254 東京村U
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[ここにいたい。東京がいい。という声に、ふと駅前でよく叫んでいる男の言葉が重なった。出られない街の話。地方から人を吸いこんでは、膨らんでいく都市、東京。]
出たかったり、出たくなかったり、 人って、いろいろねえ
出口も入口も、名前が違うだけかもしれないのに
[ふと、そう独り言のように、声が零される。一瞬だけ、ふっと目が遠くを見た。どこか無個性で、淡い印象がさらに掴みづらいものになる。]
(238) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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そうねえ。
[ただ、それも一瞬のことだった。困ったように息が吐き出されるころには、そこに座っているのは確かに不動産屋の女だった。]
ここにいたいってお伝えしてもだめなら、 何か、あちらが納得するような理由でもあれば いいのかもしれないけれど──
ああ。そうそう飴。 答えてもらった人にお礼としてって思ってたの
[そう言って、仕事用とは別の紙袋から飴玉を出した鈴里は、東蓮寺に食べるかしら?と、フルーツ味のキャンディを差しだした。ぶどう、レモン、いちごとベタに各々の味を示すらしい安っぽい単色小包装には、「硯友社」と団体の名前が印字されていた。]
(239) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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◆ 希望調査アンケートに ご協力 ください
(240) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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─ 回想:某日・新宿駅前 ─
[アンケートにご協力いただけませんか。お時間はいただきません。簡単なものですので。]
あら、いいの? ありがとう
[そんな勧誘がすっと通るようなことは珍しく、駅前でアンケートを配っていた女は申し出に嬉しそうに顔をほころばせた>>141。]
(241) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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[服装の違いからか、以前にあった驚きや不安や怖がるような表情や──必死さのようなものが、なかったからか>>106、以前に不動産屋を訪ねてきた少女の名前が出されることはなかった。]
……。そう。 そうよねえ 「自分」って、難しいものね
[アンケートの用紙を見下ろして、女は小さく微笑み。ありがとう。と感謝の言葉と一緒に、よければ。と「硯友社」の名前が入った飴玉をどうぞ。と手のひらに握らせた。
白い紙が、青いファイルにしまいこまれる**。]
(242) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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おや、同郷か。 と言っても、俺は塩竈だけどね。 実家が神社……っても塩竈神社みたいな大きいとこじゃないけど。
[仙台出身と言われると微妙に頷き難かった。 やや絶妙な表情をしていると、ダンボールに書かれた文字(>>233)が目に飛び込んできた]
ヤヘイ……。
[その名前に目が止まった。 噂の渦中の人物の名前。そして、自らも情報を求めている名前だ。 ダンボールに書かれていた電話番号をメモした。 と、同時にスマートフォンが振動する]
(243) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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─ 正午過ぎ:新宿・鉱石店 ─
[プラスチックを塗り染めたような真っ青なファイルから白い紙をとりだした女は、軽い許諾にぱちんと手を打ってうれしいわ。とごく素直に喜ぶような表情を見せた>>161。 マットな黒い爪をもった青年の──身体同様に、細くはあっても骨ばって男性的な指に、奇妙なアンケートが手渡された。]
(244) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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お守り……そうね、 幽霊なのか、それとも、別の何かなのかはわからないけれど わからないなにか、って、 とってもオカルトかもしれないわねえ [>>162 反復される言葉と問いに返す声は笑っていた。 石には特別な力がある──なんていうのも、そもそもオカルト的だ。いっとき流行ったゲルマニウムなんかも疑似科学の域を出ない。けれど、それを信じる気持ちには言葉で言い表せない隙間がある。気をひかれずにはいられない暗がり、わからないもの。ブラックボックス。]
あなたも、興味があるの?
