197 獣ノ國
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そんなもので流されてしまう悲しみなんか、罪なんか、僕はいらないよ。
[自嘲めいた言葉と歪んだ口元で呟く。]
ずっと、…残っていてくれていい。それで、いい。
――なんて、ね!
[茶化すようにして男は笑う。 先程の昏い様子を感じさせない様子で笑みを浮かべる。
そして抱えていた花籠を彼へと押しやろうとする。 芳しい香りを漂わせながら花弁を揺らす大きな花籠を。]
…君にどんな理由があるのかは知らないけれど、君の罪滅ぼしがてら、一つ頼まれてくれないかい?
[彼が花籠を受け取ったにしろ、受け取らなかったにしろ、男は立ち上がる。そして随分と湿りを帯びたフードを脱ぎ捨てる。
露わになるは頭上に生えた獣耳。髪色と同じ淡い色。隠すことなく男は晒し、首を傾げる。]
(222) 2014/10/06(Mon) 00時頃
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僕は、これからどうしても離せない用事があるんだ。
――だから、マユミという鴉のような髪を持つ女の子に、届けてくれないかな?
[少しでも渋るような素振りを彼が見せたのならば、男は冗談だよと花籠を片手に立ち上がるだろう。
彼が受け入れてくれたのなら、嬉しいとばかりに笑みを作るのだ。]
それじゃあ亀吉。
――また会おう。 今度は晴れの日にでも、ね。
[手をひらりと振りつつ彼の返事も待たぬまま、男は背を向けた。]*
(223) 2014/10/06(Mon) 00時頃
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―公園→自室―
[“人の気持ちはわかりにくい”>>227に男は調子の良いような笑みを浮かべただろう。
男の無茶を受け入れてくれた彼には寸分、眉を下げる素振りを見せるものの、気紛れ猫は猫らしくニヤァとしているだけ。
人より秀でた聴覚はゆうに別れの言葉を耳にしたけれど、男は振り返らず、暗い影に寄り添うように公園を後に。
曇天よりわかりにくかったものの、気付けば日は沈み、浮かぶ月が静かに灰色の空を映し出していた。
鍵を開けた先、自宅に着くや否や、水を含んだ赤い頭巾を脱ぎ去る。
鏡越し、映る自分の顔は野獣なんてものよりも醜く情けなく、とても化け猫のように笑みを浮かべることも出来そうにない。
一層山羊になれたのなら巣食う頭の中の頁を全て食い荒らせてしまったのなら、男は――]
(229) 2014/10/06(Mon) 00時半頃
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――さて、手紙を書かないと。
[暫く思考に耽っていた男だが、ゆるく髪を散らしながら独り言。
ショップ袋から漁るは、レターセット。空の形を模して送ると約束したのだ。]
何を書こうか。
[筆をとったまま、男は暫く唸る。 ゆっくりと筆を滑らせる途中で、転がったのは猫の仮面。]*
(230) 2014/10/06(Mon) 00時半頃
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―雑貨屋にて・カリュクスとの対話の時―
そうだね。未来があるように過去があるんだから。どんなに真新しい頁もいずれは黄ばみ、埃をかぶるんだろう。
いいや、考えに外れもないさ。
[意見>>231に男は相槌を。時折感心したように声を漏らして]
君は、物事を『視る』ことに優れていると思うよ。
[小鳥が思い浮かべる“綺麗なもの”を耳にしながら、男は纏う空気を和らげる。]
僕は気に入った。君の綺麗なものを是非ともいただこうか。
[肌触りが良い純潔を現す色。 何のために纏っているのか、怪我をしていた、ということについて男の素知らぬところではあったけれど、利便性にも飛んだ一つを手に取り、控えめながらも煌びやかに輝くピンブローチも取る。]
――狼らしく我儘に、ね?
[茶化すように言いながら、籠の中へと詰めていく。]
(284) 2014/10/06(Mon) 12時半頃
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――手紙を送ることができたのなら。 君のことも紹介するよ。 君さえ良いのなら、また会えた時にその子に君の連絡先を伝えるよ。
[鳥目が何を思って唇を少し緩めたのかは分からない>>232
だから気休めのような、ぼんやりとした本心を言葉に乗せる。 そしてしっとりとした淡淡とした頭を、水滴を落とすように撫でた後]
空色、か。冬の空ならきっと、翼を灼かれてしまうこともないだろうし、ね。
[籠に新たに空色のタオル>>238も入れていく。そして会計を済ませば少女に手渡した。
去り際、挨拶をする少女に男も軽く腕を持ち上げ、ひらりと掌を左右に揺らす。]
それでも、君が必要だといった空が、寂しくないものだといいと、僕は思うよ。
[何処かへ羽ばたこうとする小鳥を男は追うこともせず、見送っただろう。 呟いた言葉が、小鳥に届いたのかどうかは知らぬところではあったけれど、それ以上は何も告げずに男は約束を果たすために花屋へと向かったのだった。*]**
(286) 2014/10/06(Mon) 12時半頃
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―自室―
[簡素な部屋に申し訳程度に置かれた物といえば、机と椅子と、冷蔵庫とベットと、片手で収まり切りそうな物だけ。
冷えた身体をタオルで大雑把に払った男は転がっていた紺色を拾い上げ机の上へと飾る。
指で触れるとコツン、と。硬い感触。自嘲気味た笑みは一瞬。すぐに空色の紙面に便りを綴る。]
(368) 2014/10/06(Mon) 23時半頃
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親愛なる白ヤギさんへ
今日は雨が降っていたよ 働き者の君もまた、おつかいをしていたのかな? 紫色の花は手に入ったかい?
ああ、君は雨を防ぐのなら何を使うのかな?
