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[誰もいらない
何もいらない
種を繋ぐ手段も
曇りつつあるシノワズリも
この声さえあれば。
それでいて、悲しみの響きにのせる
本物のように、郷愁混じった色は]
[誰彼問わず涙を誘う
万一
その歌を
聞くものが居ればの話]
……捨てイヌ、じゃない。僕は、
[
幸せにしてくれるなら、誰にでも尾を振ってついていくことが出来る。
それとは違う、とディーンは緩く首を横に振った。
それから、そのまま続けそうになった言葉に羞恥を覚えて、先を飲み込んだ。
どうせ消えてしまうならばもう一度、肉を食い破られたい。
ちりちりと身を炙るような願いのまま、離れていくニコラの唇を見つめる。しかし、もう食べられてしまって、彼を一人にするわけにはいかない。
置いていかない、と、約束したのだ。]
…………ごめん、なさい。
[舌を抓む指が離れて
舌の上に、まだニコラの皮膚の感触が残っている。
ディーンはごくりと唾を飲み込んで、頭を撫でる手を掴む。
離れたばかりの人差し指の先を咥え、指の腹を舌で舐めて、ほんの僅かに噛みつく。
目頭が熱い。
残るひとかけらさえ消えてしまって、それでも彼と共にいられるのだろうか。ずっと前に聞いたことのある歌声が、不安を煽り立てる。]
――…………。
[ニコラの人差し指を離して、ディーンはニコラの両肩を掴む。
ぐっと後ろに押し倒すようにして、自分より大きな身体の上に馬乗りになった。
貧弱な身体は、跳ねのけようと思えば容易に出来るだろう。
ディーンはニコラの顔をじっと見下ろす。
それから、自分がされたように、しかし傷つけないように加減をして、ニコラの喉に噛みつく。
柔く噛んで、離して、再びニコラの顔を見下ろした時。
ディーンの頬に、目から溢れた透明な雫が伝い落ちた。
戸惑いがちに、大きく息を吐く。
苦しい。]
メモを貼った。
[バーナバスが、ノックスの名前を出す。
それに対するフランシスたちの反応にゆるりと瞬き]
……フランシスたちに危険がなければいいけど。
[ニコラやトレイルを失ったノックスがどう動くのかなんてわからず。
喪失の痛みを抱えているであろうノックスを思う。
けれど、嘆いている彼はみたくはないから、居間に向かうことはせず。
彼もまた、どこかで幸せになれればいいのに、と思う]
メモを貼った。
メモを貼った。
[醜いものは捨て去った
汚いものは、置いてきた
美しいものだけに囲まれて
光の中で、美麗な音を奏でる]
[音はいつしか、Requiemに変わっていた**]
メモを貼った。
メモを貼った。
[舌を出してこちらを見上げる彼は、どう見ても捨てイヌなのに捨てイヌじゃないらしい。
零れた唾液を指と舌の隙間に絡ませながら、ふうん?と首を傾ぐ。
赤い舌を、離して。
銀の糸の切れたとき、聴こえたのは子供みたいな謝罪の言葉だった。
……怒ってるわけじゃないよ。
[嘘です。
でも本当です。
けど、言いたいのは。
僕が置いていったらそんな顔するくせに、自分は置いてったのは、ずるいなあ。
って、それだけ]
[
瞬きを、ひとつ、ふたつする間に感じたのは、口内の空気と舌の柔らかさ。
後、固いエナメル質に挟まれる感触]
わ、わ……っ
[キョトンとしていれば後ろに押し倒されて上に乗られて。
押し退けるまでもなく、煙のように抜け出すこともできたのだけども。
彼の見下ろす目が、あんまり苦しそうだったからやめておいた]
ん……
[首に当たる、犬歯。
歯形も残さない捕食は、一度、食らいついただけ。
ゆる、と離れる体の代わりに、ぽたりと雨垂れが落ちてきた]
なんで泣くの?
