207 Werewolves of PIRATE SHIP-2-
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―第三甲板―
酒ぇ?
……あー、もう飲めねえか。飲めねえんだろうなぁ……
[クソが。と呟いた。
真っ白で巨大な狼との戦いを眺める死者は、既に傍観者。
呑気なものだった。*]
[風の無い海に銃声はよく響く。
同時に目覚めた狼の咆哮も。]
パシャ──
[水面に波紋が生まれる。
まるで何かの歩みの様に。
だが船に近付いた波紋はそれ以上拡がる事はない。
ただ船に寄り添う様に、ソレは水面に佇んで。]
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かかかかかかッ。
[早漏野郎を、評する声>>84に、咽喉を鳴らした。 笑いに振動するだけでも胸が焼けるように痛い。
傷口を確かめずに、痛みに構わず、笑う。]
鼠野郎だろうが、猫野郎だろうが、畜生以下だろうが。 牙ぐれえは……… あるんでねえ。
[白化粧に、赤が弾けた。 それと同時に、耳を劈く咆哮>>85 口端が、如何にかこうにか、笑いやがる。]
どんなあ、もんだい……… ッてな。
(90) 2014/12/17(Wed) 00時頃
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暴れんなよお、当たっちまうぞ。
[痛みに震える腕を叱咤し、再度、銃口を構えた。
一発目のようにはいかない。照準が、ブレる。
白狼の前に立ちはだかるギリーの隙間を縫って 船長を、狙うのは、骨が折れそうだ。 事実、文字通り骨が折れちゃいそうな、痛みも抱えて。]
おいおいおいおい、お前も、お前も、当たるだろうが…
[射程距離範囲内に、続々、野郎どもが集まる。 船長の牙に、サーベルを奪われたジェレミー。 ギリーの前に、飛び込むセシル。]
(92) 2014/12/17(Wed) 00時頃
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―第三甲板―
[甲板に着いたとき。
見えた光景に、ぎゃっと一声鳴いた。
双頭の獣やら半獣やら見ておいて今さら何を、とも思うが。
本能的に恐怖したのだから、仕方あるまい。
呑気に観戦し始める強者たちの一歩後ろ、陰に隠れるように座って。
少し遠くからの観戦のお供をする]
酒かあ。
[ヘクターとホレーショーの声に、ぽやりと呟く。
程度を弁えて飲むなら、悪くないかもしれないが。
いま飲めるもんなら、恐怖から逃れる以外の理由もなく浴びるように飲むだろう。
ミナカにまた叱られるだろうから、飲みたくはない。
叱ってくれるなら、の話だけども。
などと考える辺り、やはり生者よりも余裕はある。
死人の傍観者たちは、やけに達観した呑気さで戦いを見詰める]
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[サーベルに、牙を封じられた白狼。
照準にまごついている間に 千歳一隅が、何時、解かれるとも分からない。 舌を打ち、腕の高さを滑り落として、獣の腸を狙った。
意識しても、腕が震える。 女神さまも、次が最後ッてところだ。 治療に当たってくれる船医も 壊れた部屋を修復してくれる船大工も 居ないんだよなあ、と、頭の片隅だけ冷めて、曇った。]
ッ、くそ、震えてんじゃねえぞ、クソが!
[吐き捨て、引鉄を絞った。
銃弾は―――― 矛先は、目の前の、密集地帯に。]
(94) 2014/12/17(Wed) 00時頃
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[シャルルを囲む人数が増えてくる。
彼らもやはり、今までのネイサンと、シャルルの違いを感じているのだろうかと。
会話を聞きながら解析するも、だからと特別な情が生まれることもない。]
……?
[いや自分は、何も教えた覚えもなければ、教えられた覚えもないのだが。
そも何故に理を説く必要があるのか。
そんな見当違いな事を考えた矢先───]
──────!!!
[獣の毛が、ぞわりと大きく逆立った。
己の知る畏れとは違う。
肌触りの悪い、不快な恐怖。]
― 第三甲板 ―
[ニコの隣に腰を下ろして。足をぶらぶら。
ホレーショーと副船長の並んだ背を後ろから見ていると。
なんだか兄弟みたいだな、と。
やっぱり副船長は兄貴の兄貴なんだろう。
生者たちの戦いを見つめる傍観者は、そんな緊張感の欠片もない事を考えていて]
……ニコ。酒はだめッス。
[隣の昔馴染みのつぶやきには、ぴしゃりとそう言い放つ。
もう飲めないのは分かっていたが。
あんなニコラスを、もうグレッグは見たくはなくって。
後は黙って。戦いの行方を見守っていた*]
ヴヴ……ル……!
