254 東京村U
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『なんだね、こんな時間に。失敬なやつだな』
[背後から、寝起きの"立川"がのっそりと身を乗り出してきた]
『どきなさい。ぼくが一喝して追い払ってやる』
["立川"は玄関のドアノブに手をかけ、ロックを解除した]
あっ······ダメ!!
[ジリヤは"立川"の腕にすがりついた。 だが、ロックが外れた瞬間、ドアは勢いよく開かれた。 誰の手も借りずに]
(261) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[ ――ざわり
得も言われぬ悪寒がジリヤの心臓を握りつぶした。
まだ夢の続きを見ている、ぜったいにそうだ
で、なければ、これは――]
(262) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[ドアの向こうに、"ソレ"はいた。
モニターの"向こう側"にいつも居る"ジリヤ"。
きらびやかな空色のステージドレス。 ミニのスカートからすらりと伸びた白いタイツ。 差し色の赤いチョーカー。 猫耳のボンボン耳当て。
やや前傾姿勢なその姿は、赤黒い飛沫で汚れ、 同じく赤黒い汚れにべったりと染まった両の腕は、 ライトに照らされヌラヌラとテカっていた。
その先に握られているのは、ひび割れたガラスの灰皿。
あらぬ方向を向いていた顔が、ゆっくりとジリヤに向けられた。
無機質な空っぽの笑顔。
ジリヤと目が合い、その口が動いた]
(263) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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『 み つ け た 』
(264) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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["立川"が悲鳴をあげた。 ジリヤを突き飛ばし、そのまま奥の寝室へ逃げ込む]
(……これは?)
[床に崩れ落ちたジリヤは、そのままへたりこんだ]
(……あたし?)
[ステージ衣装を身にまとった"ソレ"は、ゆっくりとジリヤへ迫る]
(逃げなきゃ……はやく逃げなきゃ!)
(265) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[右足の脛に激痛が走った。ぶつけてもいないのになぜ? ブルブルと脚が痙攣し、力をこめることができるない]
(動いて!おねがい……はやく動いて!)
[自由にならない脚を動かそうと、必死に腿を叩く。 その間も、緩慢な動きで"ソレ"は迫り、 ついにジリヤの目の前で止まった。
"ソレ"は、恐怖で震えるジリヤを見下ろしている]
······アッ······ヒッ
[自分の内腿がぐっしょりと濡れていくのがわかった]
(266) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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(あたし······死ぬの?)
[だれかに聞いた、ドッベンゲンガーの結末(>>90)が脳裏によぎった。
無機質な笑顔を浮かべたまま、 "ソレ"はゆっくりと灰皿を振り上げる]
(267) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[そのとき
バチンッ
と、なにかが弾ける音が響いた]
(268) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[灰皿を降り下ろさんとしていたソレは突然動きを止めた。 顔を左右にめぐらせ、あたりの様子をうかがう。
獲物を突如見失った獣のように――]
(······なに?)
[次の瞬間、ソレはジリヤを置いて風のような勢いで跳びだし、 "立川"が逃げ込んだ寝室の中へ姿を消した。
寝室から悲鳴があがる]
(269) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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(······い、いまっ!!)
[脚に力をこめた。 今度は、どうにか立ち上がることができる。 痛む右足をひきずりながら、開いたままの玄関ドアへ。
途中、背後に暖かな気配を感じ、思わず振り返った]
(270) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[リビングのソファに置いてあったポーチ。 その口の隙間から、ジリジリと紫の煙が昇っている。
あのなかに残っているものはいくらかの化粧品と財布。 そしてもうひとつ、ヤヘイから託された本。
らくがきだらけの『東京村』]
(271) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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― 赤坂·高級賃貸マンション 中央ロビー 0:46 ―
『大丈夫だ、もう大丈夫だぞ!』
[本郷がジリヤの肩を力強く抱いて背中を叩く。あの直後、立川の悲鳴を聞いて駆けつけてきた本郷たちがジリヤを確保、ロビーにつれて警護にあたっていた。フロア内は柄の悪い屈強な男たちが行き交い、携帯で連絡をとりあいながら"殺人犯"の行方を追っていた。
他の部屋で待機していた数人の女子たちもロビーに集まり、不安そうに様子をみまもっている]
(272) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[ロビーに三ノ輪の怒声が響く]
『ッザケンナ!! 来た跡も出た跡もねぇってどーいうことだ!? ポッと沸いて消えたって言いてぇのか!! 死ぬ気で探せ!!海しずめんぞ!!!』
(273) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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ああ、いや、トラブルとかではないです。 また、そのうちアンソロの依頼があるかもってぐらいで。
[心配そうな顔をする照子(>>251)に、そんな風に返す。 昨日、電話を受けた段階では事前情報程度のものだった]
今日、その入間さんから電話が……電話、でんわ……。 あっ、スイマセン!ちょっと電話します!