[オカルトに。と、逆の問い返しをして、 眼鏡の女はふふっと笑った。]
(245) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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わたしね。
あんまりこれも人にいうと引かれちゃうんだけど。 結構好きで、信じてるの
[話しながら、水晶のうちの一つを手に取る。怪談や幽霊話や都市伝説や妖怪の寓話は、昔から好きだった。UMAや、ネット上で語られるロア。特に、体験談風の怪談は、一見人工の明かりにかき消されてしまった怪異譚の息をひそめた息づかいを身近に感じられるようで、どきどきしたものだった。]
(246) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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[思い出すと、少し苦笑が浮かびかけた。 昔のほうが、そういうものを隠さず信じていた。
陰気臭い、教室の隅にいるような、うつむきがちで、おおぶりの眼鏡で顔を隠したぼそぼそとしゃべる子どもだった。 親がカルトに入っていると、そういう噂が立っていて、それがいっそう回りから孤立させていた。
「みょんこ」 というのは当時につけられた名前だ。
「妙な」をもじってつけられた、少しの悪意を含んだあだ名。]
(247) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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[ペンの音が途切れたのを見計らって、青年へと振りむく。薄く白い紙を受け取って、通りすがりの女はにこにこと笑った。]
ありがとう。
……なにか、音楽をやってるのかしら? だから爪を塗っているの?
[紙を丁寧に青いファイルに仕舞ながら、書かれた内容に対してそう尋ねる。あまり音楽には詳しくないけれど、そういう人もいるって聞いたことがあって。と水晶のひとつをもってレジに向かう途中で、女は聞いた。]
(248) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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あれ、入間さんだ。 ごめん、ちょっと仕事の電話だわ。
[画面に表示されたのは『入間翔子さん』。 何度かアンソロジーの執筆依頼を受け、書かせてもらっている。 昨日もまだ正式な決定ではないが、執筆依頼があるかもと電話をもらったところだった。 少年に断りを入れてから、電話(>>229)を取る]
はい、もしもし。
(249) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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キルロイは、イルマに話の続きを促した。
2016/09/28(Wed) 22時頃
キルロイは、みょんこに話の続きを促した。
2016/09/28(Wed) 22時頃
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(お願いっ、日本人で日本人で日本人でおねがいっ)
[周囲の人、電車の音、注意喚起のアナウンス、さまざまな音でうるさい駅構内で、母の携帯電話から聞こえるコール音に耳をすませた。 すぐに『キルロイ先生』は出た。 男のひと。そんなに歳がいっているという感じはしない。]
あ―― あの 急にすみません。
アタシ、入間祥子の娘なんですけど、 母が、そちらにいっていませんか?
(250) 2016/09/28(Wed) 22時頃
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イルマは、キルロイが日本人で内心ほっとした。
2016/09/28(Wed) 22時半頃
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えっ……いや、ここにはいないけれど。
[電話の向こうの声は祥子のものではなかった。 娘と言われれば似ていなくもないか、と思う。 口調に焦りのようなものを感じ取り、逆に問いかける]
……入間さんに、何かあったのかい?
(251) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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……そういえば。
[間奏中、ふと思い立ち手を止めて、スマートフォンの液晶に指を滑らせる。アドレス帳には、見覚えのある 鈴里みよ子 の名前。ツテのひとつとして、あの晩、去り際に受け取った連絡先を登録していたのだった。
仕事が終わる頃合いを見計らって、自分からも礼を言おうか。それとも、急に電話をしたらかえって迷惑だろうか?
あの少し困ったような笑みを浮かべる顔を思い浮かべながら、アドレス帳を閉じると、メイントップに鎮座するLINEアプリのアイコンが目に飛び込んできた。
コメント数56。平日の昼にしては多い。プライベート用携帯といえど、LINEグループは仕事♀ヨ係のみだ。なにかあったのか。その理由は、キャノバメンバーのタイムラインを追うことですぐに分かった。
トップアイドル S の自殺未遂 (>>10)
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(252) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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゚・*まゆゆ ゚・* でも本当にリスカなのかな?ちょっと普通っぽくない?
■□ゆきりん■□ えー、なに?サクラコ系にしたいの? [*ポップな幽霊スタンプ*]
†てるみー† 意外とアッチだったり。自分見ちゃう系の
■□ゆきりん■□ "ドッペルちゃん"?
†てるみー† そー、それ!! [*指を指し示すスタンプ*]
゚・*まゆゆ ゚・* じゃあSぽんリニューアルして帰ってくるの?うけるー♪ [*煌びやかなお姫様スタンプ*]
(253) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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そう、ですか。
[電話先の声は、こんな電話に驚いているようだった。 落胆。すぐ見つかってほしかった。声のトーンが沈む。 それでも「入間祥子」の名前を否定されはしなかった。 入間祥子が知り合いのつもりで話してくれている。そこには安心を得られた。]
……えと
[どうしようか入間は迷った。 家であんなことがあった後だから、知らない人に話していいのかどうか。でも一人で、誰が誰ともわからず、母の知り合いなんて全然しらずに、どう無事を確認したらいいというのだろう。]
な、なんでもいいから知りませんか!? 何処に行く予定だったとか、 普段仕事でどういうところに行くとか!
