194 花籠遊里
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[慌てた様子で秘書官が飛び込んできたのは、丁度その時。 別珍に包まれた徽章の光は、花の香りよりも強く己を惹く。
約束は叶えられた。 彼は反故することなく赤誠を示した。
事情を取り留めなく説明しだした秘書に構わず大股踏み出し、 すれ違い様に煌く徽章を奪った。五指で掴んだ約束の果て。
漸く明けた櫻の季節に、荒ぶ木枯らしなど、障害にもならない。]
(49) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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― 地下牢 ―
[異邦人とは本来奇異に映る。言葉が通じず、造形も違う。 畏怖すら抱く花の美貌が、花の都を無事抜けて、 のこのことやってくると考え居たのは己の迂闊だった。
彼は一歩、足を踏み出すだけで櫻香を撒く。 良く笑い、良く喋り、櫻の香で人を惹く。
警察に殴りこんだ外交庁幹部は、有無を言わさず押し通る。 足を止めず、要人を引き取りに来たと告げれば、 意外な――彼がずっと訴えてきた――真実に驚く詰署員等。 呆然とする彼らから止める者など出なかった。
薄暗い地下に降り、花に群がる羽虫を鋭い眼光で殺す。 彼が花をやめたその時、彼らは踏鞴を踏んで逃げ出した。
陵辱の憂き目を見ることなく、人になった彼に視線を滑らせ。 乱れた黒髪と、ほんの少しの加圧に色付いた背中を見た。]
(50) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[花の彼なら誰にでもくれてやろう。 花束と括り、花瓶に活けて、愛でもしよう。
だが、今の彼は、譲る気になれない。]
―――…再会早々罵倒するんじゃねぇよ、可愛げのねぇ。 お前さんが暢気に渡海しているからだろうよ。
[皮肉めいて絞った声は、僅かに上がっていた息を誤魔化した。 伸ばした指は、彼の頬から眦を慰めるように往復し。]
(51) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[そこで、ふと口角を持ち上げ、彼の面差しと対峙した。 恐怖をご自慢の掘った穴に埋めて隠し、気丈に振舞う彼。 隠しきれていないように見えるのは、きっとそれが人の証だ。]
別に構やしねぇよ、呼ばすとも俺が行けば良いだけの話。 花に通うは蝶の特権――…ああ、もうどちらも違ったな。
[相変わらずの揶揄語り。 フェイスラインを辿る指先が、彼の小さい顎を捕らえ。]
物知らずなお前さんじゃあ、舌が回んねぇと思うが。 いや、どうせ、呂律も回らん時じゃねぇと呼びそうにねぇか。
[笑みを噛み殺しながら、彼の顎を引き、自身の首を傾けた。 空の左手を黒髪に差し、緩く梳きながら、静かに寄せる顔。
今度は、眼を閉じろなどと無粋を語ることもなかった。]
(52) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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―――…『エクトゥール』だ。 閨ではそう呼びな、櫻子。
[重ねた唇から、そっと、人の蜜を彼だけに注いだ。*]
(53) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[名を。月花の名を呼ばれたような気がして足を止める。 娼館が並ぶ花の小路。 花籠のように洋風の館もあれば、昔ながらの立派な宿まで規模も見た目も様々。 今宵よあちらこちらで『泡沫の夢』が広がっている事だろう。
……なぜ、こんな場所を枯れた花がさ迷い歩くのか。 ただ、なくしものを探すためだけに夜を歩き夜を生きる。 自由の身、だからこそ。
歩みが止まったのは丁度一つの娼館の前。 ここへと売られた者は、心身共にボロボロになるまで客を取らされるという。 噂をしていたのは花見習いである蕾だったか。 こんな場所に、もしも己の求める色があったとしたら。 嫌な想像に眉間に皺を全力で寄せ、重い息をはきながらも再度入り口に目をやった時だったか。]
(54) オレット 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[どうしても忘れなれなかった。 どうしても捨てきれなかった藤色の花が、入り口に立っているように見えた。>>28 ……音もなくただ空気を微かに震わせ、口の形だけで名を呼ぼうとする。 夢幻でも構わないと、吸い込まれるかのように足は勝手に動く。動く。 一歩、二歩、三歩。己の手を伸ばしても僅かに届くか届かないくらいの距離まで詰め。 淡い、悲しみと喜びの混ざりあった色を浮かべ手を伸ばそうとした。]
(55) オレット 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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―花籠を去り行く櫻へ―
