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……ほっほ…なんじゃちいとくらい腰を抜かしてもよかろうに。
[倒れる巨木は少女の脇を抜け、雷門邸前の通りに……落ちず。
轟くであろう大きな音も響かせぬまま、影に呑み込まれていく……足の動かぬ老人と共に]
今ので気でも失えばよかったが……の。耄碌爺の策、休むに似たり……ほっほ。
[放った風の行方を見届けるより早く。
羽衣が消え、支えを失った体がぐらりと傾ぐ]
――――あ、……
[だが、その体が、地に倒れることはなかった。
地中より生まれた深緋の霜柱が、日向の身を貫き宙に縫い留めていた]
せつ、さ…………
[指先一本、動かすことは出来ない。
全身から紅を滴らせながら、風の結界が力を失い消えていくのをただ眺めていた*]
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【人】 機織り 雪客……。 (6) 2014/02/19(Wed) 01時頃 |
人は……あたしだけじゃ、ない。
[身を守る術をかけてくれた誰かや、夕顔を救いに来てくれた華月斎のことを思う。
彼らの思いが自分と同じかはわからないけれど、きっと近しいものだと感じられたから]
……心、か。
[焦点の定まらぬ瞳で宙を見詰めながら、ぽつり、呟く。
もう痛みを感じないのは、雪客の力で傷が凍り付きつつあるからか。
それが死に近付いている証拠だとしても、少しだけ今はありがたい]
なら、悪足掻きすんのも、人の心……だよな。
[息を整えるように、ゆっくりと吐いて、吸う。
腰帯の風車が、微風にからからと回る。
その僅かな風に乗せるように、残った息で音を紡ぐ]
――――――
[脳裏に浮かんだ楽句は、数日前に神社から響いていたもの。
拙いけれど、それに自らの声と、邪なる『気』を鎮める力を風に乗せ送る]
(……明にい、無事だったんかな。
奉納の笛、結局聴けんかったな)
[何処まで届くかはわからないし、効果など現れないかもしれない。
それでも、最期に残った自らの力が、誰かを救う糧になるなら――と]
[数個の楽句を謡った所で、日向の全身は氷に覆われ、声は途切れた*]
[やがてその身が地に下ろされた時には、既に意識はなく。
去り際に掛けられた言葉
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[遠のく意識の淵。
つい先程までとは違う、自分の知る少女の声がかかる。
身を拘束していた影が引いていくのを感じるが、影に捕われ飲まれかけた身体の力は戻らず、奪われた意識は遠のく。
使える気力は、自分が最期に成すべきことだけ。]
ああ、………慣れぬ…妖力……使うから、もう体が持た…わ……無理…て……のう
雷門に……夕顔……強い子じゃ、しっか……り……
[それでも最後まで微笑んだまま、眠っているようないつもの顔つきで。
邸に運ばれる体は徐々に冷えていった*]
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【人】 機織り 雪客― 通りのどこか ― (43) 2014/02/19(Wed) 21時半頃 |
― ??? ―
[広漠な闇の中を、日向の意識は揺蕩っていた。
痛みも、冷たいという感覚すらも喪い、ただ意識だけが無の世界にぽつんと浮かぶ。
まるで時すらも凍て付いてしまったように、日向には感じられた]
ああ。
雪さんに喰われたから――あたし、こんな所にいるんかな。
[独り言ちても、声が響くこともない。
もしそうなら、永遠に出ることは叶わぬのだろう。
そんな諦観に、残る意識すら冷え切りそうになる]
[しかし――再び時が刻まれるのを、日向は感じた。
身を包む守りの気
冷たさと鋭さの果てに生まれた無を、暖かな柔らかさにて有へと引き戻す]
な、に?
[呟かれた言葉
ただ、自身に近しい力を持って、傍に居るものの気配は感じられた]
まだ……諦めるなって、いうのか。
[からからから。
風車の回る、軽やかな音色。
気が付けばそこは、見慣れた自分の家の中だった。
ただ――奇妙なことに、凍り付き動かぬままの自分が、体を起こした自分の下に倒れているのだった]
― 自宅 ―
幽霊……という訳でもないのか。
[霊体であるにも関わらず、身の内にはかすかな温もりが消えぬまま残っていた。
それがまだ命が繋がっている証拠だと、今は思うことにする。
そうしてしばらく、膝を抱えぼんやりと座り込んでいて――]
[聞き覚えのある音色
明にい……?
