194 花籠遊里
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[それは、花という立場で多くの男を相手にする丁への揶揄であり、同時に、これから地に落ちる己に対しての…ほんの少しの救いであり。
言葉を聞いたのなら、何とも言えない笑みを浮かべて何事も言わぬまま檻を後にするだろう。
組み敷かれた蝶には、心にも思っていない軽い謝罪と数枚の金を放り投げて。*]
(205) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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[どれ程自分を偽ろうと真似事したところで脳裏にこびり付いた月の気配は失せることはない。
虚飾は劔にて散り払われ、呆気なく地に伏していく。 思い描けと名を囀れと望む癖に暴く指は唇は声は似てもにつかない他人のもの。>>198
他人にその影を重ねる虚しさ。 名を呼び請うたところで姿を見られぬ現実。
叩きつけられた言葉はゆっくりと左胸に暗雲を移し、澱ませた。
心は氷水をかぶったように冷ややかなものだというのに。与えられる甘いまやかしに呼吸は熱を帯び始める。>>199
廊の時と同じくして、捉えられた腕と背に走る痛みに咽喉を突っ返させれば、加わる手の圧。そこに優しさなど感じず、己の身に起きるであろう遠くない未来に。]
──…た、…け
ピィン、と。 いつか聞いた雅楽の音と共に張り詰められた琴線が、ぷつりと。 途切れた音を揺すられるまま、聞いた*]
(206) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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可愛い、可愛い吾が子達。 今宵も大層疲れただろう。
部屋でゆっくりと休むがいい。
[男は今日も地下牢へとやって来ては、吹雪を降らせて花々を見下ろす。 優しげな面持ちで、或いは非道な笑みで。 一輪、一輪、狂気を含んだ声が撫で付けた。]
(*61) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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丁よ。 お前は屈折していて可愛らしい。
吾が子に相応しき、素直な焔花。
(*62) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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亀よ。 お前は夢見がちで悩ましい。
銀月映す、儚き水面花。
(*63) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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―夜明け近く・館前―
[残り数本になった煙草に火を灯しながら、夢の終わりを告げる鐘の下を潜る。 ふぅ、と吐き出した煙の向こう側にいたのは豪奢で四角い、人を運ぶ箱。その傍らには厳つい背格好をした男がチラホラ。
此れで夢は終いらしい。 蝶は最後まで蝶らしく飛ぶ事は出来ないまま地に落ちる。]
お迎えご苦労さァん。
[あっけらかんとして述べた言葉はまぁるい煙と共に宙に消えた。
車に乗る少し前。 館を見上げる。
蝶は土に還って花になるが、花が蝶になるには如何するか。浮かんだのはそんな疑問。 しかし、彼奴は蒲公英である。綿毛を飛ばしてふわふわと、其処彼処に根差して手当たり次第に種を飛ばす。 –––––願わくば、その黄色の花が此処まで届くよう。*]
(207) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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櫻よ。 お前は頑なでいて微笑ましい。
散るを知らぬ、咲かない櫻花。
(*64) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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――いいえ。泣きはしませぬよ。
[耳元で優しく響く貴方の声にこそ、泣きそうにはなるけれどと彼の囁く声にそう応える>>203 むしろ壊れる位に溺れさせてほしいと背に回した腕に力を込めた ふわりと薫る煙草の香り。それがつかの間、何もかも忘れさせて与えられる熱に揺蕩わせてくれるとばかりに
前戯など要らないと、はやくその熱さをと藤の花が花房震わせ冀う 鏡が映すは銀の蝶。その悲哀も奥に隠された優しさも何もかもと]
泣きたいのなら、貴方様こそ泣いて宜しいのですよ。シーシャ様。
[彼にそう告げれば口付け1つ やがて分け入ってきた灼熱に嬌声洩らし、煙の香りとその熱さに溺れたろう 夜は、更けてゆく――*]
(208) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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朧よ。 お前は動じぬ姿が誇らしい。
陰る貌こそ、艶かしい月花。
(*65) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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藤よ。 お前は磨かれた心が、美しい。
割れれば綺羅綺羅、光はなつ鏡花。
(*66) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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[パタン。 閉まった黒い扉からは、煙すらも燻らない。*]
(209) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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明日も甘い毒抱きて、蝶を誘い惑わせるがいい。
愛しい“罅割れぬ”花たちよ。
[口許に三日月を浮かべて嗤い、男は消え行く。 一輪切り捨てることを、暗にして。]
(*67) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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また今日も、男の狂気孕む声が落ちる。
暁訪れ夜は白み、夢の冷める時刻。
宵闇色の鬱蒼とした髪を垂らしたままに。
蝶の鱗粉ぞろりと舐めては飛び立つ背を見送るのだ。
(#1) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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どうぞ、またイラッシャイ。
(210) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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―早朝― [裏口から下町の花屋に引き渡される割れた鏡の花一輪 花籠に戻ることはもう、ない*]
(*68) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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