 2014/09/18(Thu) 02時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 02時半頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 02時半頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 02時半頃
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…、はい。
[「謝らなくていい」>>118 そう謂われてしまえば、僕からはもうなにも紡げませんでした。
僕は此処にしか咲けぬ『花』であり、『蝶』を惑わす櫻にございます。 この枝葉に止まる御方を、癒し、満たすことだけが、僕に許されたことなのです。 甘過ぎる程の夜、昨夜の内は『誠』であっても 忘れぬと約束した言葉に嘘はなくとも。
───夢物語なので、ございます。
この籠には在るのは『蝶』と『花』。 『おうじさま』でも『おひめさま』でもないのです。 それでも偽りの夢物語だからこそ、艶やかに咲き誇ることができるのです。]
(120) 2014/09/18(Thu) 11時頃
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[哀しげに、判りやすい表情をしていた僕へと 『蝶』のお誘いが降り注ぎました。 その言葉に拒否することを、僕たちは出来るはずがないのです。 ひとひらの秋色が無意識の裡を通りすぎていきました。 僕はふるりと頭を振り、やわらかな微笑みを浮かべます。]
顔も洗わなければと思っておりましたから 面倒だなんて、思いません。 今宵、選んでいただき…光栄です。
[裡に秘めたる想いを覗くほど、不粋な『花』ではありません。 今宵の夢物語に選ばれた僕は、それこそ『しあわせ』でありましょう。 ベルさまとはまた違う、美麗な顔に苦笑が見てとれたなら 重ねた手に、そっと力を込めるのです。 黒蝶が導くままに、僕は足を進めたでしょう。]
(121) 2014/09/18(Thu) 11時頃
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── 地下牢 ──
[手早く身を清め、色を知らぬ着物に袖を通します。 土で汚れた手も顔もさっぱりとさせたなら、櫻色から真白なリボンへと変えて 項へと、練り香水を少量施します。 まだ少し濡れたままの射干玉を結いて、僕は地下牢へと足を向けるのです。
中庭から廊下に上がるとき、この小さな身体を引き上げてくださった御方です。 今宵は、優しくして下さいますでしょうか。
どこかの牢へと辿り着いたのならば、僕はペティンガーさまを見詰め 緩やかに微笑んでみせるのでした**]
(122) 2014/09/18(Thu) 11時頃
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[ふわりと首筋から香る櫻は、あの時も香っていたでしょう。
小さな身体を見下ろす、二つの眸。 呆然としたような表情には、射干玉の眸を向けました。]
僕は櫻子と申します。 櫻の子と書いて、おうじです。
[力の加わった手に、そうともう片方の手を乗せました。 体格が違えば、手の大きさも違うでしょう。 片手では溢れてしまう彼の手を、両手でしっかりと包み込んだのです。]
(*37) 2014/09/18(Thu) 11時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 11時半頃
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[僕が地下牢に訪れた時の事にございます。 丸く切り離された月のような窓辺のひとつに 淡藤の銀花が、咲こうとしていたことでしょう。 視線は今宵射止めた『蝶』を捉えます。
お判りやすい御方のように 射干玉が揺らぐことなどありません。
すう、と伏せる視線。 すとんと、微笑みの落ちた顔。 僕の足は迷うことなく、今宵の『蝶』を探すのです。]
長い髪は、乾きにくくていけませんね。
[辿り着いた先、最初に掛けられた声はそのようなものでした>>125 眉を下げて笑われるお顔には、困ったように申し上げます。 ペティンガーさまがタオルを手に、僕の居場所を作ってくださり 「おいでよ」と唄われて、される動作。 僕は一度二度と瞬きをして射干玉をまあるくさせました。]
(126) 2014/09/18(Thu) 16時半頃
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…──ふふっ、はい。
[柔らかなお布団を叩く手に、黒手袋がなかった事に目を留めながら 僕は耐え切れずほんの少しだけ、微笑みを零してしまいました。 勿論、袖にて口許は隠しましたが 笑った事を隠すつもりなど、僕にはさっぱりとなかったのでございます。
性欲だけが、心や身体を満たすではありません。 きっとこの御方は僕に、身体の快楽を求めているのではないのでしょう。
ならばと僕は空けられた彼の足の狭間へ そうっと腰を落ち着ける事にいたしましょう。]
何をなさるのですか?
