25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[使用人がやがて運んできたのは、誂えられた眼鏡 矢張りこの姿に良く似合う洋服だった。 袖を通し、身なりを整える。 包帯のした、傷は塞がっているらしく もう朱がにじむ事はなかった。 けれど、立ち上がり戸口へ向かい歩む度に痛みが走る]
昔々――足を得た人魚は 痛みを見せず、射止めんとする者の前で 見事に舞い踊ったと謂うけれど それほどに気を引こうとする姿は ……花に良く似ているね
[イアンは目覚めているのか、いないのか 呟きは何か確かめる風に。 短く息を吐いて、表座敷をあとにした。 朝日を浴びながら、壁伝いに回廊をゆるゆると歩む]
(530) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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…――雛鳥は
[からかうような囁き]
さぞ、美味かろうや
(*46) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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[齧る果実は甘い蜜 唇を、口端を濡らし 朝陽にも艶めいて光る 夜に眠るを為せぬ猫は 木に寄り掛かり瞼を閉じるか]
……ん。
[防備などありはしない 静かに桜を風に揺らし 食べかけの果実を弱く握り]
[その様は眠る仔猫か否か この場所のみがまるで春のよう 陽射しも花も風に揺れ ただ優しげな彩りを添える]
(531) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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[粥に少しの菜と茶。こうして朝食は終わる。 歳の頃を考えればあまりに少ない食事量だが、 その分は回数で補っている。 たとえば、落雁しかり、干琥珀しかり]
…?
[樹が派手に揺れる音がした。 何事かと思って落下防止の手摺より少しだけ覗きこめば 先日のじゃじゃ馬の姿。 呆れ交じりの表情でちらりと見はしたけれど]
(532) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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…雛、ねえ。
[あまり興味はないのか、呟きもうつろ]
旨味はあるが、食感に欠ける。 まあ、初物に食うには好いかも知れんが。
(*47) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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先ずは前菜 幾つか挟んで漸くメイン デザートは最後にとっておくもの
[さて雛鳥は何処に当てはまるか、と哂い]
ただ…――形式に拘らぬ晩餐であれば 好きなものを好きなだけ 皿を手に歩き回れば良い
[付け加える]
此度の晩餐は……どちら?
(*48) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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初物は傷みやすい。 喰らうなら早めが好かろうね。
[くつ、と小さく喉を鳴らすのは愉快さか。 それとも、憶える餓えによる期待か]
皿を持ち歩くも構わんが、食後の甘味ぐらいはゆっくりと味わいたいもの。 …そういうものは、取っておくが良いと思う。 皿を持って歩きまわってばかりでは、忙しなかろう。
(*49) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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……ん、…?
[夢と現 彷徨う中で視線があるか 薄く開いた瞼 奥にあるのはヘーゼル ぼんやりと視線の先を眺め]
………。
[ふわり と、笑む]
[視線の主と変わらぬのかも知れぬ 口を開きさえしなければ 見てくれだけは愛されよう、と]
(533) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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奏者 セシルは、寝言のように唇を動かし
2010/08/04(Wed) 13時半頃
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喰らうて良いなら、今すぐにでも
[腹の底から込み上げる本能が 急かすように焦らすように蠢いている]
嗚呼……腹が空いた
(*50) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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糧として、喰らうのならば…
[そっと腹を撫でるのは、一夜の夢を見せた法師のことか。]
食べ頃ならば、若い桜の猫が盛りか。 だが、ようやく開く花のお目見えならば、先ずはどなたかに、一夜の夢でも魅せてごらんよ。 いくら美しくとも、徒花は要らぬ。
(*51) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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―→ 庭 ― [先ずたどり着いたのは、ヨアヒムの私室。 出迎えたのは使用人]
シュレーゲルさまは……そう、お食事中ですか。
[青褪めた貌に憂いを乗せて俯く。 用件をと問う使用人に、楽器を一つ貸して欲しいとせがんだ。 許可は直ぐに下りる。 もとより花の為に集められたものだと。 場所を問うて、庭へ下りた。 幾つもの道具を揃えた離れは、裏庭の先]
……
[ふ、と 人影を見つける。 セシルの微笑みと、視線の先にある花主たちの棟。 足を止めてその光景に目を留める]
(534) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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腹が空いて堪らんならば、一番食いでが有るのは小山のような肉饅頭では無いかえ? [くく、と落とす揶揄。]
ああ、雛鳥は食後の水菓子に…
(*52) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[少し、目が丸くなった。 黙っていれば、とはよく聞きもするが]
…成程、とんだじゃじゃ馬がいたものだ。
[微かに眉を跳ね上げる。 面白いとは思えど、じゃじゃ馬馴らしは趣味ではなく。 好い主に引き取られたならよかろうにと思うくらいは叶う話]
(535) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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桜の猫は、其処に見えるが 嗚呼でもこれは……若しかしたら
これから、化けるやも。
[冬色の瞳が春を見る]
……私が、徒花と? 面白い
[薄く、哂った]
噂の花を咲かせてみせよう 一夜でなく、この日の下で
(*53) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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流石に少し…戯れが過ぎたか……
[部屋を去る雛鳥を見送って、乱れたままの寝台に身を投げ出す。 情けなく重い腰をさすって、夢の続きをいましばし。]
(536) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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脂身が不味そうで食う気にもならん。 悪食のお前と一緒にされては困る。
