204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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―― 三階/部屋 ――
[居間と一階から漂う血のにおいにあてられ部屋に逃げ込んだ。 一階からのそれは誰のものかは知れない。 けれど居間で嗅いだにおいはラルフの血だと知っている。 血縁であり共に過ごしてきた彼の血のにおいを嗅いで 喰らいたいという衝動が擡げたことで罪悪感を懐いた。 大事な同行者を傷つけたものを許せないと思いながら その血に己の舌を這わせ啜りたいと思い そんな欲が脳裏に景色として過った。 いつか大事な同行者たちを傷つけてしまうかもしれない。 甘美なる悪夢に嫌悪と高揚を覚えたからこそ 手当ての場に留まらずあの場から立ち去った。
部屋の窓辺に佇むドナルドは ガリ、と爪たてるようにして乱暴に後ろ頭を掻く。 己への憤りを無意識にぶつけるように。]
(38) 2014/11/19(Wed) 14時半頃
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[蝶番が微か音を立てて空気の流れを感じる。 フランシスの呼びかけ>>2:519に顔を上げてゆっくりと頷いた。]
――…あァ、おかえり。
[フランシスとラルフの方から漂う微かな硫黄と石鹸のにおい。 肩に掛かる少しの重さと体温にふっと目を細めた。 時間を経たことにより少し落ち着きを取り戻してはいたけれど フランシスからの仄かな甘えは珍しく、ドナルドの鼓動がはやまる。 下ろした利き手が、半ば上がる。 炊事場で抱きとめたように、 彼の背に腕をまわそうとしている己に気付き、動きが止まった。 軽く、拳を握って、耐えるように眉を寄せる。 凭れるフランシスの耳朶、首筋に目が奪われる。]
――――……。
[フランシス、と吐息まじりの掠れる音色が微か漏れた。]
(39) 2014/11/19(Wed) 14時半頃
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[ラルフに言葉掛けて部屋を出るフランシスを見送る。 普段ならば彼が何かするなら手伝うというところだったが 自制しきれると思えぬ現状ではそれもままならない。
気をつけて。 無理はするな。
そんな言葉が頭を過ぎるけれど、「ああ」と短い声しか掛けられず。
休むラルフを見守りながらフランシスの帰りを待つうち 磨耗した精神が休息を求め、倒れこむように寝台で眠りに落ちていた。*]
(40) 2014/11/19(Wed) 14時半頃
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―― 夢にみる過去 ――
[惹かれあった少女はあまい花のにおいがした。 袖を引かれ誘われた庭木の陰。 少女の話に耳を傾ける。 小鳥が囀るような愉しげな音色。 周りにひとはいない。 声を潜める必要もないのに 内緒話するように耳朶に彼女の声と吐息が掛かる。 少女の名を呼びかけて近い距離を元に戻そうと 座るままの姿勢で重心を後ろにやれば それを引き止めるように伸びた手が肩に掛かる。 くちびるにやわきが触れて熱がまじわる。 意図せず少女に触れた犬歯が彼女に血を流させた。 あまい花のかおりとあまい血のあじ。 未熟な獣の衝動を掻き立てるには十分なものだった。 それでもひとの理性がそれを否としその場から逃げ出した。]
(54) 2014/11/19(Wed) 15時半頃
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―― 夢の続き ――
[ひとり、宿に戻り衝動を押さえ込もうとしたけれどそれはならず ひととしての尊厳まもる為に両親より渡された守り刀を荷から取り出す。 縋るような気持ちで握り締めていたけれど 牙をむいた獣の衝動はやすやすとひいてはくれなかった。 鞘から抜けば刃が鋭く輝く。 刃に映りこんだ己の双眸。 片方の目が餓えた獣のそれのような色にみえて ひとを獲物としてみた目を厭い、その光を失わせて あたたかくぬめる血が己を赤く染めてゆく。 痛みに意識を手放す直前、呼びかける保護者の声を聞いた気がした。]
(55) 2014/11/19(Wed) 15時半頃
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―― 三階/部屋 ――
[眠るドナルドの眉間には皺が縦に刻まれる。 深い眠りにラルフとフランシスの話す声は届かない。 子供の頃のように撫でられる感覚。 頬へと触れる優しいぬくもり>>50に表情がゆるむ。]
――――……、
[フランシス、と音なくくちびるがその名を綴る。 ぬくもりを求めるように伸ばした手が 頬に宛がわれたフランシスの手をさぐりあて軽く握る。 安堵するように、呼吸はゆるやかになるけれど 流れる旋律の>>51熱に心揺さぶられるような心地で徐に隻眼が開く。]
(58) 2014/11/19(Wed) 15時半頃
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[寝ぼけたような眸がじっとフランシスを見詰める。 夢か現かわからぬまま、ドナルドはふっと淡く笑った。 甘い痛みは過去をみた故か、それとも今があるからか。 分からぬままシーツに落ちる手。 それをそのまま支えとし、身体を起こせばギシと寝台が軋む。]
……はよ。 なんか、……寝すぎた。
[眠る間にわずかずれた眼帯を正しい位置に戻し ふあ、とあくびして]
ちゃんと眠れたか?