[霊体であるが故か、風を震わす音色は常になく鮮明に感じられ。
その音色が宿す気すらも、日向は感じ取っていた]
そっか、この力――明にいも、あたしと、同じ。
[誘われるように、ふらり、家の外に漂い出る。
奏でられるは奉納の楽。
だが、その響きはどこか、哀しみを帯びているようにも聞こえた]
― 通り ―
……そうだよなあ。
[明之進の顔は見ぬまま、足を止め、ぽつりと呟く]
哀しいよ、こんなん。
[陽が喰われてからこちら、自分のやるべきことと信じて、ただひたすらに駆けてきた。
だが、闇星宿す者に敗れた今。
足を止め振り返れば、夥しい血と零れ落ちた命ばかりが、そこには残されていた]
なんで……なんで、こんなこと。
[それらに触れることすら叶わぬ魂は、傍らにうずくまり、地を濡らさぬ雫を目からいくつも零した*]
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【人】 機織り 雪客― 通りのどこか ― (60) 2014/02/19(Wed) 22時半頃 |
【人】 機織り 雪客[ゆらり。 (61) 2014/02/19(Wed) 22時半頃 |
【人】 機織り 雪客[完治はせずとも、ゆっくり歩くだけなら苦にならない程には回復できたか。] (62) 2014/02/19(Wed) 22時半頃 |
【人】 機織り 雪客終わる、か…… (64) 2014/02/19(Wed) 22時半頃 |
【人】 機織り 雪客……あんたもさ、喰いにいくんでしょ? (65) 2014/02/19(Wed) 22時半頃 |
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【人】 機織り 雪客― 回想・決着の後 ― (73) 2014/02/19(Wed) 23時半頃 |
― 回想 ―
[凍て付く闇に、意識が呑み込まれる前のこと
(雪、さん……)
[女が言い掛けた言葉を飲む。
言葉を確り聞き取ることは出来なかったけれど、人として悪あがきする猶予が与えられたことだけはわかった。
そうでなければ、『風』の力籠めた音を紡ぐことなど出来なかっただろうから]
(ありが、とう……)
[人でありたいという日向の望みを、本能のまま刈り取らずいてくれたことに、言葉には出来ぬものの感謝する。
目の端に浮かんだ温かなものは、零れるより先に凍り付き、誰にも気付かれることはなかっただろう*]
― 現在・通り ―
[どれだけそうしていただろう、気付けば笛の音は止んでいて。
代わりに、近しきものと相容れぬもの、二つの気配が強まるのを感じた]
もしかして……戦ってるのか。
[呟いて、服の端をぎゅっと握る。
相容れぬ方の気配の持ち主も、その力の質から察することが出来た]
…………。
明にい。一にい。
[力の性質に関わらず、どちらも大事な人に違いなかった。
その二人に、争って欲しくなどない。けれど]
あの二人が、考えなしに戦う訳も、ないよな。
[本能とか宿命とか、それだけを理由に生じた争いではあるまい。
どのみち割って入ることなど出来ぬ娘の魂は、ただ祈るように目を瞑ることしか出来ないのだけれど]
【人】 機織り 雪客[法泉と別れた後。 (94) 2014/02/20(Thu) 01時半頃 |
【人】 機織り 雪客― 温泉 ― (95) 2014/02/20(Thu) 01時半頃 |
メモを貼った。
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【人】 機織り 雪客― 温泉 ― (104) 2014/02/20(Thu) 23時頃 |
【人】 機織り 雪客……。 (105) 2014/02/20(Thu) 23時頃 |
【人】 機織り 雪客[また。 (106) 2014/02/20(Thu) 23時頃 |
― 通り ―
[神社の方角、力の応酬が激しさを増すのを感じる。
また、別の方角にも、ぶつかり合う力の気配があった。
闇の焔と、輝ける命――
霊体は力の質を鋭敏に感じ取った]
どちらか消えるまで、……止まらんのかな。
[はあ、と、重く溜息に似た声が漏れ。
何も出来ないとは思いつつも、立ち上がりふらりと歩き出す*]
【人】 機織り 雪客[考えたところで、それが誰のかなどとわかる訳はなく。 (116) 2014/02/21(Fri) 00時頃 |
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