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そう、楽しいのはいいことだなって思って、わたしも応えたかったの。
でも、やっぱりあんまり飲めないから、気をつけないとね。
[潰れないように程々に。胸に刻んで、至極真面目な調子で頷く。
ドリンクのオーダーは宅本さんに任せてしまった。]
グレープジュースにフルーツを漬けたの……っていうことになるの?
おいしそう。
モヒート……は、ミントのやつ?
緑がきれいだなって思ってた。
[ノンアルコールサングリアに期待を寄せつつ。
知っている単語を拾って、記憶とつなぐ。
夏によく出るのは知っているけれど、味は知らないカクテルの一つだ。]
カルーアは度数が高いの?
[これには少し驚いた。
だって甘くて飲みやすかった。一杯飲むくらいでぼんやりしてしまって、あんまり覚えていないけど。
強いお酒だったなんて、知らなかった。]
こ、来ないですよ。
オットーもウッチーも、わたしが飲めないの知ってるもの。
二人になることも、ないし。
[だいたい夜シフトが終われば深夜。
賄いを食べてお腹を満たして、近くのお互いの自宅に帰る。
二人になるとしたって、帰り道の少しの間くらい。]
はい、初めてで――
…………え。
ええと…………そうですね?
[こういう店は初めて、を再度肯定しようとして、続いた言葉に思考が止まる。
何? ナンパ、って、言いました?
あたまがまっしろ、という表情を隠しも出来ずに、瞬きを繰り返しながら曖昧な返事をした。]
[ちなみに、疑問符で締めくくったのを他の店の誰かが聞いていたなら、呆れ顔で初めてじゃないでしょ、と窘められるかもしれないが、生憎ここには誰もいない。
根っから染み付いたお人好し、ナンパをナンパと気づかずに、手助けしたりお茶に付き合ったり、は前科がある*]
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【人】 吹牛方士 芙蓉[男性の声がして意識を向けたが、それがしばらくぶりの常連さんと気づけば表情も緩む。 (82) 2019/11/28(Thu) 09時頃 |
【人】 吹牛方士 芙蓉美人? (85) 2019/11/28(Thu) 10時頃 |
【人】 吹牛方士 芙蓉有馬さんも。 (91) 2019/11/28(Thu) 12時頃 |
【人】 吹牛方士 芙蓉――店内へ―― (103) 2019/11/28(Thu) 19時半頃 |
【人】 吹牛方士 芙蓉[身体も温まりきらないし、不審者探しは一時中断しよう。 (106) 2019/11/28(Thu) 20時頃 |
【人】 吹牛方士 芙蓉どうぞ。 (116) 2019/11/28(Thu) 21時半頃 |
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ご自宅でも作れますよ。
ホットワインみたいに暖めても美味しいかと。
[料理人の彼女にアレンジの提案というのは釈迦に説法だが、ひとつずつ、確かめるみたいに聞いてくれる声が嬉しくて恥を忘れる。調子に乗らないように自重しても、顔に張り付く笑みが普段の三割増し。]
牛乳で割っている分、原液ほど高くないですがビールより度数がありますよ。勧めてくる方には―――…、注意してくださいね。
[口当たりの良いカクテルはすべからくレディキラーだ。アルコールに明るくない彼女を慮って言葉を添えるも、丁度そのタイミングでドリンクが運ばれてきた。
オレンジを狐の尻尾に見立ててグラスの縁に引っ掛けたサングリアと、件の女殺し《カルーアミルク》]
………。
[ススス。
笑みを張り付けたまま、やわいモカ色を引き取る。]
[気を取り直すように咳払いを挟んで。]
お二人とも紳士的な方ですからね。
夜遅くに女性を連れ出す行為は避けているのでしょう。
そこに親しさや思いやりはあっても、他意がないのは理解しているのですが…。それでも嬉しいものです。
[グラスの曲線に円弧を描く唇を押し当て、唇を濡らす程度糖分を摂取する。己の突拍子もない発言を受けて、惚けている彼女を肴に。]
……ご存知かと思いますが、僕はmurmur coneyが好きなんです。ですから、出来るだけ行儀の良い客と思われたいんですよね。
戸崎さんにでもですし、他の方々にも。
お店が客に選ばれたいように、その逆もあるとは思いませんか。
[アルコールを喉に滑らせ、意識を冷やして酔わす。
瞼を下してしまうのは勿体なくて、驚愕の顔から視線を外さぬまま。一度だけ、ゆっくりと瞬きで瞳を洗い。]
―――…鋼の理性と鉄の意志で言わなかったこと、
実はいっぱいあるんです。
[僅かに上体を傾け、卓に肘をついて乗り出した。
店のカウンターで見せるポーズだけの内緒話では無くて、此度は彼女だけに、静かに囁く声量。]
戸崎さんは、かわいいですね。
[音がしそうな彼女の瞬きを、間近で数えて。]*
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――へえ。
温めるのは、おいしそうですねぇ。
そうしたら、シナモンとかも入れたいな。
[ホットワイン自体は未経験でも、温かいフルーツの味わいは想像できる。
笑顔の深まる宅本さんにつられて、だんだん緊張も笑顔に変わってきた。]
牛乳、おいしいからなぁ……気をつけます。
ビールは苦くて飲めないですけど、カルーアは飲んじゃいそう。
[そこでちょうど、ドリンクが運ばれてきた。
ミルキーな褐色と、色鮮やかな紫。]
……あ、
[スッと、カルーアミルクが宅本さんの手の中に。
ちょうど気をつけろと言われたばかりで先にそちらを取るアクションに、他意なく紳士だと思った。
アルコールに挑戦したいという気持ちはあったけれど、まず入り口はノンアルコール。
フルーツの踊るグレープジュースを、ひとくち。]
[グレープジュースは、想像以上にさっぱりしていた。
漬けられたいくつかの柑橘に、ベリー。
甘いぶどうの風味に、酸を足してくれている。]
でもそれは、宅本さんもでしょう?
