47 Gambit on board
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[バーナー師団長の謝罪に、静かに否定の意を示す。]
いえ。
急のことでしたでしょうし、記憶の混濁も致し方ないことです。
事実、私も前後のことは正確に記憶していません。
[そこに、シェルベリの名を出すことはしない。それは今、本調子でない彼が知るべきではない、と思った。]
それに、私が本当に貴方を襲ったのかもしれない。
私がここにいるのが、仲間割れやカモフラージュの結果でないなど誰が決めました?
[にこり、笑う。気に病むことではないのだと、そういうつもりだが。]
ズリエルを始め救護室にいる数人といくつか会話をしていたが、
そのうち、壁に背を預けたままうとうとと眠り出す**
帝国に害するのは重い罪です。
謝罪ですむほど軽くは無い。
師団長であるなら尚の事、軽く済ませるべきじゃない。
……罰せられませんか?
[再び鉄格子から覗く第一皇子の顔を伺い、僅か首を傾げる。
肩に戻ってきた鷹はまた鉄格子の方へと飛んで。
ぴぃぴぃと鳴いて主の場所を知らせる。]
――…“軍事国家”の崩壊?
大戦になったら。
軍の力は増すんじゃないのかな?
[ふと、聞こえた声
余裕らしき第二皇子と荒い息を吐く師団長に意識を向け、独り言のような疑問を口にする。]
[ふつと、視線に鉄格子の方へ意識が向く。
先の会話を聞いていたのか否か。ランドルフ皇子の顔に滲む不満げな様子に苦笑した。
…念の為に言うと、ランドルフ皇子に言うのが気に入らなかった訳では決してないが、
剣の打ち合いが原因かと言われたら、さて其れはどうなのか本人ですら定かではない。
話せと言われたから、もうどうにでもなれとばかり口に出しただけだった――存外にも、結果として聊かすっきりはしたものの。]
…もし大戦になれば、確かに一時的に軍の力は増すでしょうね。
ただし戦況次第では国そのものの在り方を変える可能性も含みます。
――しかし和平ないし、現状維持では其れを為すことすら難しい。
[独り言にも似たナユタの疑問が耳に届いたのか否か。
其方へは視線を向けぬまま、淡々と口にする。
そも第二皇子が即位し、果てに大陸統一が叶ったとしても、
勿論国を成し維持する為に『軍』が必要なものであるとは男とて理解している。
国が無くなってしまうのでは意味が無いし、故に軍そのものを消す事は考えていない。
統一を果たした際に、軍が国の中枢に位置しなければ良い。
もし今回の件が万が一果たされていれば、それを成すべく、男は目的の為に水面に石を投げ込み波を立たせ、必要あらば国を他国に売ってでもすべき事をしていたに違いなかった。
――例えば、師団長間で幾らかの分裂を目論んだように。
…あくまで第二皇子即位は、男にとって目的の過程の一つでしかない。
利用を図ったと問われれば、否定はすまい。
其処に至るまでもなかった現状に、内心安堵しているかはわからないが**。]
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