289 【ペア】風邪引いたあの子ん家に行く村
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[どうしてやるのがいいのだろう。 どうすれば彼は喜ぶのだろう。
自分を頼りがいのある大人だと、思ってくれるだろう。]
(*1) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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[おろおろと心配しているうちに、既にドアノブに手をかけていた。「開けるよ。」そう口を開こうとした瞬間、中から咳と、トイレットペーパーを引き出す音がドア越しに聞こえる。]
…開けるよ?
[改めて、そう声をかけ、じゃあ、と水の流れる音と共にドアを開くと、宇原は狭い個室の床で、ぐったりと壁に倒れ込んでいた。]
(86) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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!!
う、ウツギくん!?
[咄嗟に両肩を抱き、顔を覗く。
はあはあと小さく息を乱した彼の顔は、少し気まずそうにしているように思えた。 まあ、そりゃあ。ゲロ吐いてるところに入ってこられちゃあそういうものなのかもしれない。などと考える余裕は、岩動にはなかった。]
(87) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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い
[心底驚いた。そして、心底安堵した声で]
生きてたぁ…
び、びっくりするでしょうが… 死んだかと思うわ…
[と、宇原に寄りかかった。体重はかけていない。]
(88) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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立てる?
[訊ねてはみたが、答えを聞かないままに宇原の腕を肩に担ぎ、腰に片手を添えて支え、ゆっくりと立ち上がる。触れた体は、少し冷たく感じた。
宇原との距離が近づいたからなのか、あまりに驚いて気にする余裕もなかったのか。ここに来て個室に籠もったツンとした酸っぱいような、苦いような特有の臭いが鼻を刺す。
臭いの刺激の強さに一瞬眉根を潜めるが、なんだか目の奥がウズウズとくすぐられるような感覚も、確かにあった。
ここまで弱った宇原を見るのは初めてだ。]
(89) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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[驚きと、少しの恐怖と、
…僅かな好奇心。
こんなことを思ってはいけないのかもしれないが、弱っている彼を見ているとそわそわと落ち着かない気分が、心配とは別の部分に、ほんの少しだけ顔をのぞかせた。]
(90) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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[状況の割に吐いた勢いでテンションはおかしくなっている反面、体には力が入らないらしく、ぐったりと力の抜けた弱々しい体を支えながら個室を出て、ベッドへ移動するのに付き添う。 それほど力持ちではないので、ゆっくりと。
足元に気をつけつつベッドにたどり着けば、今度もゆっくりと体を離し、彼をそこに寝かせる。]
スポドリここ置いとくね。 水よりそっちのがいいでしょ。
[吐いた直後だ。味のついたもののほうが、まだマシな気がする。
宇原の額にある剥がれかけの冷却シートを指で押さえつけてみるが、もう随分温くなっているようだ。]
これも貼り替えるか。
[そう言うと、新しいシートを取り出して宇原の額に貼り付ける。 そのついでに二度三度、ゆっくりと頭を撫でた。 成人した男相手に何をしているのだと思わなくもないが。
どうにもこの弱り様が気の毒で、つい。]**
(91) 2018/12/01(Sat) 06時半頃
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イスルギは、ウツギの眉間を親指で押した。
2018/12/01(Sat) 06時半頃
イスルギは、ウツギに思い出したように体温計を渡した。
2018/12/01(Sat) 06時半頃
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[いっその事、幾度となく繰り返した想像と同じように 無理矢理にでも抱いてやろうかと思った。 きっと今ならそれが出来るだろうけれど 先程の幼馴染の笑顔が脳裏を焼いて、離れない。
どうでも良い女の子なら 何の躊躇いもなく抱けたのに。 大切なものへの触れ方は、こんなにも難しい。]
(92) 2018/12/01(Sat) 09時半頃
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[ざあざあ水を流しながら、こびりついて固くなる前に、鍋とお椀とを丁寧に洗う。 水を切るためにひっくり返して、その間に適当なペットボトルをもうひとつ見繕った。 ふたつ分の二倍ポカリ。さっきまでの消費を考えれば、たぶんこの量でも飲めてしまうんだろうから、風邪の渇きっていうのはやはりつらいものだと実体験を重ねてひとり頷いた。]
(93) 2018/12/01(Sat) 10時半頃
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[弱った身体を労るように、その背を撫で摩って。 何度も、何度でも。その動きを続ける。 もし嫌がられたとしても、止めることはせずに。
何より大切なものに、 漸くちゃんと触れることが出来た気がした。]
(94) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[おれが鳴海家に来ることを望んだのは、星夏さん。 その結果、数年間隠し通した柊真の秘密が露呈した。
