20 Junky in the Paradise
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[ぐちゃり。 振るった拳は化け物の──女の腹部に突き刺さる。太く重い腕が与えたのは内臓まで届く衝撃。]
お前が、お前が、お前がっ……! がぁっ!?
[二発。三発。当たろうと当たるまいと関係なく振るう腕。 不意に、防戦一方だった化け物が、その細い腕をこちらに伸ばして攻撃してきた。堅い何かが左目に当たり、思わずよろめく。]
ちくしょう、化け物、盗人、女王蟻め、あの虫が……っ!
[誰かの叫びが耳に残っていたのか。支離滅裂な設定がどんどんと哀れな女中へ付加される。揺れる視界。あれは敵。倒すべき敵。]
(21) 2010/07/10(Sat) 21時頃
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待ちやがれぇえっ!
[驚くほど俊敏に──狂った感覚のせいでそう思える──逃げていく化け物を追いかける。]
何が女王だ、エイリアンめ!
[大きく足を踏み出したとき、急に衝撃が走った。雷に打たれたような衝撃。]
……なんだ、これ。
[足下を見る。そこにあったのは、騎士の剣。 手に取ったそれは、昔から体の一部だったようによく馴染んだ。]
そうだ、俺は、騎士様だ。
[コロシテ、ハヤクアイツヲコロシテ。耳障りな音を立てる化け物を視界にとらえ、浮かべたのは残忍な笑み。
……女中の投げつけたワイン瓶に足下を取られ転んだ男は、そのワイン瓶を握りしめて、女中に襲いかかった。]
(22) 2010/07/10(Sat) 21時半頃
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[瓶の割れる音。きらきらと砕けた破片は、彼女が求めてやまなかった宝石のよう。
そして、ぐしゃり。
再度振り下ろされた割れた瓶は、彼女の主要な血管を、いくつも傷つけた。
……がしゃん。ぐしゃり。ごきゅ。ざりり。
振り下ろすたびに変わる音。それを聞くことが目的であるかのように、何度も何度も、無心に凶器を振り下ろし続けた。]
(23) 2010/07/10(Sat) 21時半頃
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[……どのくらいの時間がたったのか。砕けた瓶が更に割れ、原型をとどめなくなったころ。]
ん? ライター?
[ふと、悪友の言葉が耳に入って顔を上げた。ぱたぱたと体をまさぐる手からは瓶が離れ、ごとりと落ちる。]
あったぞライター。何お前なんか吸うの? ジョイントなら俺にもくれよ。
[ひょいと立ち上がったその手からは、ぽたりぽたりと赤。女の血と人の脂にまみれた手で差し出すから、ライターはぬるぬると滑る。]
(26) 2010/07/10(Sat) 23時頃
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>>29 汗?
[ライターを手渡して、自分の体を見下ろす。]
……なんじゃこりゃ!?
[汗だくどころか血まみれであることにようやく気づいて。動揺した声を上げた。両手を慌ててズボンでぬぐえば、ワイン瓶の破片で傷つけただろう、右手の大きな傷に気がつく。]
……あー。飛んでる間に切ったか。前も起きたら擦り傷まみれだったしなー。つか汗ならお前もだろうよ。
[だめだよなー、と苦笑する。薬を使えば脂汗に濡れるのはよくあることだから、何も疑問は感じずに。]
んでもってさー、サイモンしらね? せっかくだしポンプとか試してみたいんだけど見つからなくて……
[自分で聞いておきながらスティーブンの話を聞かずに尋ねる。その声は彼に届いたか否か……どちらにせよ、答えを認識する前に、スティーブンがライターを取り落とした。 ……ヘクターの愛用は、無骨なジッポーライター。蓋を閉めない限り、火はついたまま。]
おう、何々、バーベキュー? 豪勢だなぁ!
[げらげらと笑うヘクターの足下で、火は燃え広がる。]
(79) 2010/07/11(Sun) 21時頃
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おっと。
[めらり、燃え上がった炎をよけた。けれどスティーブンのほうはそうはいかなかったようで、燃え移る火。燃え広がる白衣。]
あははは! すげーなお前ファイヤーダンス? 隠し芸?
[けたけたと。現状を把握していないのんきな笑い声。 マーゴが近づいてきても、悲鳴が聞こえても。……だっていつものパーティで、混乱した誰かが悲鳴を上げることなんて、しょっちゅうだから。 ヤニクが手伝ってと声を上げているのを見ても、なにを大げさに騒いでいるのだろうと。]
あー。バーベキュー。ビール飲みてぇ。
[あたりを見回して冷蔵庫を見つけると、軽い足取りでそちらに近づく。]
あった。
[肉の焼けるにおい。髪の毛と衣服の燃える焦げ臭いにおいには眉をひそめたけれど、それも一瞬。ぷしゅっとビール缶を開けてしまえば、忘却の彼方。]
(80) 2010/07/11(Sun) 22時頃
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[鳴り響くのは男の聞きつけないクラシック。ぐびぐびと喉をならしビールを飲む。]
……あー。うめぇ。
[ふぅ、とため息をついて。鳴り響く音の中、怒声が混じっていることに気づく。]
なに喧嘩してんだか。
[こういう時は頭から水をぶっかけてやるに限る。そう思って冷蔵庫をあさる。 その手がふと、内側の壁に貼り付けられたビニール袋に触れた。ガムテープで無造作に貼り付けられた袋をはがせば、その中には注射器。]
ぶっは、こんなところに隠してやがったのかよ。あいつ形から入るタイプだな−! なぁスティーブン。……あれ?
[話しかけてやっと、悪友が近くにいないことに気づいた。]
あー。どこ行ったんだあいつ。やり方聞こうと思ったのに。
[水に溶かしてスプーンの上であぶり、殺菌してから脱脂綿に吸わせ注射器に入れる、そんな手順を見たことがある気がするけれど、ふやけた脳ではうまく思い出せなくて。男の手には少々小さい注射器を困ったようにもてあそんだ。]
(103) 2010/07/12(Mon) 00時頃
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おーい、スティーブン? つーかこの家広すぎるだろーよおい。
[今この瞬間友人たちが殺し合いをしているとは夢にも思わず。じゃれあってるやつらがいるなー、程度の認識。のんきな男はマイペースに酒をあおっていたが。
マーゴの投げたガラス片が目前をかすめれば、表情は一変する。]
うぉあっ!? あぶねーだろうがおい!!
[マーゴと誰かがむつみあっているように見えたけれど、はた迷惑だと感じればお構いなし。冷蔵庫の水差しをひっつかんで、ずかずかとそちらに向かう。]
どういうプレイしてんだお前ら! あぶねーんだよ!!
[派手にぶちまけられた水は二人の頭を冷やしたや否や。]
(121) 2010/07/12(Mon) 11時半頃
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