166 あざとい村
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[セシルの面立ちは、亡くなった母親によく似ている。 長い睫毛も、切れ長の目も、真っ直ぐに伸びた鼻梁も。
シルキス一家がアオイの家の隣に引っ越して来た時 既にセシルの母親はこの世に居なかったから アオイは写真でしかその顔を見たことはない。
しかし今のように憂いを帯びた表情を浮かべると 写真の母親そっくりに見えるだろう。
子供の頃、人狼に殺された母親そっくりに──。]
(99) 2014/03/05(Wed) 14時頃
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[男手一つで、 仕事をしながら息子を育てる父の負担を減らしたくて、 中学生になると、セシルは一人で台所に立つようになった。
今でこそ、下手な主婦にも負けない腕前を持つに至ったが 最初は焦げた目玉焼きだの水っぽい生煮えカレーだの、 完食が難しい散々な出来栄えのものばかりだった。
見かねたアオイの母親は セシル達親子によく手料理を作って来てくれて おかげで栄養面では随分と助けられた。
最近ではアオイが差し入れを持って来てくれることもあり その味は、母親に似ていると思う。
セシルは、スクミズ家の親子にはとても感謝しているのだ。]
(100) 2014/03/05(Wed) 14時半頃
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[普段は揶揄ってばかりのアオイを その実セシルは誰よりも気に掛けている。
さり気なく見ているから、わかる。 アオイが最近になってスカートを履き出した理由も、 その視線の先に誰がいるのかも──。
──それでも、もし。 アオイとカイル、 どちらかしか助けられない状況が来たら──]
(僕は迷わずアオイを選ぶだろうな)
[一瞬、伏せた瞼の下でそんなことを考えるが、 言葉にはせずフルートケースを抱え直し、 弾むような足取りのアオイを追ってセシルも歩き出した。]
(101) 2014/03/05(Wed) 14時半頃
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─ 放送室 ─
[放送室の入り口には、 使用中かそうでないかを示す赤い表示ランプがある。
今、そのランプは点灯していなかった。
目でそれを確かめ、 ノックもなしに分厚い扉を開けて中に入るカイルを咎めず アオイを先に中へ入らせると、 廊下の両端に一度目を配り、扉を閉めた。]
(102) 2014/03/05(Wed) 14時半頃
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……ダン先生達が来た痕跡もないな。
[現場を調べるカイルに続いて ゴミ箱の中や機材の端に 置き忘れた物やゴミがないかを確かめたが、 それらしい物は何も残っていなかった。]
放送か──それ、いいアイデアかもね。
もしかしたら入れ違いで体育館に戻ってるかもしれないけど、 その時はその時だ。
[カイルの提案>>74にあっさりと頷き 機材のスイッチを入れて行く。]
(103) 2014/03/05(Wed) 15時頃
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確かこれで……マイクのスイッチをオンにすれば、 全校に声が届くはず。
[アオイかカイルか、 どちらが放送するかで一悶着あっただろうか。
二人の様子を面白そうに眺めながら ガラスに背を預けて放送を待った。]
(104) 2014/03/05(Wed) 15時頃
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……どうだろうね。
[振り返ったアオイに、思案気な声を返す。]
戻ろうか。 何とは言えないけど、少し、嫌な予感がする───。
(105) 2014/03/05(Wed) 15時頃
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[体育館へ戻る道中も、 セシルは窓の外や教室を覗き込んだりしていた。
いつもの浮かべている涼しげで余裕のある微笑とは 打って変わった真剣な様子。
時折親指で唇に触れるのは、考え事をしている時の癖だ。]
(108) 2014/03/05(Wed) 16時半頃
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─ 体育館 ─
[取り立てて異常事態に遭遇するでもなく 体育館までは無事に戻って来れた。
扉を開けて中に入ると 出る前より大きくなったざわめきに、ダンの不在を察する。]
ヒュー、アオイの放送聞こえた?