[後で連絡する、そう言ってからかなりの時間が経過していた。 こちらに成果はまったくなかったが、せめて知り合いに連絡が取れたかぐらいは確認しておかなくては]
(274) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[慌ててスマートフォンを出して、『入間翔子さん』へと電話を掛けた]
(275) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[本郷は、薄着のジリヤの肩に毛布をかぶせ、自販機で買ったホットココアを手渡した]
『"立川"は······残念だったな』
[ココアを手に持ったジリヤは、その液面を、ただじっと見つめていた。まだ、夢の中にいるようで、現実感がまったくない。身体が心から冷え、震えがとまらない]
······赤羽さんは?
『知らないほうがいい』
[そういうと、本郷はジリヤの肩をたたき、携帯を2台両手でもっている三ノ輪の元へ向かった。]
(276) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[『知らない街ニキ』のまとめの導入だけ眺めた。 そこには、入間も言われた内容が書かれていた。 誰にでも言っているらしい。
「知らない街だった。」 「まだ、その街から出られないんだ。」 「おまえだって、そうなんだろう?」
思い起こしていると、だんだん、胸がむかむかしてくる。 鎖骨の少し下を、さすった。]
(277) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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きもちわる……。
[知らない――あんな人たち知らない。
あの知らない顔の女は言った。「どうしちゃったのみおん。」 あの知らない顔の男は言った。「何かあったのか…?」 駅前の交番の警官がいう。「お父さんたち心配してたよ」 でも、近所の小太りのおばさんは知っているようで――
まるで、こちらの方がおかしいような扱いだった。]
(278) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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[ココアを一口飲んだあと、部屋から持ち出した、らくがきだらけの本を胸に抱きしめて、ロビーから見える東京の夜景を見下ろした。暗い闇夜の中、街灯がキラキラと輝いている。
抱きしめた本は、そのページの四分の一以上が、やけだたれたかのようにボロボロに崩れていた]
(……護ってくれたの、ヤヘイ?)
**
(279) 2016/09/30(Fri) 20時半頃
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(知らない街なのかな)
[そう思ってしまった途端、あの『知らない街ニキ』は間違いなく変な人だったと思っていたはずなのに、もうあれを変人と呼べる気が、しなくなっていた。]
(280) 2016/09/30(Fri) 21時頃
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[母の携帯に電話があった。 ぎくりとしたが「キルロイ先生」と表示されている。 おそるおそる、電話をうける。]
もしもし。 あの。何かわかりました?
(281) 2016/09/30(Fri) 21時頃
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ああ、木露です。 結論を最初に言ってしまうと、今日どこかで祥子さんを見たという人間はいなかった。
[残念ながら、と付け加える。 期待に沿うような報告はできなかった]
作家連中も、榛彬堂白明社や他の編集者なんかも見てないそうだ。 ……知り合いの方には連絡取れたかい?
