299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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ソルフリッツィに3人が投票した。
モイに1人が投票した。
ソルフリッツィは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?
現在の生存者は、インティJr、ンゴティエク、ギロチンの3名。
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[イナリを見送った後、軟体動物はにじりにじりと路地裏を這っていた。やっぱりいつものように動きは遅く、到着に時間がかかった。
目的地につくと、地面に触角を伸ばし、何かを探している。]
………ンゴ。
[探していたのは、最後に自分に宛てられた文字。>>1:99>>1:100 時間がだいぶ経って誰かに踏まれてしまったのか、文字は消えていて、何となく汚れたように見える跡が残っているだけだった。
やがて夜が来て文字の痕跡も見えなくなり、確認は諦めるしかなかった。]
(0) 2019/10/14(Mon) 02時頃
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「つぎ」も「また今度>>1:115」も なくなってしまったンゴな。
[ぽつり。
突然の別れはしばしば起こりやすいこの街だが、やはり寂しさは覚えるものだ。
青いゼリーの欠片がどこかにあるなら食べたいンゴ、などと思いながら。
夜も更けてきたので、物陰に身を隠し、丸くなって眠る。**]
(1) 2019/10/14(Mon) 02時頃
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[てけてけとんとんてけとんとん てけてけとんとんてけとんとん]
[軽やかな祝福の音が街から、 住民を送り出していく。
当人の意思とはまるで無関係に。 ──街にあった異物を、遠くへと。]
(2) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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─ 粉屋回想/イナリへ ─>>3:15
[粉屋の前の道は、しっとりと雨に濡れている。 それを喜ぶものがないまま、黙りこんだ鳥はひっそりと息を吐いた。]
───… 祈祷師。
お前、どうやってこの街に来たか。 まだ覚えているか。
[鳥は不意にそれまでの話題とは、一見関係ないことを言った。]
(3) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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我はな。……鳥頭故に、 それを忘れてしまった。 「いつ」来たのかは覚えていても、 キッカケを推測はしても、 どうやってか、どこからかは、 もう、忘れてしまったのだ。
(4) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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ただな。ずっと前には「死」との死闘など 繰り広げてはいなかったのだ。
慣れるのでもなく、「死」というものを そもそも、我も周囲の翼ある仲間も、 まったく認識すらしていなかった。
それは、ただただ、 止まることでしかなかった。
ゆえに、…
(5) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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インティJrは、途中で、少し言葉を選ぶ間を置き
2019/10/14(Mon) 19時頃
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ゆえにな。それは以前の我にとっては、 「死」と戦うなどとは、 とうていまったく思いもつかぬことであった。
それはまったく何でもない、ただの現象で。
順番待ちのようなものであったのだ。
(6) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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しかしな。しかしだ。 我は、ある日気がついたのだ。
我はな、己が止まるのがイヤであると。 仲間が止まるのがイヤであると。
(7) 2019/10/14(Mon) 19時頃
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我の仲間には、その話をしても まるで何もわからない顔をされた。
動くものは、いずれ全てが止まる。 自明のことだとな。 おかしくなったのは我の方であろう。 まあそうかもしれんと思った。 仲間はただ止まることを受け入れていて 抗おうとするのは我一羽であったしな。
我は、まあその。…我の威光により、 仲間に遠くから眺められるばかりになった。
で。その後だ。 我が気がつくとこの街に居たのは。
(8) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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[てけつくてけつくてけつくてけつくとん。とんとんてけてけとんてけてん]
……
[何処からか、祭り囃子が聞こえてくる。 それをききながら、鳥は先を続けた。]
祈祷師、貴殿、ここを出て行く気はないか。
[キョロリと金色の鳥の目が狐を見る。]
ここは死んだ者を送る場所だ。 しかし、それに、別れに慣れて、
…すっかりもう、慣れきってしまう前に、 もし。出て行く先があるなら。
(9) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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ここではない場所を知っているなら。 覚えているなら。
もしか、ここに残りたくてもだ。
出て行った方がいい。
(10) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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やはり、そうだな。 止まるばかりの葬送に慣れる。というのは。 我は、イヤなのだ。
言う側の気持ちに立って送り出すなら。
相手のその先がせめてもある
… さようならの方がいいであろう?