[会話のうちに、同僚を紳士と評する言葉があればそこに目の前のひとを含めた。
だって今も。いくつも気遣いを見せてくれている。
けど、でも。
ナンパ、って聞こえた言葉が、頭の中をぐるぐる回る。]
え、……あ、はい。
それは……なんとなくは。
[murmur coneyが好き。
それは、なんて嬉しい言葉。]
そんなふうに言われなくても、すてきなお客様、だと思いますけど――
[客観的にはこうして閉店後にお酒をいただいているのは、褒められたことではないのかもしれないけど。
自分から乗っかったようなものだと思うから、宅本さんは悪くないと思う。]
お客さんがお店に選ばれたい……?
[その逆、はぴんとこなくて。
そのままひっくり返したけど、お店は誰を拒むようなこともない、はず。]
[鋼の理性。いつか聞いた言葉。鉄の意志。
やってくる単語を一つ一つ頭の中に落とし込んでいるうちに、距離が不意に縮まった。
テーブルの上。乗り出して、半分の距離。]
かわっ――……
[あんまりにも驚いて、言葉を失った。
瞬きはまた繰り返し。睫毛が何度も上下する。]
わ、わたし、が?
……わたし、に、選ばれたい、ってことですか。
[話を総合してみる。
これはナンパらしい、ということ。
お客は店に選ばれたいらしいこと。
カルーアミルクは度数が高いこと。
勧める人は注意した方がいいこと。
紳士は深夜女を連れ出さないこと。
そういうことなんだろうかって、さっきとはまた違う緊張が急に襲ってきた*]
貴女に構いたがるのは、僕が紳士だからではないですよ。
貴女に限っては、きっとその逆です。
[楽しいお酒を。と誘ったはずなのに、彼女を困らせ、楽しんでいるのは男の方。あまいデザートカクテル程度では酔わないけれど、夜の街に繰り出してからずっと陽気な心地が胸で躍っている。]
そうですねぇ……。
[行儀の良い客、と聞いてもカウンター内の住人である彼女の反応は鈍い。カウンターを挟んだ内側と外側、繋がる橋になる言葉を選ぶ暫しの間。]
―――…例えば、残さず全て食べきるとか。アルコールでなくてもドリンクはオーダーするだとか。誰も聞いていなくても、美味しい時は、美味しいと口に出すとか。味の感想を伝えるだとか。
マナーも含むのですが……、
また来てほしい、と思われるゲストになりたいです。
[己がどれだけ厄介な客でもうさぎの巣穴は拒まないだろうが、これもまた気持ちの問題だ。
飲食に対し、金銭を支払う。
そんな消費契約のみでは到底語りつくせない思いが彼女の店にはある。]
だから、我慢していたんですよ?
首筋がお綺麗ですね、とか。
旋毛がまんまるですね、とか。
貴女に不埒な軽口を叩かないように。
[見つける度に飲み込んできた、彼女のかわいいところ。
それでもこれらはまだまだ初級編。
鳴き声もかわいい。
―――― なんて言いだしたら振り切る可能性がある。]
[近付いた彼女からは爽やかなフルーツの香りがする。
瞬きに合わせて瑞々しい芳香が弾けるよう。]
直ぐに答えなくても大丈夫ですよ。
ビックリさせている自覚はありますからね。
でも、意識して、考えてください。
そして、出来れば検討してくださいな。
貴女に好かれるよう、目一杯努力しますから。
[ひそひそ話を丸い耳に向かって吹きかける。
カウンターの中でもその気はあったが、オフの彼女は小動物のような反応をする。耳のカーブに触れたい誘惑に、少し瞳が揺れた。]
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