[ほんの少しだけ、意地悪がしたくなってしまいました。 判っていると背を向けて座る事はせず 判らぬふりで面を向き合わせ 小首を傾げて、上目遣いに見上げましょう。]
(127) 2014/09/18(Thu) 16時半頃
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[あゝ、それでも。 追憶の一片にある頃の僕の眸と 今し方向けた射干玉に、差異が無い事をと願います。
淡藤の花を見詰めた射干玉は、悲しげに伏せられた事でしょう。
呪詛に侵されつつある僕の心に蓋をして 瞼を伏せて、僕は僕自身に見て見ぬ振りをしたのです。]
(*38) 2014/09/18(Thu) 16時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 17時頃
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───なんて、冗談です。
[僕のちょっとした冗談にどういった反応が返ってきたでしょう。 どこか満足げに笑う僕は、稚児のようだったかもしれませんし 『蝶』を惑わす『花』の如く、色香を放っていたかもしれません。
やがて僕はくるりと背を向けて座りなおし しっとりと湿ったままの髪を結った、白をするりと解きます。 視線は一度、今宵の『蝶』へと向け 「拭いてくださるのでしょう?」と小首を傾げては笑み 向き直りては木格子の向こう側、薄暗い闇を見詰めているのでありました。]
(129) 2014/09/18(Thu) 19時頃
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…僕は、とてもお喋りが好きで お話のしすぎだと、よく叱られることがあるのです。
[緩やかに開いた櫻色の唇は、返事を待つことなく ゆっくりと言葉を紡ぎました。 牢の中には水音や嬌声も響き始める頃合でしょう。 僕の声が何処まで届き、どれ程紛れるのかは判りませんが 調べはまるで、独り語散るようなものでありました。
そう、これは独り言。
髪を拭き、撫でていただく合間の 僕の勝手な独り言です。]
(130) 2014/09/18(Thu) 19時頃
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『蝶』と『花』が寄り添えるのは、この籠の中だけにございます。
『花』は根を張り籠に囚われ。 『蝶』は籠へと誘われ訪れる。
一夜の夢は嘘でも誠でもなく 『夢』でしかないのです。
(131) 2014/09/18(Thu) 19時頃
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ですが、『蝶』でもなく『花』でもなく
『人』同士であるならば、…───どうなのでしょう?
(132) 2014/09/18(Thu) 19時頃
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……僕は『外』の事を知りませんから 詳しくなど、判りませんが。
[僕の独り言は、一度休符を添えました。 闇夜を見ていたはずの射干玉も、心に蓋をするかのように そっと、そうっと閉じるのです。
駆け回る呪詛を噛み殺しましょう。
僕は此処に咲く、此処にしか咲けない『花』なのだから。]
(133) 2014/09/18(Thu) 19時頃
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亀吉、さん。
[僕は、銀花の名前を呟きます。 あの頃は>>*39 「とても佳いお名前ですね。」と、微笑みました。 目出度いお名前だと教える事になるのは それから数日後の事になりましょう。
今の刻、僕は緩やかにその瞼を閉じていました。 微笑む事は難しく、悲しむ事も難しい。 心に蓋をしてしまっているからか>>133 僕の表情は、どこかで迷子にでもなっているかのようでした。]
(*42) 2014/09/18(Thu) 20時半頃
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[『花』である僕は『外』を知らず。 『花』でしかない僕は『花』以外にはなれません。
『ふつうのしあわせ』を知っていれば>>*21 『人』になる事が出来たのでしょうか。
何も知らずに育った僕は 毎夜、毎宵、『蝶』に望まれる事こそが『しあわせ』なのです。 それ以外を求めてはならないのだと、謂い聞かされて育ちました。
男と謂う性に生まれたにも関わらず 殿方を満足させるためだけの、命です。
それが僕の、『花』である理由なのでございます。]
(*43) 2014/09/18(Thu) 21時頃
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[それならばどうして、あんな独り言を語散てしまったのでしょう?