(11) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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故に、出て行け。
[キロリと鳥の目が狐を見る。とてもとても勝手な理屈で話すのは、それはこの街に伝わる「噂話」にまつわる話。そして、実際に起きる「祝いの席」にまつわる話だ。]
貴殿がもしか、異邦人なら。
「外」へ。
[「外」から紛れ込んだ異物だとか、この街に帰属していない存在だとか言われるものを送り出すための話だ。 てけつく、てけつく てんてんてん 祭り囃子の音はだんだんと強くなる。]
(12) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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インティJrは、そう言い終えてから、
2019/10/14(Mon) 19時半頃
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まあ、貴殿がこれで異邦人でないとすれば 我のこれは盛大な空振りなのだが、
[街全体の空気はザワザワと、その発見に揺れているかのようだった。]
……"見つかりたくなかった"なら。
残念だったな。
[鳥は、狐にクワ。と大きく口を開けて見せた*。]
(13) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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[てけつくてけつくてんてんてん てけつくてけつくてんてんてん]
(14) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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ク ワ ーーーーーーーーー ッ !!!
(15) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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─ 祝賀会会場 ─
[いつもなら、暗い街がざわざわと 「祝い」の気配に揺れている。
その中には、劈くような高い鳥の声が混じった。
街の路地を抜けた先では、 狐が花に囲まれている>>3:26。]
出て行け! 出て行け! 遠くまで行け! この街にいる「死」より早く!
[送り出し側は、真ん中にいる者の存在の気持ちを感知しない。ただただ、ただただ快哉を叫ぶばかりだ。]
(16) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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さよならだ! さよならだ!! さようならだ!!
少なくとも、それが、 貴殿の行き止まりでないことを、 我は祝うぞ!!
[排除を祝う鳥は果たして、呪われないで済んだのか。祝いのムードの中でその答えはないままに、ただ送り出しの声は空に昇った*。]
(17) 2019/10/14(Mon) 19時半頃
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[夜。 雨が強くなり、水に濡れた軟体動物は寝ぼけ眼で移動し、路地裏に積み上げられた木箱と木箱の間に潜り込んで睡眠を取っていた。
そこへ。 真っ白な光が辺りを照らし、続いてドオン!と大きな音が響く。>>3:44]
おああーーーーっ
[屋外にいた軟体動物はビビり、木箱の中に飛び込んで震えた。幸い、箱に当たることはなく、そのまま一夜を過ごす。
もしかしたら、近くに金属の塊があったせいで、命拾いしたのかもしれなかった。>>3:47**]
(18) 2019/10/14(Mon) 21時頃
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―次の朝―
[軟体動物の朝は早かったり遅かったり。 その日は比較的早かった。
木箱から這い出て、ゆっくり地面に降り立った。 触角を伸ばしてストレッチなどをし。
やがて餌を探しに行く。 コーラを大分齧ったから、しばらくは平気だけれど。 ありつけるうちはありついておきたいのだ。]
……ンー。
[そしてある地点で止まる。]
(19) 2019/10/15(Tue) 01時半頃
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……ソルフ。