[と、傍にいたフランシスへと問いかける。]
(61) 2014/11/19(Wed) 16時頃
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[彷徨わせた視線がラルフをみつける。]
ラルフも。 ――…具合は?
[痛み止めを飲んだばかりの彼に 案じる心のままに怪我の具合を尋ねる。]
(63) 2014/11/19(Wed) 16時頃
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[揺れる緑の双眸にはたと瞬く。 くちびるの動きを自然と隻眼が追う。 何を言いかけたのか分からぬまま挨拶の言葉が フランシス>>65より返り、小さく頷く。]
寝てるならいいけど。 昨日、戻り遅かっただろ。 もうちょい休んだ方がいいンじゃねぇか?
[彼の顔色、血色を窺うように 思案する彼に顔を近づけ覗き込む。]
(67) 2014/11/19(Wed) 16時半頃
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[夢をみたせいかしっとりと汗ばむ肌。 べたつくそれが不快で眉を寄せる。 食事をとる予定らしきフランシスとラルフを見遣り]
メシの前にちょっと湯あびてくる。
[と、声を掛けて立ち上がる。 部屋に置いてあったタオルと 己の鞄から着替えを一組取り出して ドナルドはふらりと一階にある温泉に向かった。]
(68) 2014/11/19(Wed) 16時半頃
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[間近にあるフランシスの双眸。 己を映す緑に何処か満足げに目を細める。]
……そ? ならいいけど、無理はダメだからな。
[言い聞かせるように保護者である彼に言葉向けて。 問う声にこくと首肯し]
ガキじゃねぇンだからひとりで行けるって。 ま、湯あびたいなら止めねぇけど?
[ゆると首を傾げてフランシスとラルフを見る。 ラルフの方は、傷に障りはしないかとも案じてしまうが。 如何するかは彼らの意思に任せる風な物言いで。]
(76) 2014/11/19(Wed) 17時半頃
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―― 温泉 ――
[纏うものを脱ぎ畳んだ上にフランシスからの贈り物を置く。 アミュレット、髪と似た赤の雫がついた耳飾。 守り刀は持ち歩かない。 だからそれは部屋にある鞄の奥底にねむる。
ほどよく締まる身体に手桶で汲んだ温泉の湯をかける。 たちこめる硫黄のにおいは好ましいものではなかったけれど 湯はやわらかくあたたかで汗だけでなく疲れまでも流すよう。
乱れの目立つようになった髪の一房をつまんで 指の腹で擦り合わせるは汚れを気にして。 髪油の香気は己の汗に混じりとけて。]
――…ン。
[ふと保護者のそれを思い出すけれどゆると頭をふって 桶に湯を汲みなおし、それを頭からざばりとかぶる。]
(78) 2014/11/19(Wed) 17時半頃
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[汚れを洗い流してから湯舟につかる。 湯の中で身体ほぐすように腕をぐっと前に伸ばした。 生き返る心地がする。
湯浴みの時はさすがに眼帯も外す。 閉ざされたままの左目。 使わなくなった左目周辺の筋肉は衰えて 意識しなければぴくりとも動かない。
湯舟の壁に背を預け ひっかき傷の残る右腕をその縁にのせる。 心地よさげに目を瞑り、湯のぬくもりにひたるうち 右手の五指が目覚め際に聞いた歌声の旋律をなぞるように踊る。**]
(79) 2014/11/19(Wed) 17時半頃
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―― 温泉 ――
[痛み止めを飲んだ事をラルフから聞いた。 過保護な保護者が案ずるのも道理で 留まる二人と別れてひとりで湯を浴びに来たけれど。 ドナルドと一緒の方が、とフランシスに言ったラルフの言葉の その意味がドナルドには知れず不思議に思う。 遅くならないように、なにかあったら、と そんな言葉を掛ける心配性な彼には「大丈夫だって」と からりとわらってみせたものの、 気付けばそれなりに長湯になってしまっている。 トン、と跳ねる指。 その動きが止まるは脳裏に流れる旋律が終わりを迎えたから。]
――…もうちょっと。 いや、これ以上はのぼせるか。
[すでに身体の芯まであたたまり耳朶は仄かに染まる。]
(111) 2014/11/19(Wed) 20時半頃
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ドナルドは、ベネットに話の続きを促した。
2014/11/19(Wed) 20時半頃
ドナルドは、ラルフに話の続きを促した。