[手を伸ばして、濡れた頬を親指で擦って。小首を傾ぎ、問いかける]
……僕たちは、死んで、もうすぐこの姿も無くなって、
――……そうしたら、君を見失う気がして 怖くなった。
[
手の中に何一つ残らずともおかしくはないはずなのに、それを思うだけで消えてしまいたくなる。
言葉にし難い、形のない不安を煽る歌声はテンポと曲調を変えて、今もなお続いている。]
僕は、全部取り上げられても、 おかしくない
そのぐらいのことを したんだ。
――……なのに、僕は今、幸せだ。
[望むものを与えられていることが、怖い。
許されていることが怖い。
瞬きの度にこぼれそうになるものを押し留めて、目の端を手の甲で擦る。]
【人】 博徒 プリシラ[服を着て、その上から残されていた外套を着る。 (195) 2014/11/25(Tue) 22時半頃 |
[ノックスの、ことは。
一目見たときからキライでした。
嘘。とても好きでした。
トレイルのことは。
一目見たときからバカにしてました。これは本当です。
でも好きでした。
いっそキライになれたら、苦しいこともなかったのに。
だから、こんなに好きだと。
苦しくなるのは、なんとなく分かります。
幸せって、辛さが増えること。
失うのはなによりも怖い]
ねえディーン。聴いて。信じてね。
[ほろほろ涙を流す彼の髪を、ゆるく握って、指に絡ませて。
ほろほろ崩れて煙に還りそうな指を、もう少し、と留める]
この姿がなくなっても、僕はディーンのそばにいるよ。
ほどけて、なくなってもさ、また産まれてきて……。
それで、またディーンと会って。
今度は食べたり食べられたりしなくても、ちゃんと愛しあえて。
僕もちょっとはいい子になってさ。
だからずっと、幸せでいられるよ。
大丈夫。
[怖い夢を見て泣いていたときに、ノックスがしてくれたみたいに。
優しく微笑んで、優しく囁く。
これしか、慰める方法は知らないの。
握っていた髪を引いて、涙に舌を這わせて。
宥める耳には、
てんしさまが歌ってるのかなあ、って。
ぼんやり思うくらいの、透き通った音色なのに]
【人】 博徒 プリシラ[バーナバスはきっと三階ではなく、下に行ったのだろう。 (203) 2014/11/25(Tue) 23時頃 |
[言い聞かせるようなニコラの声が、胸の奥に沈んでいく。
どちらが大人で、どちらが子供なのか分からない有様だ。
それでも彼の前で、良識ある大人の仮面を被るなど、もう出来ないだろう。
美しい声のレクイエムは、全てを終わりへと運んでいく。
恋であれ、物語であれ、命であれ、始まるものは全て終わりを内包している。
そして、全ての終わりは新しい始まりを生み出す。
ディーンは、しゃくりあげるように一度、肩を震わせた。]
――……君の言うことは、全て信じる。
君は僕の唯一の太陽で、 僕の、神様だから。
……でも、一つだけ、お願いがある。
この時間が終わって、君も、僕も消えて……
それでも、いつかまた、君をちゃんと見つけられるように、
目印を……僕に、くれないか。
どれだけ時間が経っても、君が僕のもので、僕が君のものだと
……分かるような、証が欲しい。
[ディーンはさっきニコラがしたように、指に自分のそれよりも淡い色をした金の髪を絡める。
ニコラの唇に自分の唇を近づけて触れるだけのキスをしてから、その柔らかい箇所にゆっくりと歯を立てた。犬歯が、ぷつりとニコラの唇の皮を貫く。滲む血を、舌先で舐め取った。]
【人】 博徒 プリシラ[階段を下り、居間から人の気配を感じる。 (211) 2014/11/26(Wed) 00時頃 |
[――もう「ばいばい」は終わったから。
そう、答えた。"自分"の前で。
消える瞬間、鮮やかに蘇る記憶。
簡単に開いた扉の前、白い空気に、熱を持たぬ息をほう、と吐く。
もう赤くならない指先は、
今だけは静かに降る雪が、透けて見えた]
[それが最後の意識。
踏み出した足は、雪を踏まずに
開いてなどいなかった扉は、固く閉ざされたまま。
春を待たずに溶けた命。
何も残らず、何も遺さず
かつて流した涙のように、ただ、自分だけのために。
短い死を、終えたのだった**]
メモを貼った。
[歌は。
聴こえる天上の音楽は、遠い。
愛しい人のためだけにかき集めた破片。
ディーン以外のものを感じることが、少し難しい。
その代わり、ディーンの感触はクリアだ。
髪に触れられ、心地よさに目を細める。
目印、なんてなくたってちゃんと見付けてあげるのに、とは思ったけども。
不安そうな彼がとても可愛かったから、願いを叶えてあげたくなる]
んに……
[何度目か数えるのも億劫なほどの、何度目かのキス。
ちり、と唇に熱が走って、鼓動のない血が流れた。
唾液で薄くなった血を乗せた舌を、追いかけて舌をあむりと食んで。
口を離すと、彼の左手を今度はこちらが引き寄せる]
[口を開いたら、獣らしい牙が光った。
彼の左手、その薬指を根元まで咥えて。
がり、がり、と。何度も噛み付く。
食いちぎるまではいかないが、それに近い顎の力。
何度も何度も、少しずつ角度を変えて噛み付いて。
やがて、唾液と血で濡れた指を口から出せば。
薬指の根元は、骨が露出するほど肉が削がれていた。
その骨も、歯で削られてところどころひび割れている。
生きていれば、一生の傷になるほどに、深く]
……目印になってくれるかな?
[ちゅ、と指先にキスして]
死が二人を別とうとも……なんてね。
[それとも首輪の方がよかった?なんて、イタズラっぽく上目遣いで笑った]
[
それが感じられなくなる前に、口の中に収めて、嚥下した。
ニコラの手が、左手を浚っていく。
ニコラはいつでも、望むものを与えてくれる。
彼の開いた唇の奥に光る牙を見、それが待ち構える空洞に薬指が飲み込まれていく様子に、ディーンはぞくぞくと背中を震わせた。]
……っあ、 ぅ、
[肉の少ない、硬い部分に歯を立てられるのは、腹の肉を破かれるのとも眼球の抉られるのとも、痛みの質が異なっている。
骨を揺らし、神経が削られるような感覚にディーンは熱のこもった吐息を漏らした。
痛みと熱は、一度きりの食まれる喜びを思い出させる。
消えて、生まれ変わって、また彼と出会うとして、この性分は変わらないままなのだろうか。
ふと、そんなことを思った。]
――…………は、ぁ
[ぬるついた感触と共に解放された指からは、薄い肉がすっかり削がれていた。
唾液で薄まり、淡いピンク色にも見える血液が滴り落ちていく。
自分の右手が汚れるのも構わず、ディーンは遺された証を掌で包み込む。
それから、ふ、と小さく笑うかのような息を吐いて。]
……ニコラ、君は案外、ロマンチストなんだな。
[ゆっくりと口角を持ち上げて、淡く、微笑んだ。**]
メモを貼った。
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