おーい。 ソルフ……リッツィ。
[倒れている獣は火傷を負っていた。>>3:48 それだけで死んでいる、とは断定できなかった。 生きているなら、早く誰か呼んでこよう。
長い名前を思い出し、呼びかけながら触角で突付く。 だけど、長い耳はピクリとも動きやしない。 長くここに居たのか、長耳はすっかり冷たくなっていて。
死んでいたのだ。]
(20) 2019/10/15(Tue) 01時半頃
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……ンゴ。
[触角をゆらゆら、交差させる。 以前巻き付いてみた腕も力なく。 きっちりした鎧は弾け飛んでいる。 何かすごいものがソルフリッツィを襲ったのだけはわかった。]
……………。
ほんのちょっと前に、ソラとソルフと話したのにンゴ。
[本当に、つい先日だったのに。 もう動かないなんて嘘のようだ。
ちょいちょい、ソルフリッツィの額を撫でてから、軟体動物は焼けた獣の柔らかい耳を齧りだした。ところどころ焦げていて苦い。
この街では毎日誰かが死んでいく。 皆、皆死んでいく。 時に、さよならを言う暇さえもなく。**]
(21) 2019/10/15(Tue) 01時半頃
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─ モイの家 ─
[イナリの祝賀会の後、毛玉は再び花を手に葬儀屋の家に向かった。 葬儀屋の家は、今はギロの帰る場所でもある。 あの人と住んでいた家は、あの人が居なくなった時に引き払ってしまった。 毛玉だけで住むにはあまりにも広くて、とても寂しくなってしまったからだ。 その後、勝手に葬儀屋の手伝いを始めたのだが、その際にかくかくしかじかで葬儀屋であるモイの家の一角に居候させてもらうこととなった。 だから、家についての第一声はこう。]
た。 ただいま…。 モイ、いる?
[ドアを開けて、そぉっと呼びかけるが返事はない。 それに、もう夜になるというのに灯りもついていない。 まだ帰っていないのかもしれないと毛玉は思ったが、その考えはすぐに否定された。 再び降り出した雨に濡れた毛をよく絞って(前に怒られたので)薄暗い家の中に入ると、俯せになった葬儀屋の姿があった。]
(22) 2019/10/15(Tue) 02時頃
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モイ? モイ?どうしたの。
[毛玉はてってけとモイに近寄り、身体を揺するが返事はない。 それから、触れた腕もいつもより冷たい気がする。 毛玉は首を傾げて、少し考えて。 モイの身体にそっと耳を近づけてみた。]
…? おとが、しない。
[生ける者であれば心音が聴こえるはずだが、モイの身体はとても静かだった。]
モイ、しんじゃった? …モイ〜。
[何をしても返らぬ反応、冷たい身体。 毛玉はそれを、死と認識した。 元々濡れてしんなりしていた毛玉の毛が、より一層しんなりする。]
(23) 2019/10/15(Tue) 02時頃
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[毛玉は途方に暮れたようにしんなりしていたが、手に持っていた花の事を思い出すと、それをモイの傍へと置いた。]
これ、コーラからのおはな。 モイに、わたしてって。 ギロ、たのまれた。
…とても、きれい。 モイ、うれしいかな。
[コーラから預かった約束の花が、まさかモイへの手向けの花になるとは思いもしていなかった。]
(24) 2019/10/15(Tue) 02時頃
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ギロ、モイはこべない。 どうしよう。
[この事を誰に相談しようと毛玉は考えて、一番に思い浮かんだのはイナリであったが、そのイナリは先程見送ったばかりだ。 次に思い浮かんだのは、ソルフリッツィ。 自警団の役割を担うソルフリッツィなら、相談に乗ってくれるかもしれない。 雨はさっきよりずっと強くなっているが、それでもすぐに相談するべきだと毛玉は判断した。]
───!
[突然、眩い光が薄暗い家の中を照らして、その直後にドォン!という大きな音が耳を貫いていく。 毛玉はびゃっと飛び跳ねると、とても大きく毛を膨らませ目を見開いてフリーズしてしまった。 毛玉は雷がそれはそれはものすごく苦手なのだ。 そして毛玉は固まったままモイの亡骸と夜を過ごす事になる。 この大きな音の元凶である落雷が相談しに行く相手を焼いた事を知るのは、もっと後の事。*]
(25) 2019/10/15(Tue) 02時頃
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