2014/11/19(Wed) 20時半頃
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―― 温泉 ――
[湯気で白く煙る視界。 ぴちゃん、と天井から滴る雫。 血のにおいは遠くうちに宿る獣も今は静か。]
――…はぁ。
[ずっとずっと堕ちきらぬように自制して。 自制し続けていれば近しい者を傷つけずに済む。 けれど、本能のままに、とうちなる獣の囁きが聞こえる気がして]
厄介な血、だよなァ。
[ぼやくように呟いて立ち上がれば ざば、と身体に纏わる湯が音立てて落ちた。]
(122) 2014/11/19(Wed) 21時頃
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―― 温泉 ――
[眼帯なく前髪は下されて以前会った時と風貌は少し変わる。 湯殿から出ようと出口に目を向けた時 湯気の向こうに人影>>136が見えた。 流血沙汰があったことは知るが惨状は知らない。 だから、知る者よりは少しばかり警戒心は薄く。]
……ン。
[目を細めてピントをあわせれば誰かわかり]
プリシラ、か。
[覚えていた名を紡いで]
もう出る。 邪魔したな。
[短い言葉を掛けて出入り口へと歩む。]
(144) 2014/11/19(Wed) 21時半頃
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―― 温泉 ――
[プリシラより紡がれた名に頷く。]
そうそう。
[覚えていてくれた事を喜ぶように 右目とくちびるが柔からな弧を描いた。 彼が立ち止まった理由は知れないけれど 己のことを警戒しているのやもと思えば 長居するは迷惑だろうと歩みははやくなった。]
いい湯だった。 ゆっくり入れるといいな。
[声を掛けてちらとプリシラに目を向ければ 己よりも大分線の細い肢体が目にとまる。 自身は裸身晒すを何とも思わないのだが 懐いてしまった感想のせいで気まずげに視線が揺れて]
(157) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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……じゃ。
[引っ掻き傷のある右手を軽く掲げて 擦れ違いざまに声掛け湯殿を出る。]
(158) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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[プリシラとすれ違うその時>>177 向けられた礼の言葉に笑みを深くする。 ひとと話すのは楽しい。 こうしたささやかな会話でも嬉しいと思う。 前置きの後、暫し間があく。 何かと思い待っていれば思わぬ問いかけ>>178に瞬いた。]
好き嫌いなく出されたものは全部平らげる。 なんて、な。
[何でもないと言われたけれどそんな応えを向けて別れ]
(184) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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[衣服を置いた場所まで行き タオルで髪と身体につく水気を拭き取る。 遠く鳥の声が聞こえた気がして首を傾げた。]
――…相変わらず。
[元気、というべきか、騒がしい、と称するべきか。 苦笑を漏らして着替えを纏う。 眼帯とアミュレット、耳飾りを身につけるが 髪を整える為のものを忘れて 未だ湿り気を帯びる髪は無造作に下したまま タオルと汚れた衣服を持って階段へと向かう。]
(187) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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[少女について書かれた文章には続きがある。
禁断の赤い果実――欲望の実を食べた少女は、
街を追われることになる。
実を食べたものは皆魔物になってしまうと信じられていたからだ。
友人達にも、両親にも責め立てられ、しかし愛しい人がいる街から離れたくなかった少女は、街の中を逃げまどう。
逃げ切れなくてもいい、せめて最後に愛しい少年に会えたら
――少女の願いが通じたのか、少女の前に少年が現れた。
「僕はずっと君を見ていた」
少年は、少女にそう告げる。
少女が少年を見ていたように少年もまた、少女を見ていたのだ。
「だからせめて君が魔物になってしまう前に、
綺麗なままで終わらせてあげたいんだ」
少年は手にしていた槍で少女の腹を刺し貫く。
少女は、最後に少女に会えた喜びと、想いが通じていたことの嬉しさの中で息絶える。
それが、少女の結末。]
[少女は幸せな最期を迎えた。
――では、自分はどうなのだろう?]
