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─中庭─
[花から、花へ。
その甘い蜜に、音色に、誘われるように。
碧い蝶が薄桃の上に止まり、
花だけに聞こえる声で囁く。
──おやすみ、ヤニク。
ゆっくりとおやすみ。次の目覚めまで……]*
【人】 お針子 ジリヤ[紫のブーケの咲く場所を探していて (12) 2014/09/11(Thu) 01時頃 |
【人】 お針子 ジリヤ[すでに、記憶から抜け落ちてはいたが (13) 2014/09/11(Thu) 01時頃 |
[全身から、血液が抜けるのを感じる。
体温が無くなるのを感じる。
感情が失われるのを感じる。
感覚が薄れて行くのを最後に、
僕の、ズリエルの身体はほどけて、
僕に、なった。
此処に居る。
呼吸をしている。
葛藤も忘れて。
ただの、花になって。
此処に、在るだけ。
確かに、この場所に、
シンプルな『僕』が存在する。
記憶を失う前の、ヒトデナシのズリエルでもなく、
花が咲いて新たに構築された半端で幼いズリエルでも無い。
ただの、僕が。ただのズリエルが居るだけなんだ。
その事実がどれほど安堵できる事か。]
【人】 お針子 ジリヤ[彼女の問いかけに、ぽつりと] (16) 2014/09/11(Thu) 02時頃 |
[だから、苦しくないんだ。
だから、苦しむ必要は無いんです。
消え去って、世の中から無くなった訳じゃない。
僕は此処に在るんですから。
それだけで、充分。
花は揺れるだけ。
喋りもしない、物も見ない。
古い記憶は空に舞い散った。
残った記憶も、いずれは散る
砂色の花が、咲いている。]**
─自室─
[朝露が一滴 花弁を濡らす。
ふわりと漂う花の匂い。
紡がれる旋律は何処か懐かしく。
ひとつ ふたつ
落ちていく律呂と引き換えに、花の匂いは増していく。
甘やかなそれでいて物憂げな芳香。
地に根を下ろしては、蕾を膨らませる風船は今にも空を飛びそうな色。
天に一番高い場所で開花する気配を感じながら一輪は、舞い散る音に雫を伝わせた。]*
【人】 お針子 ジリヤ だから、素敵な物語が好き (20) 2014/09/11(Thu) 02時半頃 |
【人】 お針子 ジリヤ[その問いには何が返って来たか (21) 2014/09/11(Thu) 02時半頃 |
メモを貼った。
【人】 お針子 ジリヤ[楽師の青年とは他にどんな話をしたか (23) 2014/09/11(Thu) 03時半頃 |
―ベッドに咲く花―
[自室のベッドに横たえられた、
少女の形をまだ少し残した花の群れ。
それは、今もまた、芽吹き、芽吹き、裂いて、咲いている。
こころ。
きおく。
記憶が留めた心。
心が留めた記憶。
たましい。
少女を少女たらしめるもの。
その中に『思い出』を抱いて。まだ"少女"は眠る。**]
【人】 お針子 ジリヤ あなたは…お好きなの? (31) 2014/09/11(Thu) 20時頃 |
【人】 お針子 ジリヤ そうね、嫌いなのは… (32) 2014/09/11(Thu) 20時頃 |
【人】 お針子 ジリヤ[根づいた雪の女王様も (33) 2014/09/11(Thu) 20時頃 |
メモを貼った。
【人】 お針子 ジリヤ[金色の妖精が中庭を去る姿を (52) 2014/09/12(Fri) 02時頃 |
―中庭―
[薄桃色から離れて蝶は舞う。
ひらり、ひらり。陽光を受けて。
感謝の心を表すように。ひらり、ひらり。]
[いつかの戯言を、覚えていてくれたことに。
冗句に交えた小さな望みを、叶えてくれたことに。
彼が僅かな残り時間を使って、それを為してくれたことに。
――風に、レースが、一輪の紫が揺れる。
“ ”―――……。]
[―――ありがとう。
――ありがとう。
…お礼に一つ。
叶わなかった想いが報われますよう。
運びましょう、貴方の想いを。
伝えましょう、その優しさを。]
―とある部屋―
[花の香に誘われ、ゆらり。ゆらり。
中庭の薄桃を離れた蝶は、白い風に乗って。
かつて親指だったはずの鴇色に。
右手の内と思しき紅鳶色に。
毟られた左胸の傷をそっと労わって、
――最後は、儚く揺れる蒼穹色に。]
[碧き蝶は勿忘草に囁めく。
朱色に散った、心優しい男の最期を。
彼がここへ運ぼうとしていた品のことを
届けたかった想い、その願いの欠片を
[白き風に乗って、中庭の花弁が舞い込むことはあるだろうか。
――嗚呼、蝶には望むべくもない。
囁き伝えることはできようとも、彼を運ぶことなど。
けれど。願うくらいはできよう。
花となった彼らが、共に調べを奏でられますよう。]
―回想・蝶は歌う―
ああ、……―――
[引き千切られた花を、悼む言葉を上げかけて。
けれどその行為は、決して負感情によるものではなかったから。
…言の葉は形にならず、口元に緩やかな弧を描く。
ギターを弾くのに邪魔だから。
そうして楽しそうに、嬉しそうに。
ただそれを掻き鳴らす青年を前に、小言なんて。]
―――いいね。
ギターを弾くのは楽しそうだ。
…楽しそうだ。実に。
[呟くように漏れた言葉は、感慨を込めて。
幼い頃、歌を口遊むのは好きだったけれど。
楽器を手にする機会は、終ぞなかったから。]
「あんたも弾いてみる?」
[ギターの音に紛れても、彼の耳には届いていたらしい。
少し迷いながら、困ったように笑い、問いを返す。]
可能であれば、是非。
ただ、
……右手だけで弾ける曲はあるかな?
僕の左手は、今はもう、動かせないから。
ここまで生やす前にお願いすべきだったな……
【人】 お針子 ジリヤ 青い鳥はこんなに近くにいたのね… (54) 2014/09/12(Fri) 03時頃 |
[――久々に。
ほんの少し、後悔した。
新しいものに触れることは、好きだった。
今までにない経験。発見。喜び。
楽器を演奏することも、嗚呼、きっと楽しいに違いない。
けれど、もうそれは叶わない。
この左手は、"彼ら"の為に捧げたのだから。
心と身体を失うことも、忘れゆくことも、
全て受け入れた上での選択。
花を愛で、ここで育てることを後悔したことはないけれど、
……こうなる前にもう少し、もう少し。]
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