[微笑みと共に告げられる声色は、何時もの彼のようだった。>>14>>15>>*6
留まり移ろう蝶を受け入れる、櫻。 蝶を嫌悪することなく、花籠らしくなく咲いている笑顔。
櫻を見送る己の顔は、複雑さを眉根に、それでも笑顔。
彼は証明してくれた。 花籠をこうして、晴れやかに飛び立つ花も――花でなくなることも、出来るのだと。
羨望と期待は、胸に入り混じる。]
(56) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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[桜色を失くし揺れる黒髪を、後は静かに見送るばかり。
『しあわせになってください』と。
彼の思惑は何処にか。 今を否定する響きは、耳朶を揺らし、焔を揺らし。*]
(57) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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―それから―
[幾度の月と日が巡る頃か。 花籠に咲く色は再び鮮やかに、何事も無かったかのごとく生けられた彩に、今宵もとりどりの蝶が蜜を求め。
変化は多く。 それでも慣れてしまえば、再び何も代わり映えの無い毎日。
確実に指先に溶けない紙束の雪を拾い集め。]
(58) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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[未来への道標。 拾い上げたのは、戯れに呼ばれた花籠の奥での事。>>38]
さて、丁はその問いへの答えは持ちません。
[ひたりと侵食するような声色を、上辺の笑みにすり抜けさせた。]
(59) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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花主様を怖がるなど、有り得ると?
[答えをはぐらかし]
花籠を抜け出すべくもがいた所で、丁は花に御座います。
[本心を濁して]
飛ぶ事など、蝶でなくては叶いません。
[焔色の造花は、言葉を裏に取る。>>39]
(60) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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[じりじりと、胸に燻るのは。 何時に見た花の所為か、蝶の所為か。
嗤う夜色に近付く沈丁花。
主の傍らに膝を付き。]
(61) lalan 2014/09/25(Thu) 01時頃
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―ある、下らぬ物語のために―
[掻き集めた蝶の生まれも育ちも知らぬこと。 海を渡りてくる一通。 それは下らぬ物語のためのもの。]
フン。
―――反吐が出るねえ。
[あの男は意地でも迎えには来まい。 追いかけて来いと、逃げる蝶。]
(62) あんび 2014/09/25(Thu) 01時頃
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まあ。 隣国との“友好”でも築いておこうか。
恩を売るのは悪くない。
[適当な姓、適当な身分。 海さえ渡れれば十分だろうと。 手をつけた旅券を、櫻に持たせ**]
(63) あんび 2014/09/25(Thu) 01時頃
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[月には見られたくないと、何時も客に強請った こんなはしたなく男に抱かれ婀娜の様に媚び善がり狂う様を彼と同じ名を持つ空照らす灯に見られたくなかった こんなことをしても本質的に汚れてしまったことには変わりないのに]
……おぼろ
[小さく小さく、呟く言葉は震えているだろう 今の自分は花の頃と随分様変わりした 琴を爪弾く爪は欠け、肌の白さは病的なほど あの頃より褪せた藤色の髪止めと着物は風に煽られ、その風はつむじとなって2人の間を駆け抜ける
嗚呼近づいてくる、美しい月が>>55
一歩 長い焦茶の髪は月光を背に煌めき
二歩 揺れる着物は落ち着いた色合いで、彼に似合っていて
三歩 僅か薫る煙草の香りはあの頃と変わらない
そこで立ち止まる朧月は、手を伸ばせば届くだろうか届かぬだろうかという距離に]
(64) sinonome 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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[あいたかった あいたくなかった
その姿をもういちど、たった一目でいい、みたかった こんなみすぼらしい己の姿を見られたくなかった