[念のため、ヒュー達の元へ行き、 声が届いていたかを確かめる。]
……そう。
[返事を聞くと、難しい顔で黙り込んだ。]
(109) 2014/03/05(Wed) 17時頃
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ダン先生は放送室にはいなかった。
しかも──…
[一旦言葉を切り、 目だけを動かし、声を潜める。]
──少し、おかしい。
(110) 2014/03/05(Wed) 17時頃
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放送室に行く途中で気づいたんだけど、 グラウンドで朝練してた生徒が消えてた。 帰りにいくつか教室を覗いていみたけど、そこにも誰もいない。
もしかしたら──、
今、この学校で人がいるのは この体育館の中だけかもしれない。
[潜めた声はしかし、ヒューの近くの生徒には聞こえただろう。]
一旦手分けしてダン先生を探した方がいいかもな。
僕は一度残ってる先生に相談して来る。 少し待ってて。
(111) 2014/03/05(Wed) 17時頃
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セシルは、そう言い残して、教師の所に向かった。*
2014/03/05(Wed) 17時頃
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[事情を話す前にヒューに招かれ、 少し離れた位置へ。
しかし、変に伏せても不安を煽るだけだと、 二人の様子を見ていた生徒には 見て来たことを告げる。]
逃げる──か。 ……うん、その方がいいかもな。
あ、でも待って。 確かギネス先生はまだここに残ってたよな。 勝手に逃げないで指示を仰ごう。
(113) 2014/03/05(Wed) 19時頃
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[歩き出してすぐ、セシルは気付いた。 ステージ裾に控えていたはずの教諭の姿が見えない。]
───…。
[ステージに続く、外からは見えない場所や 放送用の小部屋も覗いたがやはりどこにもいなかった。
ギネスを探しまわるセシルの姿は ヒューや、その他の待機している生徒達にも見えるだろう。]
(124) 2014/03/05(Wed) 21時頃
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[体育館を横切りヒューの元に戻りながら、 首を振る仕草でギネスの不在を告げる。]
いない。
仕方ない、外に出よう。
(125) 2014/03/05(Wed) 21時頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2014/03/05(Wed) 22時頃
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[ステージに駆け寄り、タンッと床を蹴って壇上に上がる。
視界を確保し、高いところから眺めた体育館のどこにも、 教師はおろか、ヒューの周りの生徒以外見当たらない。
サイモンがヒュー達に話す声が微かに聞こえて来る。
ステージの角を蹴って颯爽とヒューの元に駆け戻ると──]
(133) 2014/03/05(Wed) 22時頃
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[スパァァァン!!
──と、丸めた楽譜をサイモンの後頭部に振り下ろした。]
(135) 2014/03/05(Wed) 22時半頃
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すみません、手が滑りました。
[にっこり──と、邪気のない爽やかな笑みを浮かべながら、 伸ばした楽譜をキャリーケースにしまう。]
(141) 2014/03/05(Wed) 22時半頃
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[楽譜をしまったキャリーケースの中から 財布だけ取り出して後はその場に残し、 持ちっぱなしのフルートケースは肩に掛けて立ち上がる。]
僕が先頭だったな。 行くよ。
──の前に、
ロビン、荷物が多い。 最低限の貴重品のみって言っただろ。
(149) 2014/03/05(Wed) 23時頃
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本当の非常事態だと思って、リーダーの言うことを聞いて。 今は──…
[ちら、とサイモンを見]
最年長のヒューがリーダーだ。
[言い切った。]
言うとおり、今は本当に大事なものだけ持ってここを出る 残りは後日、安全が確認できたら取りに戻るから。
……いいね?
[ロビンと、スーザンを見て、 最後は声を和らげる。
恐らく、荷物の殆どはスーザンのものだろうと見当はついた。]
(155) 2014/03/05(Wed) 23時頃
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[>>153素直なスーザンの返事を聞き、 その判断の早さに頷きつつロビンを見ると、 ロビンも小さなポーチに詰め直しているところだった。
スーザンの再度の了承>>161を得て、 ヒューに目配せをすると 言われた通り先頭に立って、歩き出す。
渡り廊下から繋がる扉ではなく、 直接グラウンドに通じる鉄の扉を開け、振り返って声を発する。]
ここから外に出よう。
(164) 2014/03/05(Wed) 23時半頃
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[アオイの顔色が優れない>>163のは見て取れた。 けれど、今は殿のヒューを信じて先を急ぐ。
グラウンドを横切ってまずは校庭の端へ。
そこで全員が集まるのを待ち、ネットを支える鉄柱の横から 敷地の外に出ようとして───]
(167) 2014/03/05(Wed) 23時半頃
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[バチィッ──!!