『外』の世界知る方なれば きっとその世界へ戻れるのではないかと。 そして『外』の世界の方が 幾分幸せなものではないかと僕は思っているのでしょうか。
判りません。 知りません。
自覚(わ)かりたくなどありません。
僕はそっと瞼を閉じます。 『花』としてあるために。]
(*44) 2014/09/18(Thu) 21時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 21時頃
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[悪戯は思惑通りに成功いたしておりました>>136 呆けたお顔がこちらに向いて、瞬き繰り返されるのを 思い出しては、笑みを堪えて小さく肩が揺れるのです。 接吻けなどはいたしませんでした。 この判りやすい御方も、僕へ唇を重ねる事は無かったのでございます。
僕の微笑みに返る言葉は減らず口のようでもありました>>137 それでも僕を傷つける刃ではなく やられたと鳴る喉の音は、耳に心地よいものでありました。
独り、『花』が唄を紡ぐ頃合には 優しい手は、髪を愛しんでいてくださいます。 湿り気は髪からタオルへと移り 唄は『花』から何処まで移るのでしょう。
他の音を、他の存在を緩やかに拒むように。 穏やかな声が響いておりました。]
(147) 2014/09/18(Thu) 21時半頃
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おかしな御方ですね。
[それは多分に意味を含みます。
『人』で居られるあなたさまなのに。 櫻には蔦など在りはしないのに。 どちらも口には致しません。 僕はただ、眸を閉じた暗闇の中、どのような色も浮かべぬままに 『蝶』の応え唄を聴いておりました。
お互い、表情など見えません。
寂しさ募る悲しき笑みを浮かべる『蝶』も 眸を閉じて蓋をした迷子のような『花』も 聴こえるのは、牢屋に不釣合いな唄と唄。
『蝶』の綴る『夢』に 押し黙っているかのようだった唇は、再び動き出したのでございます。]
(148) 2014/09/18(Thu) 21時半頃
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─────いいえ。
[それはまるで、拒絶するような声でした。 叫ぶというほどではありませんでしたが、確かに強く。 そして確かに、振り払うような調べでありました。]
他の『花』ならば判りません。 ですが僕は、この籠から出ればきっと。
…───枯れ朽ちてしまいますから。
[僕は微笑んで囁きました。 軋む音は、どこぞの牢の木格子でしょう。]
(150) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[抱擁見せ付けるような人の悪い笑みが向けられても>>143 大切そうに、銀月を抱きしめていても。 僕が返したのは、今のような微笑みでした。
蝋燭揺らめく薄暗き地下に 太陽のように輝く金が舞い降りたときも>>146 僕が向けたのは、微笑みでした。
僕は望まれるままにしか咲けぬ『花』。
櫻へととまる『蝶』を 癒し、慰め、満たすことこそが僕の『しあわせ』。
望まれなければ成り立たず。 望まれて初めて花咲くのです。
『外』の世界になど。]
(151) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[根を張る『櫻』を、どなたさまが愛してくれると謂うのですか。]
(152) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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‘Tis better to have loved and lost than never to have loved at all.