血は繋がらず、今はまだ家族とは言えない相手でも 幼馴染の母親もまた、昔から大事な人の一人。 彼女は自分の息子がその幼馴染に何をしているか、 知る由もなく遠い場所にいる。
────ごめんなさいと、届かない言葉が心の内に落ちる。 その謝罪が意味するものは、 押さえ付けられてもいないのに、 未だ抵抗一つ見せずベッドに身体を沈めている理由は、
ここにいるのは加害者と被害者などではないということ。]
(95) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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ねえ、柊真……────
[その続きは、囁きとなってその耳元に]
(96) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[なんて恥知らずな言葉なのだろうか。
床で冷えていた筈の身体が、じわじわと温度を上げてゆく まるでこちらまで風邪を引いたみたいだった。]*
(97) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[吐いてる間周囲の音にまで注意できず、どこか音が遠かったのだが、やっと聞こえるようになってきた。 胃液混じりの胃の中身が逆流したことで喉がひりひりしている。喉に何か引っかかっている感じがして、何度か咳いた。
>>86 「開けるよ?」
トイレのドアの外から岩動の声がする。その前に何度か心配して声をかけてくれていたことには気づけていない。]
え、たぶん、くさいし……
[詰まる洟をトイレットペーパーで拭きながら、情けなくもか細い鼻声で返事をした。ドア越しだし、聞き取れなくても仕方がない声だった。 背後ですぐにドアが開いた。]
(98) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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うおお……
[驚いて肩を縮めた。 まだ整っていない息と、口の中の不味い味と、うっすらかいた汗とが鬱陶しい。
次いで肩に触れられる感触。目の前に人の顔が現れる。]
(99) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[涙で潤んだ目。下を向いていたせいか、頭に軽く血がのぼったかのように顔が若干赤かった。 トイレに座り込んだ体に力は入らず、へとへとだ。腹筋だかなんだかわからないところが疲れている。
手で触ってわかるほど熱があるそうだから、そちら由来の力の入らなさなのかもしれないが。
濡れた睫毛を瞬いた。顔が近い。 ひどく心配させたらしいことは、相手の顔を見れば一目瞭然というやつだった。]
(*2) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[吐いたばかりで臭う気がして息を軽く止めた。トイレ中そんな臭いな気もするし、今更なのかもしれない。
吐いてへばっているところを見せてしまったし、なにせ臭うだろうし、それはまあ、当然気まずく思っている。>>87
驚いた声を聞いたら、わらけてきてしまった。]
ヒッヒwwwッヒwwwwwww
す、す、スフッwwwwwwすませんwwwwwwww でちゃったwwwwンヒwwwwwwwwww
[寄りかかられると、寒い便所で冷えた体に引っ付いたところが温かい。]
(100) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[近すぎることを恥じらうように、少し目を伏せた。
臭いそうだからが6割、産まれてこのかた誰かと付き合ったこともないので、人間との接触にそもそも慣れていないからが4割という恥じらい具合だ。
腕を引っ張られて、驚いて、んく、と喉が鳴った。息をなるべくとめるのを諦めて、細く息を吐いた。 立てるかどうか返事する間もなく、腕は肩に担がれていて、腰に手を添えられる。少しそわそわした。
肩に乗った腕に力をこめるような形で、よたよたと立ち上がり、また小さく咳をした。
きっと一人でも立てたと思うけれど。多分一人でも歩けるとは思うけれど。せっかく焼いてもらった世話を無下にするのもなんだし、ついつい甘えたくなってしまう。]
(*3) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[岩動に支えられて便所を出た。]
おれ薬あんま飲まないんすけどwwww 錠剤五億年ぶりに飲んだんすけど飲み損ねてえ ごくごく飲んだら水に腹パンされてえwww ドボッみたいなwww
[おかしくなったテンションに任せて陽気に喋っているが、すっかり体の重みを岩動に任せて、ふわふわする足元でよろよろ歩いた。
便所を出てすぐ、台所に立ち寄ってゲロ味のする口を濯いだ。鼻の奥に詰まった米をどうにかしたくてうがいもしてみたが、米は穴熊を決め込んでいる。つらい。]
(101) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[流しのフチに手をついて、カップにいれた水を口に含んで濯ぐ。 水を吐き出した。 ねばつく唾液が唇からぷらりと糸をひいている。 それを隠すように手の甲で拭って、また一口。 小さな溜息をつきながら、何度か口を濯いで、冷えた手を洗った。
口を濯ぎ終わった後も、また岩動の肩に腕を回す。 今度は遠慮が薄く、へへ、と照れ笑いのようなものを浮かべた。]
(*4) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[ふわつく足取りで部屋に戻ってきて、ベッドの傍までくると、肩に回していないほうの腕をベッドについて、片膝もベッドに乗せる。
岩動の肩から腕を離し、四つん這いでベッドの上にのそっと乗って、肉の薄い尻を向けたままふり返る。]
あざしたw
[と、目を細めてお礼をいった。]
(*5) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[ベッドまで連行されて、ヤンデレコリーンちゃんシーツの上に乗る。這うようにして枕を引き寄せ、抱き枕も引き寄せ、美少女たちに突っ伏した。]
う〜〜〜〜〜〜〜〜……… う〜〜〜〜〜?
