94 眠る村
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[ハナの最後の呟きを背で聞き、男はそのまま宿を後にする。
約束どおり、決して誰も読まぬうちに。 眠らぬうちに、その本を灰に帰し、 霧に巻かれる前に、恋人の元へ戻る為に――]
(1) 2012/06/17(Sun) 23時半頃
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―― 雑貨屋 ――
[ひとり訪れる雑貨屋。眠る飴玉の甘い香りが微かにする。 整えられた部屋は、シーツの清潔な匂いがした]
…。
[小脇に抱えた小さな木箱。 手にした日記帳の表紙だけを目がなぞる。 異母兄を指差した日のことも書かれているかもしれないそれを。 季節外れの暖炉にくべる。
ぱちぱちと小気味の良い音を耳に。 紙片が黒く舞い燃え尽きるのを待つ間、
男はシャツの匂いを嗅ぎ、眉根を寄せる。 火かき棒を持った腕が、ざざりと顎のしたを拭う]
(8) 2012/06/18(Mon) 00時頃
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――――。
[全てが燃え尽き、燻る灰に水をかけた。
雑貨屋を出れば一度水車小屋の方を見るも、 茜の名残の反対側。群青の空の下。 すでに森は黒く塗りつぶされている。
男はそのまま宿へと急ぐ]
(13) 2012/06/18(Mon) 00時頃
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[夜闇の向こうから這い寄る霧。 その気配と眠気から逃れるように走る男が、叫び声に顔を上げる]
――――!
[半ば朦朧とする意識が反応を遅らせ、 目指す宿から飛び出してきた影とぶつかった]
っ、クラリッサ…?
[ふわりと、せっけんのいい香りがした。 一瞬、目が合ったろうか。 次の言葉を紡ぐ前に、首筋に触れる冷たい霧の気配]
霧に、まかれる。
[伸ばした腕は僅かな間宙に留まれど、 彼女が立ち去るのが先か、男が腕を引っ込めるのが先か、 男は一人、開け放たれたまま灯りの漏れる宿へと駆け出す]
(26) 2012/06/18(Mon) 01時半頃
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[駆け込んだ勢いのままに恋人の体を抱き上げれば、 かろうじて宿の一室へ運び込めるだろうか。 ベッドに彼女の体を投げ出すようにして、男の体も崩れ落ちた*]
(27) 2012/06/18(Mon) 01時半頃
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―― 朝 ――
…?
[寝起きの口内が乾いていた。 未だほのぬくいシーツよりも熱いおんなの体が押し当てられる]
…そんな、ことは―― ン
[言葉ごと、唇を塞がれた。 止めた息のせいだろうか、男の眉根が悩ましげに寄る]
…、…。
[離れ行く唇のふくらとしたかたちから目を逸らせず。 喉仏がこくりと、ちいさく鳴った]
ローズ…
[いつもと同じ、恋人の頬を包む手のひら]
(64) 2012/06/18(Mon) 21時半頃
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[こんな時に、だとか。 あのひとたちとちがうから、 そういう事は、結婚をしてからでないと。だとか。 しばらくからだを拭いていないから、 ひどく、臭うのではないかとか。
頭の片隅でそんな事を考えながら、 じりじりと燻る熱を持て余し、親指の腹が女の唇をなぞり擽る]
(65) 2012/06/18(Mon) 21時半頃
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…。
[上唇のりんかくをなぞった指先は微かに震え。 彼女の瞳から逸らされたままの眼差しは熱を孕む。 そうして、 一度触れてしまえば。離れ難く。 吐息も熱も柔らかな肉も、隙間なく埋めたがる欲求に抗えない。
いつか、その薬指に輪を嵌めるまではと。 そんな、ありふれておだやかなしあわせのかたちなど。
――こないのだろうと。
差し入れた鎖骨のくぼみ。 男の手が、果実の皮を剥くように、女の乳房を露にした*]
(66) 2012/06/18(Mon) 21時半頃
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[再び目を覚ました時、恋人の姿は部屋に無かった。
床に脱ぎ捨てた上着が絵に描いて異臭を放っているようで。 男はしばしうらめしげにそれを見ていたが、結局は袖を通す。
閉ざされた扉の向こうから、人々の話し声が聞こえる。 長く、瞑目の間を置いて、部屋を後にした]
――…、
[男が姿を現した時、クラリッサとブローリンがそこに居て。 ティモシーの姿を少しの間遠くから眺め、居ない者を視線が探す]
(73) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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[ " ごめんなさい " ]
[そう、かたどった唇が、こんな時でもあたたかな茶を手に戻り。 何も言わずそのうちの一つを手に取ると、 口も付けず人狼と告げられたクラリッサを見る]
(78) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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[隣に立つローズの言葉に男の視線は一度、恋人へ>>82]
…。
[クラリッサは、ただの儚げな女性に見える。 空気を震わす音は、その音のままに耳に届き。
わかっていると。 固く握られた恋人の手、 ゆるやかに目を閉じるのはほんの一時。彼女の手に手を添える]
(91) 2012/06/18(Mon) 22時半頃
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ケヴィンは、ブローリンが、聴こえた声と真逆を言うのに、彼を見て。
2012/06/18(Mon) 22時半頃
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[ブローリンが自分の名を挙げても、男は反応を示さない。
ただ、恋人が違うと断言した時か クラリッサが微かな声を漏らした時か。 男の双眸が歪に細められた]
(104) 2012/06/18(Mon) 23時頃
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他の、誰にも判りはしない――… ただ
[男の言葉は、青い焔の燃える音にかき*消された*]
(119) 2012/06/18(Mon) 23時半頃
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