(254) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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……死ねよ。
[液晶を睨みつけながら、足元のペットボトルを蹴り倒した。頭に血が上りすぎてくらくらする。
S とは知り合いと呼べるような仲ではない。 キャンディ・ノヴァのデヴュー当初、ライブで『IKB32』の前座を務めたとき、不安に耐え切れず、控室の隅で膝をかかえ震えていたジリヤに、優しく声をかけてくれたのが、IKBセンターのSだった。
"観客をぜんぶカボチャかスイカだと思えばいい" そう教えてくれた。
事件がおきた事情を知る由もないが、こんなくだらない笑い話のネタにされていいはずがない]
なにが……ドッペルちゃんだ。 ……バカ。
[ペットボトルの水を頭からかぶった。まだ先は長い。目の前のことに集中すべきだ。頭ではわかってもいても、苛立ちはおさまらない。その後の弾き語りには、一段と熱が籠った]
(255) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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[入間は不安から、結局さらに言葉を続けてしまい]
け、携帯が。 家に置きっぱなしになってて。 それで、 家に知らない人がいて。
(256) 2016/09/28(Wed) 22時半頃
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ジリヤは、イルマに話の続きを促した。
2016/09/28(Wed) 22時半頃
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ちょ、ちょっと待って、落ち着いて。
[娘と名乗ってはいるが、実際に会って話したことはないので確証はない。 ただ、不安と焦りが入り混じった声色は嘘を吐いているとは思えなかった]
仕事だとすれば出版社に居るか、印刷所や書店辺りもありうるか。 後は、他の作家のところとか。 俺の方も心当りにあたってみるから何があったのか……。
[同じアンソロジーに載せていた作家のところかもしれない。 あまり親しいと言うわけでもないがなんとか連絡をとってみよう。 そんな決意をしようとしていた所に、少女の言葉が続く]
(257) 2016/09/28(Wed) 23時頃
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知らない人? 空き巣とか……?君は大丈夫?警察には連絡した?
[どんどんと不穏な内容になっていく。 通話先の少女の身も心配になってきて、質問を連続で投げかけた]
(258) 2016/09/28(Wed) 23時頃
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キルロイは、ジリヤに話の続きを促した。
2016/09/28(Wed) 23時頃
みょんこは、ジリヤと東蓮寺に渡した飴がそういえば手元にないことを遅れて思い出した。
2016/09/28(Wed) 23時頃
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[ほどなくして、尻ポケットの中からバイブレーションの振動を感じた。こんなときに。心の中で舌打ちをひとつすると、ポケットから"仕事用"のスマートフォンを取り出した。色は淡いパステルカラーのピンク。着信画面に映された名前は、先ほどのLINEにあがっていたメンバー "ゆきりん"、秋川ゆき だった。一瞬、ムッとした表情を浮かべてから電話に出る]
……もしもし、ゆきちゃん?なに?
『あのさー、ちょっと言っておきたいことあんだけど…… あんた駅前でたまに歌ってるでしょ?』
うん。そうだけど、それで?
『なにやっててもいいんだけどさ。さすがにグループの新曲はまずいかなって。本郷に目つけられても知らないよ?』
え……え?なに?なんのこと?
『や、だからさ。シュガーキャット。駅前で、らぶらぶにゃんにゃん、してたでしょ?』
え、ちょ、ちょっと……まって、まって。全然わかんないんだけど? キャノバの曲なんて、あたし、やってないよ?
『えー、でもだって――』
(259) 2016/09/28(Wed) 23時頃
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『おととい、見たってさ。まゆゆの友達が。
新宿の南口で、らぶにゃんしてるジリヤ』
(260) 2016/09/28(Wed) 23時頃
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警察のひとには来てもらったんですけど!