赤ずきんだけじゃあ心配だ。そうだ、フライパンなんてどうだい?傘の代わりにね。
なんて、冗談は程々にして。
今日は愛らしい金糸雀と出会ったんだ。 それと強気な黒鹿ともね。 最後には、随分と愛らしい獣とも出会ったんだ。正体は分からなかったけれど。
そこで君の話もしてみた。手書きの手紙を貰える人は素敵な人、なんだろう? だから君、素敵な人になる気はないかい? どうか、この手紙が君に食い破られてしまわないように。
クロ*
(369) 2014/10/06(Mon) 23時半頃
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[筆を止め、愛らしい金糸雀の頷き>>355を思い出しながら、宛先には少女の名を綴ろうとしてある失態に気付く。]
――インクが、切れてるじゃあないか。
[困った困った。なんて男は口にするが反して唇は弧を描いたまま。]
ちょうどいい。ベネットの姿がいないのなら、インクついでに会いに行けばいいか。
[確か曖昧だったけれど約束>>1:203をしていた気がするのだ。
男は空色の手紙を鳥の形に折ってはいつか手のひらに転がされた黒猫>>0:363と合わせるように置いてみて。
縒れたその黒猫に小さく唸りつつも、小鳥一羽を連れて部屋を出る。 傍らには赤い頭巾を抱えて左手には、ビニール傘を持って。向かうは本屋。寄り道は、隣人の元>>277]
(370) 2014/10/06(Mon) 23時半頃
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―自室→隣人の部屋―
[コンコンコン。軽快なリズムを3回。拳にて鳴らせばその人は顔を覗かせることはあっただろうか。
不在ならばそのまま立ち去っただろうし、もし彼が鹿角を覗かせたのならば、「やあ」と片手を泳がせただろう。]
「赤ずきんを貰えれば、少しは気が楽に」だっけ?
[公園近くでの会話の切れ端>>99を思い出しながら、男は右腕に抱いた赤ずきんを差し出す。
随分と水気を含んだ上に先程まで身に付けていたもの。更にはお古。]
――…僕にはいらなくなったから、良かったらどうぞ。
[口にしつつも、少しでも相手が躊躇うようなら男は取り下げるだろう。
そして、「お腹は満たされた?」なんてからかい言葉をかけては、また改めて話でも、なんてオマケに付けては踵を返しただろう。]
(371) 2014/10/06(Mon) 23時半頃
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―アパート→商店街―
[果たして、隣人との会話は成されたのだったかどうだったか。
何れにせよ役目を終えた正体を隠すための頭巾を脱ぎ去った男は足を動かした。
約束>>1:263を果たすべく、紙で作られた小鳥を共につけて本屋へ向かう。 そして、道すがら空から降る沢山の花びらを眺める赤ずきん>>364を視界に入れた。]
――やあ、赤ずきん。 君はどこへ行くんだい?おつかいはどうしたの?
[にこり。透ける傘の中で狼は、少女へと足を近づけて。]
随分と退屈そうじゃあないか。葡萄酒もケーキも無しにお出かけなんて、花もロクに摘めそうないね。
[なんて軽口をしつつ、透明の傘を差し出す。]
――あげるよ。
(372) 2014/10/06(Mon) 23時半頃
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―回想・隣人の部屋―
[韻を踏んだノックの音。現れた顔色は幾分か良く見えた>>381]
――だから押し付けに来たんだよ。
[顔を顰めつつも受け取ってくれる相手に男は口角を上げる。]
なら、晴れるように祈っておくれ。ついさっき会った便利屋を名乗る獣と約束したんだ。次は晴れの日にでも会おう…ってね。
[次に赤ずきんが役目を果たすのはいつなのか。随分と大きく見える衣が折り畳まれていくのを眺めて、“良い子にしていた少年の物語”には、]
――成る程、新しい物語をありがとう、オスカー。
[主人公の名を紡ぎつつ振り返る手のひらに、口端を緩める。
「また新しい物語を綴るのなら呼んでおくれよ」
蛇足を添えることを忘れずに彼に見送られながら、幾分か軽くなった身体で雨の路地を進んで行った。]*
(388) 2014/10/07(Tue) 00時半頃
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―現在・商店街―
[うつらうつら。 紡がれる声は夢と現の世界を揺蕩っているのだろうか。
縁取られた睫毛>>384を見下ろしつつ、唇から零れたおつかいの結果に男は苦笑する。
そして彼女が勤めを果たせなかった理由を薄っすらと察していた男は口を閉ざすことで友と、落ち込んだ様子の少年のことを隠した。
雑貨屋にて購入した傘を受け取る手は、小さく頼りなく映る。そして随分と熱を失った手のひらに傘を手渡そうとして――]
(389) 2014/10/07(Tue) 00時半頃
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――そんなに? 大きいかって?
[ザァア…と、雨の落つる音。 転がった傘>>384はくるりくるりと当てもなく転がっては動きを止め、
問いかけに、空色の鳥>>369を差し出した。]
君の声を 君を見つけるためだよ、クラリス。
[頬を打つのも、顎を滑るのも気にせず男は唇を緩めて。]
鐘が鳴ってしまう前に、約束を果たしに来たんだ。
[狼男は笑う。彼女の指先に鳥を止めようと、そっと歩みを進めながら。]
(390) 2014/10/07(Tue) 00時半頃
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[――そして距離を縮める最中>>390秀でた嗅覚は拾う。 男の最も嫌うあの豆の匂いを。]
――…時計の針は落ちた。
[いつも決められた時刻に同じことを繰り返す、あの男。
今日購入したばかりの戯曲にて綴られた言葉を思い出しながら、皮肉げに。
地獄から落つる糸を、断ち切るように時を止めようと、刹那視界を塞ぐ。]
(408) 2014/10/07(Tue) 01時頃
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