(一度も愛したことがないより、 愛して喪った方がどれほどしあわせか。)
(*45) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[呪詛に軋んだのは、僕の心だったのでございます。]
(*46) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[拒絶の声に、一度指先が止まるのが判りました>>163 切り離されてしまったかのような、僕と彼のいる房の中で 呼吸を止めた音さえもが、はっきりと耳へ届いたのです。
幾許か、同じく呼吸を止めました。
吐き出しそうになる呪詛は、仄紅い焔にくべて燃やしてしまいましょう。 軋む音など耳を塞ぎましょう、眸を逸らしましょう。 籠の『外』にて生きるを知らない櫻の『花』は 人様の涙のように花弁零すこともありません。
零れ落ちるのは、穏やかな笑み。
瞬きの音が聞こえるようでもありました。 唇が動きかける気配がいたしました。 けれども何も変わることなく 止めていた呼吸を元に戻したのでございます。]
(175) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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『外』を知らなければ、狭くなどありませんよ。
[『蝶』が何に翅を休め、何を見詰めるのか。 上を向いては陽が照らし、下を向いては土色を踏む。 唯只管それの中に生きる『蝶』の事など到底判りかねるのですが ──夢物語ならば、いずれはお姫さまに出会えるのでしょう、なんて。
再び動き出す指先が毛先へと向かい やがてその射干玉が直に触れられる頃に落ちる、責苦。]
……───意地の悪い、御方です。
[掠れもせず、震えもしない声が、鼓膜を突いて返したでしょう。 微笑み絶やすことはなく。 ただ少しだけ、眉尻が下がってしまったのは 続いた彼のお言葉と、彼の心中を思ったからにでございます。]
(176) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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……はい、そうですね。
[誰にでも優しいというそのお言葉を>>165 否定などはいたしませんでした。 露にされた対抗心を、肯きでそっと包んで差し上げたのでございます。
やがて聞こえました声は、随分と抑えられたものでございました。 寝転がり窓を見上げ、やがては布団のお隣を示されます。
変わる話題は、調べの転。
ならば、悲しく苦しい唄はお仕舞いにいたしましょう。 此処は夢を見るための牢。 甘い蜜を差し上げることが、『花(ぼく)』の『しあわせ』。
招かれるお隣へと転び寝て、櫻香る身をお傍に寄せました。 擦り寄るは甘く、しかして幼さを残します。]
(177) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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『花』によりけりですよ。
朧さんは美味しいお茶を淹れて下さったりしますし。 藤之助さんは、琴を爪弾かれたりいたします。
僕は、中庭を任せて頂いたり。 『花』のお世話をすることもございます。
[紡ぐ音はそれこそ、この牢獄には似合わぬ程の朗らかさだったでしょう。 楽しそうに、鈴鳴るような声が優しく響きます。]
ええ、そろそろ秋になりますから。 本当は植えたい苗があったのですが 貴重なものらしく、手には入りませんでした。
ちょこれいとの匂いがする、秋櫻があるんだそうです。
[花を褒められ『花』は綻びます。 眩しき色彩、その中の大半を埋める『秋』色。 植える僕には自覚など、一片も無いのでありました。]
(178) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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[転びて身を寄せ、髪を撫でる手に擽ったそうに笑いました>>195 摘まれる髪飾りの色は白。 何色にも染まり、しかして何色をも染めてしまう色でございます。 櫻の香は少しなりとも、彼を癒すことが出来たでしょうか。 見えた尖りも形を潜め、瞼も休まれているようです。
僕はそっと、ペティンガーの背中へと手を回しました。 細い指先は、水面揺らす金の魚と戯れる手ではございませんが
とん、とん、とん。
緩やかに、その背を撫でていたのでございます。]
(201) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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[僕の唄は、愁いを帯びることもなく。 今ここにあるのは、宴に響く艶やかな音ばかりでしょうが。 それでも僕は唄いましょう。 翅を休めた蝶が、癒し、満たされ眠るまで。]
我侭な御方ですね? お茶にお琴にお花だなんて。
[いいのです、眸を背けて。 いいのです、何も聞かなくて。 撫でてくださる手に、僕は緩やかに微笑みました。]
ええ、ちょこれーと。 甘いものの中でも一番好きで。
[他愛もなく、記憶にも残らないような、そんな『夢物語』を唄いましょう。 微温湯のような、甘くて柔らかな声と温度で。 「食べちゃいけませんよ」───なんて。 話す頃には眠っていてくれたらと背を撫で続けたのでございます*]
(202) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/19(Fri) 02時頃
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