[そも、元々の基準が違う立場。 好みの肉に困ったことがなければ 不味い肉を放り出すなど日常茶飯事]
…なるほど。 随分と面白い趣向だ。
[低く、喉が哂う。見せてみろ、とばかり。 丁度視認できる位置から鉄色は咲き始めの花を見下ろす]
(*54) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[胸を押さえる。 僅かに眉を下げて、もう片方の手が 知らず、新しい眼鏡の蔓を摘む]
些か……眩しい
[朝の日が、庭の草花にも降り注いでいる。 目を伏せた]
(537) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[まどろみの中 彼の人を誰か認識していれば 向ける表情も違っただろう いつであっても 夢でも現でも その狭間にあったとしても]
ろ びん
[ヘーゼルに映るのは 未だ、ひとつ]
(538) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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肉饅頭は肉饅頭を喰らうているよ。
[今しがた伝えられたそれを聞かせ]
余程、執心の様子。 他所に懐いた雛鳥など、もう要らぬ
喰らうにしろ、あれは 人数分も無いようだ
[胸を押さえながら呟く。 テラスからの視線に気付き、つと目を伏せた]
此処ならば、置いてある筈 暫し間を。
流石に私は、ナイフ刺さる痛みに耐えて舞う気は無い故に
(*55) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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…茶と菓子を。
[食事の膳を下げに着た侍従に告げる。 そうしてほんの一瞬視線を離しただけだったのが]
(また花が増えている)
[特に感慨があるわけではない。 優美な細工の施された腰かけの肘置きに少し凭れかかりながら 見下ろすまま、新しい花へと首をかしげて見せる]
(539) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[振り切るように顔を上げる。 桜いろの唇が形作る名 眩しそうに瞳を細めたまま、口元に笑みをしいた]
……見ているといい
[囁いたのはセシルへか その先、花主の棟に見える男にか 緩やかな足取りで、離れに向かう 気温も湿度も調節されているらしいその場所に 望みの楽器は在った。
ケースをあけて 木製の楽器と、付属する弓を取り出した。 きぃと鳴らして糸巻きを調節し、庭へと戻る]
(540) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[湯殿から戻れば、くたりと寝台に沈む主の姿。 鳥はその隣へと侍ると、 朝の訪れを告げる歌を調べに乗せる]
夏の夜の 臥すかとすれば ほととぎす 鳴く一声に 明くるしののめ
[同じく窓の外を眺めて。 夢の余韻に、暫しそのまま――**]
(541) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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ロビン… 見てる… いつ、だって…
[寝の言なのか 応えなのか ぼんやりとした姿を眼が追う 夢と現の狭間で]
[木製の美しい楽器が奏でられ始めたろうか その音色はどのような彩りであったろうか 意識を床に沈めつつある中 記憶に残そうと、残そうと まどろみへ誘う音と 鳴らすロビンだけを見て、聴いて]
[触れられぬかと、手を――…]
(542) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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では…愉しませて貰おうか。
[微かに口元を歪めて、嗤う]
(*56) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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[ゆっくりと向かうのは、風そよぐ庭にまどろむ桜のもと 友人の姿を見遣り、小首を傾いで その鎖骨の上にその弦楽器を乗せ、顎で挟むようにして高く持ち上げる。 弓を手に、すぅとひいた]
――――…
[流れ出る 柔らかくそれでいて繊細な音色は、異国の楽器ならではの音色。 頑なに閉ざしていた冬ではなく 春の到来を告げる曲。
楽器に添えられた指は正確に音を紡ぎだす。 足りなかったはずの色をそこに添えて]
(543) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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[懐くロビンならば知るだろう 桜は夜に寝るを為せない 不安が胸を駆るのだと 夜の記憶に恐怖するのだと]
[伸ばした腕は弱く 空をかいて そらを描いて]
[唯一安らぎの存在に 深く、憩いの床につく**]
(544) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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― 庭 ―
[足元に伸ばされた人間の、セシルの手を もう避ける必要は無い。 嬉しそうな微笑すら浮かべ、流し見遣る
そこに怯えていた子供の姿は無く ほころんだ蕾は噂どおり見事な花を咲かせてみせた**]
(545) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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本屋 ベネットは、執事見習い ロビンの視線に、微かに鉄色を眇めただ眺めるのみ。
2010/08/04(Wed) 14時半頃
奏者 セシルは、訪れる春に、桜の笑みを添えて**
2010/08/04(Wed) 14時半頃
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噂の主を、その目で見るといい
[艶を抑え、爽やかな春の音色を自在に操る。 小鳥の挨拶も木々の葉が甘く囁くさまも 確かに其処に映し出されていた**]
(*57) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2010/08/04(Wed) 14時半頃
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/04(Wed) 14時半頃
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―廊下― [庭から、聞きなれぬ楽器が 歌う音が聞こえた。 笛ではない、唄でもない。]
……――胡弓…?
[呟きながら、違う、と思う。 見下ろせど此処からは春の訪れを 眼にするには至らない。 その調べに、耳を傾ける。
懐の髪結い紐に、手を触れた。]
(546) 2010/08/04(Wed) 15時頃
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―大広間から本邸渡り廊下、椿の間、表座敷―
[さて、男がそれからどうしたかというと、 食ったあとは折り詰め片手に酒瓶も拝借し、 庭に月がよく見えるところで、また飲みふけっていた。 うたたねと酔いの繰り返しに朝を見る。
ふと、折り詰めのことを忘れて、せっかくだからと、ふらり立ち上がり、椿の間までいくが、明はおらず、次に表座敷をガラリと開けると、イアンが寝ていたか。 おそらく、ロビンはもう去ってしまったあとで、よく寝てるイアンが口をぽかん、とあけていたので、よしよしとかんぴょう巻を突っ込んでおく。]
(547) 2010/08/04(Wed) 16時頃
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