鋭い音と共に、セシルの身体が後方に弾かれた。]
…──え、
[芝生に尻もちをついて、呆気にとられたように前を見る。]
(168) 2014/03/05(Wed) 23時半頃
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[激しい音と光の割に、 痛みもなければ、着ている服に焼け焦げたような痕もない。
膝に手をつき立ち上がると、 もう一度、今度は右手だけを敷地の境界に伸ばした。]
(170) 2014/03/05(Wed) 23時半頃
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[バチバチバチッ!!!
再び青白い閃光と、雷が放電するような音が上がり、 セシルの右手は反発する力を受けて内側に弾かれる。]
…──ッ、 ……
[それ自体に攻撃的な力は込められていないようだが、 弾かれた勢いで肩を捻り、小さく呻く。]
(172) 2014/03/05(Wed) 23時半頃
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結界──か?
[捻った肩を左手で抑え、軽く揺らして調子を見ながら呟く。 肩は動かないことはないが、幽かな痛みが残った。]
…──シノン!?
[ふらり──>>175 倒れこむシノンに手を伸ばすが、一歩及ばず カイルによって大事を回避出来た様子にほっとする。]
シノン、大丈夫? ……シノン。 シノン?
[倒れたシノンを抱き起こし ぺち、と頬を軽く叩いてみるが、反応はないようだ。]
(180) 2014/03/06(Thu) 00時頃
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僕の手は大丈夫。 音と光は見た目だけで、 実際は熱も電気も通ってないみたいだ。
ただ、結構な力で弾かれるからここから出るのは無理だな。
[>>179ジリヤに問われると、シノンを抱いたまま顔を上げて 混乱を落ち着かせるように状況を説明する。]
(181) 2014/03/06(Thu) 00時頃
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[>>185頭上高く、青白い火花が散った。 弾かれた石が、少し離れた所にカランと音を立てて落ちる。
>>174スタンロッドを構えたヒューの問いに、しばし迷う素振り。 他の生徒達の推測>>186>>188が聞こえると頷いて見せ]
──だな。 多分無理だろう。 けど、一応校門の方にも回ってみよう。
皆も適当に石を拾って、 通れそうだと思う場所があれば投げてみて。
ただし、物体を弾く力は相当なものだから 自分の方に返って来ないように角度は考えて。
[シノンの膝裏と背中に腕を差し入れ、 所謂『お姫様抱っこ』の形で抱き上げると、 人一人抱えているとは思えない足取りで校門を目指した。]
(191) 2014/03/06(Thu) 00時半頃
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セシルは、カイルの提案に足を止めた。
2014/03/06(Thu) 00時半頃
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どっちか…──?
[含みのある、強張った笑顔>>192]
───…。
[セシルは珍しく、不機嫌そうに目を細めた。]
……カイル、シノンを抱えて走れるか? 出来ないなら口を挟むな。
ケースも自分で持てる。 というより、これは他人(ひと)に預けられるものじゃない。 僕の武器が入っているやつだから。
(196) 2014/03/06(Thu) 01時頃
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[言い終わると、チラリとアオイを見遣る。
今のカイルとのやり取りを、アオイが聞いていなければいいと。]
(197) 2014/03/06(Thu) 01時頃
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発動条件は人狼の出現─── だろ?
[>>195>>200二人の会話を引き継ぐように 重々しいテノールが、告げる。]
(202) 2014/03/06(Thu) 01時頃
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セシルは、アオイが気付いていない様子にほっとした。
2014/03/06(Thu) 01時頃
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