彼の顔に浮かぶ色は、淡く美しい色 その顔に嫌悪が無かったことが、泣きたい位に嬉しいのに 薄汚れたこの身が恨めしい 最後に覚えてもらえるならば、美しいままでいたかったと そんな決意が彼が告げる己の花としての名で、崩れていく]
(65) sinonome 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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[本当ならどうしてこんな場所へ 早くお帰り下さい 藤之助は死んだのです
幾らでも言い様があったろう。もうこの場へ立ち入らぬ様にと、去ってと告げるのが最上だとわかっていたのに 浅ましい己の心は歓喜していた。忘れないでいてくれたことを
唇から言葉は漏れず。思わずその伸ばそうとした手に己が手を重ねようとするのを必死で押し留め
ああでも]
(66) sinonome 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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―― 地下牢 ――
[震える権利など無いはずなのに、身体はずっと震えていました。 気丈に居ようとすればするほど 僕の身体は落ち着きを忘れたように
あゝ、それをも溶かしていくのは 彼の指先だけなのでありましょう。
数多くの櫻を買った蝶は、可笑しなことだと蔑むでしょうか。 数多くの春を買った人は、可笑しなことだと嗤うでしょうか。
そんなもの『夢物語』だと。 指を差して、せせら笑うのでしょうか。
誰が何を謂おうと構わないなんて。]
(67) anbito 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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[皮肉を彩るくせに、指先がこんなにも優しいこと。 絞る声に紛れて、上がる吐息をお隠しになられていること。 持ち上げた口角が、何を想っていらっしゃるかも。
今この射干玉に映る、秋色のすべて 僕が知っていれば、それだけで。
───『しあわせ』なのです。
それは『花』であった名残。 何度も謂ったでしょう?
甘く愛されるほど、咲き誇るのだと。]
(68) anbito 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
オレット 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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[接吻けが、甘い毒を流し込んでゆかれます。 唇が触れて、蜜のようにとろりと囁かれてゆかれます。 指先が僕の顎を引き、もう片方は髪を梳き。
重なりは、名を告げに離れるでしょう。
そんなの、赦してなんてやらないのです。 人に人の蜜を注げばどうなるか。
胸元に手を添えましょう、彼の心音が届くように。 服をきゅうと掴みましょう、もう二度と離さないように。 そっと眸を閉じましょう、恥ずかしさを隠すため。 自ら唇をもう一度、あの時のように重ねましょう。
まだ、まだ涙なんて見せません。
大きな射干玉に、滲んだ海を湛えたままで。 頬染めて、はにかんでみせるのです。]
(69) anbito 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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───えくとぅー、る …さま。
寂しくなんて、ありませんでした。
[だって、あなたさまに逢うために 僕は、───(生まれて)来たのだから**]
(70) anbito 2014/09/25(Thu) 01時半頃
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……泣く程俺の顔を見たく無かったのか?
[未だ触れていいのか、手を伸ばしてもいいのか迷う部分はあれど。 零れ落ちる雫を拭うくらいは許して欲しいと、頬に手を添える。>>66 ……嗚呼、最後に見た時よりも少し痩せ顔色も悪い。 一体彼はこれまでに、どれだけの苦労をしてきたのだろうか。
そして、そんな藤之助にしてやれる事の少なさよ。 残された物が伝える言葉の通りに、一瞬たりとも藤色を忘れる事は無く。 願わくば、もう一度だけでも会いたいと彷徨い続けたが、いざ彼の前に立つと自分の無力さが浮き彫りになる。]
俺は。もう一度お前の顔が見れて嬉しかった
[それでも。 月花の枯草はようやく満たされたような気がした。 二度と埋まる事はないだろうと思っていた、何かが。]
(71) オレット 2014/09/25(Thu) 02時頃
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……っ、ちが……
[逆だと。泣きたい位に嬉しかったのだと紡ごうとした言の葉は頬に手を添えられ>>71空に溶ける
温かい手に頬触れられれば溢れる涙は止められぬ。その手を濡らし零れ落ちた雫は心に沁みゆく様に1つ2つ、頑なな花弁を剥がしてゆく