[また水分をベッド脇に置いてくれたらしい。突っ伏した顔をそちらに向けた。]
あ〜味消したいから… メイさんはあああ……なんて気がきくんだあ……
(102) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[芋虫の一種のようにまた枕に突っ伏し直してもぞもぞする。一応額に戻してみた冷却シートの粘着力は無残なもので、すぐとれる。 横向きになって冷却シートを未練がましくまたつけなおしていたら、張り替えてくれた。]
うううううう。んぎんもち゛いいいい……
[冷却シートの復活した冷え感に呻いていたら、髪になにやら手の感触があった。頭を撫でられていた。 宇原は少し目を丸くした。**]
(103) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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これ美少女にやったりしてもらったりするやつや…
[悲しいかな宇原にとっての頭を撫でるという行為はそういう程度のものなのだ。 親戚づきあいがないため子供と接する機会もなければ、普段摂取している動作やストーリーが描写されたものは漫画やアニメやゲーム。基本的にカワイイ女の子が出ないものに興味はない。]
……あ、動物にもするね。
[犬とか。猫とか。 そう言って、頭を撫でられながら、岩動の顔を見た。 どんなに見つめてみても、美少女ではないな……。]
(*6) 2018/12/01(Sat) 14時半頃
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[ヒーローじゃなくてもいい。 傷つけてくれていい。
そんな幼馴染の言葉に 張った虚勢が、嘘が、心が ゆっくりと溶かされていくようだった。
ああ、やっぱりお前は、俺にとっての春だった。]
(104) 2018/12/01(Sat) 16時半頃
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[想像の中の幼馴染はここにはいない。 そうだ、俺がどんなに脅しをかけようとも 最初から抵抗の一つもしなかったじゃないか。]
[耳元に落ちた囁きに ぞく、と抑えていた熱が広がるのを感じた。]
(105) 2018/12/01(Sat) 16時半頃
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[彼だって、もう大人だ。 意味も分からずに言っている訳ではないだろう。
幼馴染と触れあっている身体がまた、温度を上げた気がした。 これが風邪のせいだというのなら ずっと治らなくても良い、そう思える程に心地よく。]
(106) 2018/12/01(Sat) 16時半頃
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[トイレを出ると、宇原が台所で立ち止まり流しで口を濯ぐ。>>101 べ、と吐き出された水がシンクの底を叩きばたばたと低く高く音を反響させた。]
あー…急に飲みすぎたか。 そりゃあ…参ったね。
[口元を拭う彼の背中をとんとんと軽く叩く。残りも催すなら今だ。]
まだ出そう?
[確認してはみたが、どうやら一旦落ち着いた様子に見えた。 叩いていた背中をひと撫ですると、再び肩に腕を回して来た彼を支えて部屋の奥へ戻ることにした。]
(107) 2018/12/01(Sat) 17時頃
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[さっきから思っていたが。
何やら、よろしくない。]
(*7) 2018/12/01(Sat) 17時頃
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[何がどうよろしくないと言うと今の岩動には説明が難しいのだが。
体調不良を、弱っていることを思わせるにおいがよろしくない。 力の抜けた弱々しい体がまたよろしくない。 涙で濡れた瞳とまつげに照明が反射しているのが、息を乱して顔を紅潮させているのが、唇から唾液が糸を引いたりだとかそれを手で拭ったりだとかが、疲労と体調不良でかすれた声が、普段にない遠慮がちな甘え方なんかは、更によろしくない。
臭いものが好きだとか、そういう趣味はないはずだ。 そこではない。そこではなく。
これらの事実が、岩動が彼の領域に踏み込んでいるということを、無自覚のままに実感させる。そしてその事実に酔いしれたいような気分は少しずつ、ふつふつと大きくなっていた。]
(*8) 2018/12/01(Sat) 17時頃
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