43 朱隠し
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[供物台の傍の松の木の根元に、アヤカシの姿は在った。
ぐったりと疲れたように座り込み、額から浮かぶ汗を拭う事もせずに、肩で呼吸を繰り返していた]
……無事、行ったよう、だな。
[二つの世界を繋ぐ門を開いた後、 慣れ親しんだ同胞と懐かしい友の気配がその向こうへと渡るのを感じた。 無事に二人は渡れたのだと知り、辛そうにしつつもその顔には微かに笑みが浮かぶ]
(0) 2011/02/18(Fri) 10時半頃
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しかし……さすがに、疲れたな。
[天を仰ぎ、ぽつりと呟く。
一度にこんなにも門を開く事等なかった故に、 たび重なる力の行使は、アヤカシの身体に大きな負担を与えていた]
(1) 2011/02/18(Fri) 10時半頃
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少し休んだ、ら……あいつを迎えに行かないと。 約束、した、から――……。
[兄に会えると希望に胸を膨らませていた少年の顔が目に浮かぶ。 己が為す事は、あの人の子を希望を打ち砕き、絶望へと導く事と変わりないのに。 結局最後まで其れを告げられそうになかった。
自身に気づいて欲しいと、其の断片を与えたけれど。 たった一つの生きる縁に、あの人の子はその事実へと至る道を見ようとはしないだろう。
それが酷く憐れだった――]
(2) 2011/02/18(Fri) 11時頃
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いっそ、俺が喰ろうてやった方が良いのかも知れぬ。 兄に逢えると希望を抱いているうちに。 兄に捨てられたと、絶望に蝕まれる前に。
[だけどそれは]
約した言葉に、違反するか。
[苦く、呟く]
(3) 2011/02/18(Fri) 11時頃
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…………嗚呼、侭ならぬ。
[ぽつりと呟き、ゆっくりと眸を閉じる。 ぐるぐると巡る想いは在るけれども、今は休息を必要としていて。
姿を消す事も忘れて、少年は眠りの縁へと落ちて行く]
(4) 2011/02/18(Fri) 11時頃
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ウトは、眠りに落ちるその瞬間、目蓋の裏に浮かぶのは――…?
2011/02/18(Fri) 11時頃
楽士 ウトは、メモを貼った。
2011/02/18(Fri) 11時頃
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[自分を呼ぶ聲に、ふるりと長い睫毛が震える]
…………ここにいる。
[応える聲は何時になく弱々しい]
(6) 2011/02/18(Fri) 11時半頃
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何もない。 少し疲れているだけだ。祭りも今日で終わりだからな。
[ちらりと供物台へと赫をむける。 からからと回る風車は旧知の友が置いて行った渡りの、神隠しの印。ふ、と笑って。 それから差し出される包みの横に添えられた徳利に、不思議そうに見詰める]
……これはなんだ?
(8) 2011/02/18(Fri) 12時頃
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[続いて聞えてきた声に、其方へと顔を向けて]
どうもしないさ。 祭りではしゃぎ過ぎて、少し疲れているだけだ。
[その頭に犬の面があるのを見て、僅かに眸かに細くなる。 定吉の名前が出れば、ふんと鼻を鳴らし]
……せっかく人の世に戻れたと謂うのに、莫迦な奴よ。 また我らと共に在るを望むなんて、な。
――お前も、行きたいのか? 其の面を被り、俺たちと同じように。
(10) 2011/02/18(Fri) 12時半頃
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……来年、俺が村に降りてくるとは限らぬぞ? お前との約束を反故にするやもしれぬ。それでも良いのか?
[目を閉じたままの少年へそう答えて。 よいしょと呟きながら、立ち上がる]
(12) 2011/02/18(Fri) 13時頃
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……昨日お前に渡した面、持ってきているか?
[口角を上げる少年にアヤカシはぽつりと告げる]
(15) 2011/02/18(Fri) 13時頃
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[目を伏せる明之進を見た後、小さく息を吐く。
本音を謂えば、連れて行きたい。 触れて、抱きしめて。其の身を全て愛して喰らえば、 あの綿飴のように、ほんのりと甘く、包んでくれるだろうか。
そんな想いが胸をよぎる]
――俺は…。
(17) 2011/02/18(Fri) 13時頃
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[笑う少年に、こちらも吊られて笑みがこぼれる]
……其の酒と握り飯を一度置け。 あの面がないと、契約が出来ぬ。
[明之進への確認は、 黙し、その先を待っている]
(19) 2011/02/18(Fri) 13時半頃
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ウトは、明之進の言葉にふわりと笑む。其の笑みは綿飴よりも甘く、淡く――
2011/02/18(Fri) 13時半頃
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必ず来年、お前を迎えに来る。 一度交わした約条を俺は違えぬ。
……面を取れ、人の子よ。
(24) 2011/02/18(Fri) 13時半頃
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[少年が吐き出す言葉には、 アヤカシは応える事が出来なかった。
ただそれが肯定の代わりになる事を、この聡い少年には伝わるだろうか]
…………人の子が里よりも戻れば、里の事を忘れてしまう様に。 アヤカシも、人の世界の事を忘れる事もある。
(26) 2011/02/18(Fri) 13時半頃
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[アヤカシの身なれば、涙に震える少年の其の華奢な身体を抱きしめてやることも出来なくて。 アヤカシは唇を噛んだ。
山の神だと崇められたとて。 此の身に出来る事等、ほんの矮小に過ぎないと、 嫌と言うほどに思い知らされて]
―――すまぬ。
[己が少年に掛けられる言葉は、 たった一つしか見つからなかった。
(27) 2011/02/18(Fri) 14時頃
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[地へと置かれた面を取る。 少年が厭わねば、それを彼の顔へと被せて]
俺も。 お前が握り飯を持って訪れるのを、何時の間にか楽しみにしていた。
[直接触れる事は出来なくても、こうして面越しならば。 少年に己の温もりが届くかもしれぬと信じて]
……眸を閉じよ。
(30) 2011/02/18(Fri) 14時頃
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―――……お前たちは、本当に。
[声に出さずに、何かを呟いて。 アヤカシは面越しに、少年へと口接けを落とす。
固い面越しであっても、 其の想いは確りと、胸の裡に収めて]
(32) 2011/02/18(Fri) 14時半頃
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お前の想いが変わらぬならば。 何時か必ず、迎えに来よう。
兄の事など忘れて、俺だけでその小さな胸が満たされた其の時に、 お前を人の世から浚いにくると、この面に誓おう。
[ゆっくりと顔を離し、甘く笑んで]
約束だ。
(33) 2011/02/18(Fri) 14時半頃
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この赫い目をそう喩えたのは、お前が初めてだ。
[笑んだまま、ゆっくりと身を離す。 其の動きに合わせて、りんと。微かに響く、鈴の音一つ]
(36) 2011/02/18(Fri) 14時半頃
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―――…ああ。 その握り飯を喰らいに、また訪れよう。
お前の握る飯の味は、忘れられぬから。
[こくりと頷き。 アヤカシはもう一つ身を離す。
これ以上、言葉は不要。 りん、という鈴の音だけがちいさく響いた]
(38) 2011/02/18(Fri) 14時半頃
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[駆け下りて行く背中を暫し見送って]
―――……。
[ゆるり、明之進方へと振り返る]
では、参ろうか。
[アヤカシは一言、そう告げて。右手をそっと*差し出した*]
(41) 2011/02/18(Fri) 15時頃
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楽士 ウトは、メモを貼った。
2011/02/18(Fri) 15時頃
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