[今度は逆に、気がかりになっていたことを問いかける]
(282) 2016/09/30(Fri) 21時頃
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……そうですか……。
[過度の期待まではできていなかったものの、落胆はする。]
あの。 き…つゆ?さん?て、名前なんですか? ごめんなさい、名前、キルロイ先生って書いてあったから。 ありがとうございました。
[どちらにしても聞き慣れない響きだ。本名なんだろうか?それとも、ペンネームというヤツだろうか。]
えと。 知り合いには、連絡とれたんですけど、 さっき新宿ではぐれちゃって……。
(283) 2016/09/30(Fri) 21時頃
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イルマは、ジリヤの画像を待ち受けにしている人の隣で電話をしている。
2016/09/30(Fri) 21時頃
イルマは、ジリヤファンかもしれない隣のひとのことも知らない。
2016/09/30(Fri) 21時頃
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ああ、木露流衣。 読みを変えて並べ替えると、キルロイ。 海外でキルロイ参上っていう……いや、どうでもいいか。
[流石にこういった事態では、悪癖も抑制される。 話を元の筋道へ戻す]
合流の方はできそう?もしくは、他の今晩頼れそうな知り合いはいる?
(284) 2016/09/30(Fri) 21時頃
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[本当に律儀にいろんな人にあたってみてくれたのなら、きっと大変だったことだろう。それに、折り返し連絡をくれたことが、それだけでも有り難かった。 木、露、る、井、と想像してみたが、「る」は電話越しではわからなかった。まあ、今はどうでもいい話のようだ。]
参上? え? はい。
知り合い、ていうか、親戚なんですけど。ホントは。 合流、無理そうかも。全然会えなくて…… 高校の男の子がこっち来てくれるっぽくて、待ってるとこ。 頼れる……かどうかは、わかんないです。 頼っていいのかも、こんな事だから、わかんないし……。
[そう、やや暗く零した。]
(285) 2016/09/30(Fri) 21時半頃
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うーん、そうか……。
[暫く考え込んでから、口を開いた]
本当にどうしようもなくなったら、代々木に来ると良い。 お金を貸すなり、部屋を貸して俺は外に過ごすなり、ぐらいはできるから。
[最後の手段として、そう伝えた。 その後、思い出したように付け加える]
ああそうだ。李沢一二三君、ってクラスメイトかな? 前に電話を受けた時、たまたま隣にいたんだけど。 彼も君のこと心配してたよ。
(286) 2016/09/30(Fri) 21時半頃
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(名前、るいくんと一緒なんだなぁ)
[電話先の相手が考え込むように静かになってしまっている間、従兄の名前である、琉衣という文字を想像する。 それから、続く言葉にはたとする。]
代々木、ですか? ……あ、ありがとうございます! どうしようもなくなったら……泊めてくれるってこと、ですよね?
[会う時は絶対お巡りさんのいるところにしようと決心していることは口にださないし、申し出はありがたい。 見ず知らずの相手だ。入間も最後の手段として覚えておくことにする。 ここからなら、タクシーか、いざとなったら歩いていこうとしていけない距離ではない可能性だってある。]
(287) 2016/09/30(Fri) 22時頃
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[次いで、クラスメイトの名前が出てきて、ぎょっとする。]
えっ!?あ、え……?一緒に居たんですか!? もしかして、名前知ってたのも、ひふみ?
[では、今まさに新宿まで心配して向かってくれているのは、電話をしているキルロイ先生の声を聞いていたためだろうか。入間は、う〜と小さく唸った。鼻の奥が痛む。]
さっきいってた、男の子、そいつです。 さっき、電話いきなり切ってごめんなさい、キルロイ先生。
(288) 2016/09/30(Fri) 22時頃
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そうそう、彼がキミの名前を。 びっくりさせちゃったみたいだけど。 ああ、気にしなくていいよ気にしてないから。
[思いっきり気にしていたとは、言えなかった]
来るときは、彼と一緒に来るのが良いかもしれないね。 一人だと色々と不安だろうし。 それじゃあ、何かあったらまた電話して。
(289) 2016/09/30(Fri) 22時頃
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― 赤坂·高級賃貸マンション 中央ロビー ―
『顧客点呼ソッコー!!』 『手足らねぇ!回してくれ!!』
[ロビーに怒声が響き、末端の男たちと待機していた女子たちが一斉に携帯で通話をはじめる。
ジリヤは、すぐにピンときた。殺害されたのは常連の赤羽と"立川"。シルバーケースとつながりが深い他の常連客にも被害がでている可能性がある。
"対処"が遅れ、先に警察に動かれるとマズイというわけだ]
(290) 2016/09/30(Fri) 22時頃
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