あいたかった。ずっとずっとあなただけに その手に触れたかった、貴方の笑顔が見たかった 声が聞きたかった
再会までに何度季節が過ぎ去っただろう。 彼のかんばせは花であった頃より深みが出てどこか安心感を抱かせる
その彼の口から告げられた言葉に黒瞳は朧月をかくと捉え]
朧、おぼろ。 私は、わたしはただ、あなたと
[手に手をとって籠の外に逃げ出した鶴と亀の様にともにいきたかったのだと 嗚咽と共に零れ落ちた願いは、果たして聞こえたかどうか]
(72) sinonome 2014/09/25(Thu) 02時頃
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おうや、おうや。 お前は嘘をつくのが下手だね。
それとも。 お前をそんなに見ていないとでも。
[男は愉快そうに揺り椅子を揺らす。 唄うように、されど冷たい視線ひとつ。 じっとりと絡みつくよな、吐息混ぜ。
笑みひとつですり抜けるを、赦しはしない>>59]
(73) あんび 2014/09/25(Thu) 03時頃
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はぐらかし、濁し、隠し、笑い。 丁のふりをし、蝶たらんとす。
焔のようにくゆる花よ。
[そっと、その髪に触れようか。 酷く甘く、酷く優しく。 酷く冷たい指先で。]
お前は一体、“何者”なんだろうねえ?
[蝶でもなく、丁でもなく。 花でもなく、人でもない。
“それ”をこの手に絡めとった。]
(74) あんび 2014/09/25(Thu) 03時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
anbito 2014/09/25(Thu) 03時半頃
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[健気を抱えて海を越え、 考えたこともなかった世界に足を踏み出した彼。
やはり外の世界は怖いところだと怯えさせただろうか。 花が一輪で生きていくには果てしない世界。 けれど、二人で生きていくなら、きっとそう悪いものじゃない。]
――…櫻子、
[重ねた唇から注ぐ蜜は、彼の名前を象り。
控えめな指先が服に皺を刻み、 妙に甘やかな羞恥に彩られる彼に目元を緩めた。
彼が瞼を下ろしてくれて助かった。 己は今、大分緩い顔をしている自覚がある。]
(75) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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―――…良いさ、これから俺が教えてやらぁよ。
どんだけ喧しく泣いて喚いても、もう、置いてったりしねぇ。 [彼は一度捨てられ、花となり。 今度は花籠を出でて、二度目の花となる。
悪辣で、傲慢で、身勝手で、我侭な、 けれども、唯一人を待っていた男の。
男は、恋に落ちる音を聞きながら、 物語の終わりに、美しい花御前《はなよめ》を手に入れた。*]
(76) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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― La Vie en cerisier ―
[彼を引き取った男が連れ帰ったのは、 小さいながら郊外より花の都見下ろす屋敷であった。 古い建物に関わらず、余り生活感がしないのは、 つい最近、手に入れたものであるから。
山賊か海賊か強盗宜しく、 諸所の手続き済ませたがる警察を振り切り、 彼を肩に担いで戦利品めいて攫った先。
玄関潜って、足は一直線に自室へ向かう。 屋敷自体は差して広くは無いが、中庭も抱えており、 彼に宛がわれていた個人部屋と比べれば雲泥の差。
しかし、手入れをする召使はまだ揃えておらず、 男の不精の片鱗覗かせ、薄い埃が積もる場所も。]
(77) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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―――…さて。 うんと寂しい想いでもさしてやるんだったか。 しかし、その前にお前さんにゃ、褒美をやらねぇとならんな。
[寝る部屋、と主張するが如く、広い寝台を収めた自室。 己の上背を納めても余る広大なシーツの海へ、 軽い彼をぽすんと放り、早速と言った調子で声を掛けた。]
……良く来た。櫻子。 もう、花籠へやる心算はねぇが、閉じ込める気もねぇ。 お前さんは何処へでも好きな場所へいける。 だが、帰る場所は此処にしろ。此処以外は許しゃしねぇ。
俺は強欲だが分別はある男だ。 俺のものは俺のもの、余所のものは余所のもの。
(78) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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