[あの役に立たない警察! そう思って、つい声が大きくなる。]
その変なひと、アタシも最初泥棒かなって思って。 そのひとたち、す……すごく普通に台所にいて。
[思い起こすに、気持ちの悪い光景だ。 思わずそわそわと周囲を見回す。]
アタシの名前まで何でか知ってて。 そいつら、自分たちのこと、
――アタシのパパとママだっていうんです。
(261) 2016/09/28(Wed) 23時頃
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わからないなにか。
[冗談を否定するでもない、返事の一部を繰り返す。
――小学校の頃、 青年は、友達は少なくないが目立つ方ではない、大人しくていつも本ばかり読んでいる、似た齢の中では物知りとそやされるような、そんな子供だった。音楽に関しては、興味を持ったのは中学からで、その頃は流行歌も他より知らない位だった、けれど。 本に関して、知識に関しては、その頃から然程趣味は変わっていない。 だから、]
オカルト、好きなんだ?
[疑問形に疑問形で重ねた問いも、当時、いつか、口にしたそれと同じものだった。声の高低ばかりは随分違えど、調子も似て。 『紫鏡の話って、知ってる?』 『――は、いると思う? 幽霊、ってさ』 『この小説、怖くて、面白いんだよ』 そんな色々を、教室の片隅の少女に話していた、 古い記憶は青年の頭にこの瞬間は浮かばずも]
(262) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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あるよ。オカルト……ホラーもだけどさ。 そういうのは、好きで。 昔から好きだし、そう、結構信じてもいるな。
迷信なんかだって、別に、迷信深いわけでもないけれど。 ないつもりだけれども、ただきっと、 全く信じない人からしたら、迷信深いのかもしれない。 比較の話。例を言うならボクは、未だに夜爪を切らないんだ。
[笑う彼女に笑い返す、声色は楽しげに。 水晶を手に取るのを見れば]
そういう意味では、この店なんかは。 オカルトの宝庫、ともいえるかもしれない。
パワーストーンに、おまじないに、呪術、 その他諸々?
[並ぶ鉱石らを見やりつつ、戯れに続けた]
(263) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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そんなの、泥棒でも変じゃないですか!? 意味わかんなくって、怖くて。 怖かったし、ヤバい人たちかとおもって アタシ、母の部屋に隠れて、警察に電話したんです。 変な人がいるから来て!たすけて!って!
隠れてたから、警察がホントに来てたのかわかんないけど…… だれか人が来た音はしてたんです。
警察のひと、帰っちゃったみたいで。 その家に勝手に入ってた人たちに 「どうして警察にいたずら電話なんてしたの」とか そんな風に言われて……
[こんな話、子供の妄言と思われてしまうだろうか。]
(264) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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─ 新宿不動産・午後 ─
[山岸や雪野瀬らと別れたのち、予定通りに九段下の物件を実検し、契約の諸事を大家と交わして帰社したのは昼過ぎだった。 持ち帰った報告を上司に上げて、自席で資料を整えること暫く。
一息入れようとコーヒーを取りに行った休憩室で、オネエサマ方に捕まった。彼女らの前にアルバムが広げられている。 先日の社員旅行で、部長が撮った写真ということだ。>>84]
『それでね、焼き増ししてほしい写真を選んで欲しいんだけど。』
ああ、はい。 じゃあ、ちょっといいですか?
[断ってアルバムを手前に引き寄せる。 この会社では、契約社員とはいえこうした行事にも参加させられるのだ。小ぢんまりと親しみやすい会社とも言える。……建前の平等ばかり見せつけてくれるとも言える。]
(265) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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うん。 こうして言うと照れ臭いけれど、実はそうなんだ。 インディーズだけどね。ベースやってて。
――『解放治療カルテ』 ってバンド。 もし良かったら、ちらっと検索でもしてみてよ。 なんて、宣伝。
[その返答は小声、内緒話めかして]
(266) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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『ただねえ、みよ子さんなんだけど…、』
はい?みよ子さんがどうかしました?
『映ってないのよ、一枚も。 全員で撮った写真もあったはずなのに。』
へえ。写真に写るのが嫌いなんですかね。
『それでね、私見てみたのよ。 今までのアルバムを全部。』
へえ、全部ですか?
[正社員のオネエサマは暇なのか。 瞬間的に浮かんだ感想は、胸に仕舞って。]
(267) 2016/09/28(Wed) 23時半頃
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