308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[最初、彼がその場を離れた時、助かったと思った。
好きな方を選べと言ったけれど、
あんなもの、二択の皮を被った一本道だ。
悔いのない選択など、今ここには存在しなかった。
しかし彼はすぐに戻ってきた。
その手にあったのは、
申し訳ばかりの缶詰と土のついたままの野菜だ。
彼はコートの袖で拭った人参に齧りつく。
眉間に皺を寄せ、泣きそうな顔をしている癖に、
目の光だけは消えないまま。]
……ふ、 ふ。
[思わず小さな笑い声が零れた。
シーシャが視線だけでこちらへ問いかける。]
ふ……いや、すまない。
前言撤回しようと思ってね。
私はキャロルにはなれないが、
ははおや
君は、キャロルによく似ているよ。
[薪を燃やす炎に似た赤毛を思い出す。
太陽が落ちて来たみたいな笑顔を思い出した。
シーシャは虚をつかれたような顔をした後、
一瞬だけ眉間の皺を解いて笑みに近い表情を浮かべた。]
[それからずっと、10フィートの境界は保たれている。]
[寝る時は私のベッドを使いなさいと言ったけれど、
シーシャは頑として聞かなかった。
生きる為に必要な分だけ動き、
必要ない間はすべて店の壁に背を預けて過ごしていた。
会話はほとんどない。
日に何度か彼の名を呼んでは、拒否の一言で幕を閉じる。
あの日から、状況は平行線のままだ。今日も駄目だった。
――嗚呼、
そんなことをしている間にまた夜が来てしまうのに。
空が暗く滲んでいくのを、濁った左目で見つめていた。]*
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