[救いは、そう簡単には訪れないらしい。
ただの肉の塊となり果てた自らの死体を見下ろして、ディーンは小さく息を吐く。
彼に食べられたことも、その所為で命が潰えたことも自分の選択の結果だ。構いはしない。しかし、何故死して尚自分がこの場にいるのかがディーンには理解できない。自分の選択の結末を見届けろ、ということなのだろうか。]
――……。
[何にせよ、自分の身体に用は無い。
これはニコラにあげたものだ。
ディーンは部屋を出て廊下に向かう。
拭かれた痕跡がありながらも、まだうっすらと血の跡が残っている階段を降りていく。足音はしない。]
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―― 一階/階段傍 ――
[吹き込む風の冷たさにふると震える。 風のもとを辿れば玄関の方にはラルフが居た。 何をしているのかと声かけようとするけれど 呼ぶフランシスの声が聞こえて視線がはずれる。]
――… フランシス?
[声のした方を見上げればフランシスと鳥、もとい ルーツと飼い主のフィリップの姿認める。]
(194) 2014/11/19(Wed) 23時頃
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ドナルドは、再び玄関の方に目を向けた時にはラルフの姿はなく。
2014/11/19(Wed) 23時頃
ドナルドは、フィリップと視線あえば、はたり片目が瞬く。
2014/11/19(Wed) 23時頃
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[階段の下から見上げる姿勢でフランシスの声を聞く。 問いかけにはふっと表情緩めて]
いい湯だった。 さっぱりしてきた。
[と、声を返す。 続く言葉からは不穏な状況を感じ取り]
――…三階、か。
[眠る前に血の匂いがしたのは一階。 そういえば此処から血臭は薄れていた。 片付けた者が目の前にいるとも知らず]
わかった。 ありがと、フランシス。
[礼の言葉を向けてその場に留まり少し考える風。]
(202) 2014/11/19(Wed) 23時頃
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[死体の前にいる人は、藁に包まれた物をじっと見ていた。
―――食べられたのだ、とわかった。
でも、この人は誰だっけ。
悲しそうな目をした、若草色の髪をしたこの人は、誰だっけ]
………名前、なぁに
[眠るような、赤に濡れた金髪の、自分。
知っているのに、わからない。
問いかけても当然、答えは返ってこない]
― 2階・居間 ―
[血の足跡が消されていても、彼の居場所はすぐに分かった。
恐らく、彼がずっと持っていると約束してくれた自分の瞳があるからだろうとディーンは推測する。
物音も無くすり抜けるように居間に入る。
ペチカの温かみは感じられない。]
――……ニコラ。
[ずっと一緒だと約束をした。
吸い寄せられるかのようにニコラの傍に立ち、柔らかな日の色の髪に唇を落とす。
そういえば、全てをあげるとも約束した。
今のこの――幽霊ともいうべき自分は、どのようにして彼にあげれば良いのだろう。]
[自分の全てを捨て、愛しい者に全てを与えたディーンには、
他に傍にいるべき相手はいない。
大切なもの――大切だったものは、昔馴染みに託してきた。
本当はあったかもしれない傍にいる資格すらも、捨ててきた。
ベネットならば彼を正しく守ってくれるだろうと信じていた。
彼の命ももう失われているのだとは、まだ、知らない。]
[置いてきたもの、ひとつ。
それが名前。
顔をあげて、振り返った。
一歩踏み出すごとに、少しずつ何かが毀れていく。
少しずつ身体が、軽くなっていく。
意識せずとも―――
意識とは、なんだろう]
なん、だっけ
[生きているうちに諦めたものから、ひとつずつ、毀れていく]
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