[牙を剥き、低く唸る。
”おまえは誰だ!”と訴えるように。
最早これは、己の知る、絶望の象徴ではない。
まったく異質な、見知らぬ恐怖。]
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[銃撃の反動で、腕が跳ねる。
指先に、銃を握りしめていた力が抜け 床に滑り落ちるのを、視線だけで見ていた。 白狼の腕と爪が触れた胸は、もう、真っ赤に染まってやがる。]
かか、俺様に…… 命令すんなッてえの。
[ジェレミーに、脂汗の浮かんだ面が、笑う。 当たったら構うわ、クソが、と、俺様の悪態の代わりに。]
(104) 2014/12/17(Wed) 00時半頃
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― 第三甲板、階段上方から見下ろして ―
[この船は随分と軽くなったと思ったが、
こうして見下ろすと、死者も留まっていたらしい。
自分もそうか、と存在の希薄な手のひらを見下ろす。
船長――だったもの。
綺麗な、真白い狼。
最期を齎すのは、やはり彼ではなかった。
彼に最期を齎すのは――?]
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[揉み合うギリーと、セシルの悲痛な声が耳に届く。
獣の腸を突き刺す銃弾――― 血>>99 そして、それに覆い被さる、白狼の怒号>>102]
ッくしょ、人間なら一発で死ぬッての………
[船長は強いな、と、当たり前のことに、安堵した。
これぐらいで、倒れるとは思っちゃいねえよ。
ジェレミーに襲い掛かる狼の姿に 小さく、息を吐き。]
ちゅうちゅう、とな……
[視界の端で、医務室を、猫が覗き込んでいた。 暫く見ない間に、悲しい目をするようになった、キティだ。]
(107) 2014/12/17(Wed) 01時頃
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……知ってる。
[膝を抱えて座っていれば、隣から厳しい声。
少し首を竦めて、口ごもりながら答える。
そもそももう飲めないから、彼にまた狂乱を見せることもなかろう。
おまけに、と。透ける手を眺めて、ふい、と視線を床に一瞬向けて。
顔を上げた]
――ああ。
[嘆く声は、ジェレミーに今日は誰が死んだと言われた時に口にした。
『ああ、あいつはいいやつだったな』
『寂しくなるなあ』
その音と、同じだった。
血が舞って
床を、壁を、染める]
─── 。
[何かが跳ねる音がして。
波紋が広がった波間はそれきり、静かになった**]
[ついてきたニコラスとグレッグが自分たちの後ろに腰を下ろす。
目の前の光景に悲鳴をあげつつ酒にという単語に反応したニコラスに、お前はやめとけと言いたかったが、先にグレッグが制したので突っ込まなかった。
ちらりと二人の方を見て、また白狼の方に視線を戻す。
先客のヴェラも近くに居たが、特に何か会話するでもなくただ様子を見ていた。
銃弾が飛び交い、剣の音が、咆哮が鳴り響いて―――。
どこか暢気に会話しながら眺めていたはずが、
いつしか食い入るようにして目の前の戦闘を見つめていた。]
[やがて、血をまき散らして満身創痍になった白狼が
ギリアンの方に歩み寄り、互いに抱擁する。
―――嗚呼、きっともうすぐ終わりなのだろう。
薄々そんな風に悟りながら、只無言でじっと腕を組んで。
血で紅く染まる白狼と、慈しむような動きで牙を立てられるギリアンを見つめていた。**]
[これは呪いだ。
死を終わりだと、救いだと思う者があるならば、
それらにとって、正しく呪いだ。
眼前の光景から目を逸らすように首を振る。
疲れた、と呟くが、身体はどうにも軽い。当たり前だった]
………あーあ
[溜息残して、そのまま階段を上ることとする。
もし、新しい風が吹くならば――
いつもの場所で、船首でそれを感じよう。
呪われた死者にも、それくらい許されたっていいだろう]
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[視界の隅で、にゃあと、猫が鳴いた。
誰を呼んでる声だか、分かりゃしねえ。 獣にだけ通じる声だったのかも知れない。 目の前で血の色が、深く、染まる。
人間も人狼も等しく 抱き合う白狼と、半端者の、姿。 親子のような姿に、喉を震わせた。なにがおかしいのか分かりゃしない。]
ジェレミー、セシル、よお…
[知った名前の通りに、呼んだ。 生きてるのか、見えやしねえと思ったら 足元に眼鏡が転がっていた。]
(119) 2014/12/17(Wed) 01時半頃
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[ヴェラーヴァルが唸り声を上げている。
興味をなくし。
ふとギリアンの腕は何処にあるのかと思った。]
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ッあ――――…
[声は続かない。
続かない代わりに、指を振った。 海上では使わない、犬を追い払う仕草で。]
こっち来るんじゃあねえって。
[最後まで憎まれ口叩いて、目を、伏せた**]
(121) 2014/12/17(Wed) 01時半頃
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[やがて、白狼が斃れ、白い体毛を紅く染めながら、”仔”と呼んだ存在を胸に抱く。
その生命の灯火が弱まるにつれ、張り詰めていた獣の神経も落ち着きを取り戻す。
────畏れが、消えてゆくのをただ見つめる。]
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ッせ、生きてたかよ、死に損ない…
[吹っ飛んだように見えたシルエットから、声が返った。 ジェレミーに返す声も、笑っていた。]
(122) 2014/12/17(Wed) 01時半頃
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