276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[紅茶は血の匂いをうやむやにしたが、完全には掻き消してくれなかった。その緋色に引きずられるように、紅色の記憶がぶり返す。 それは未だ遠くから、けれどじわりと刺して締め上げる荊のように>>38、「欲しいもの」を認めろとばかりに鼓動を早めた。
そんな、耐えられる筈の衝動に火をつけたのは、唇に触れる指先の甘美さ]
――いらない。
[指に敷かれたままの唇が音を紡ぐ。 そして、どん、とオスカーを突き飛ばそうとする形で、マークは両腕を前に伸ばした。]
いらない。いらない。いらない。 僕は欲しくなんて、ない、……っ、
[もうその顔に笑みは無い。荒く熱っぽい息を吐きながら、]
(56) 2018/05/21(Mon) 14時頃
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フェルゼなんて、欲しくない!!
[涙混じりの、扉の外>>30にも聞こえるほどの怒声**]
(57) 2018/05/21(Mon) 14時頃
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メアリーは、イアンがいる中庭にまでは、流石にこの怒声は届かないだろう。
2018/05/21(Mon) 14時頃
イアンは、メアリーの声は、当然届くことはなく
2018/05/21(Mon) 14時頃
メアリーは、オスカーがどんな顔をするかも気にせずに、泣きながら吠えた。**
2018/05/21(Mon) 14時頃
ユージンは、イアンの声や顔に少し驚いた顔をして。
2018/05/21(Mon) 15時半頃
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[ そこにあったのは、珍しすぎるほどの焦燥(>>49>>50)。 余裕のある、大人びた、生徒会長の顔はなかった。
最初の頃は(>>0:253)そんな顔を見ていたかもしれないが 幾らか経てば(>>1:19>>2:213)やがて違う反応が増えた。
視線には気付いていた。 隣にいるときも(>>48)、そうでないときも(>>0:282)。 雨の降る日に佇む傘のない時を、可憐な眠り姫のいない時を 見計らっていたのも、───気付いてた。
それに、傲れていたのかもしれない。 ]
(58) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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ずっと生きろってなに謂ってんの。 大丈夫、俺はいるよ、ここに。
[ 咄嗟に出た声は、きっと本心から来るのだろう。 小さな瞳は薔薇を映すのではなく。 今は、目の前で必死になるいっちゃんを映している。 ]
あんな風に。 あー、……───モリス?
[ 今まで此処に居た癖に、知ったような言葉を溢す。 緩やかにフラッシュバックするのは、ずっとみていた二人の姿。 ]
(59) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ おかしいな、上手く────笑えない。 ]
(60) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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なんかね。すげー、むしゃくしゃしてさ。 いっちゃんは素直になれる相手、見付けたんだろ? 嬉しいことだと思ってたんだけど。 違うのかもしれん。
ねぇ、いっちゃん。
[ 離れた身体を追いかけるみたいに、隠せない傷だらけの手が動いた。 中に戻ろうと、心配する身体を掴まえて。 弱い力で、払われたらすぐに離してしまうような力で
一人の男を抱き寄せる。 ]*
(61) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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いっちゃんは、 俺のこと好きなんだと思ってた。
(62) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[あの時、中庭にいたのは ただ話をするモリスと、欲を抱いた俺。
彼はそんなつもりじゃ無かったけれど、 「汚れ」が何なのか知ってしまって、迫られて 望まない行為を受け入れた。 弱い部分を知って、認め合う。 本当はそういうつもりだったのだと思っている。 俺にとってはそういう認識だった。 怯えたのは、後輩に欲を向ける最低な男だと知られたような気がしたから。
でも、少し俺はズレていたような 知ったような言葉>>59に予感があって。 掴みきれない不安が、形になる────]
(63) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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なんで君がそんな風になる必要が、
[知られたのならば、軽蔑した筈だ 相変わらず自分が見えるものだけを信じていた。
その行動に驚き、弱い力にあっさり引き寄せられる 過剰なくらいに反応し、跳ねた身体は
次の一言を聞いて、硬直する。]
(64) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[心臓が止まるような、錯覚。
こいしいひとの腕の中で全てに気づいた。>>62
気づかなかったのは、 傷つけたのは、 何もしなかったのは、 表面だけを見ていたのは、──全部、俺。]
(65) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ああ、そうか。 傷を舐め合うみたいに求めるのは 自分を受け止めようとしてくれる人に欲を向けるのは ────普通じゃない。
“あいしてる”なんて言われたことが無いから 「イアン」と優しく呼んでくれる人がいないから すっかり忘れてしまっていた。
××するのも、想いを秘め続けるのも 元から資格すら持っていなかった。]
(66) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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っ、 は……
────はははは!!
[ 笑う男から漂う香りが変質する ]
(67) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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ケヴィンは、イアンの見えざる顔を思う。
2018/05/21(Mon) 21時半頃
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……そうだよ。 俺は君なんてどうでもいい、君に恋なんてしていない。
[蔦が首を絞め上げる 棘が全身を串刺しにする。 薔薇の花が嗤っている、錯覚。]
でも、勘違いしているところもあるなぁ。
(68) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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俺とモリスが両思いだって、思ってない? モリスは女の子が好きだし、 俺も誰のことだって、好きにならない。
あいつは被害者だよ。 そんなつもりは無かったのに、俺に犯された。
[俺の下で苦痛に耐えたあの子の為にそれだけは訂正する モリスは、隣に来てくれたがこんな男をあいしてはいない。]
俺は、男なら誰だっていいんだ。 そういうことが出来ればいい、そういうことにしか興味がない。 ……ね、気づかなかったでしょ。
(69) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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まあ、騙されていたのは事実だよね。
今度はさあ、もっと周りを見なよ 俺が来なけなれば、時間が空くし?
君のこと、ちゃんと気づいてくれて 傷つけずに守ってくれる奴がさ……絶対いるだろ。
[笑っているだけの彼が変わって 付けられた傷を誰かに見せれたのなら。 きっと、手が伸びてくる。 ……俺にどこかの誰かがそうしたみたいに。 俺との記憶は全部悪いものとして 腐り落ちて、流れてしまえばいい。]
(70) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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さようなら、俺のヴェリー。
[ずっと欲しかったものを払った穢れは立ち上がり
最後まで酷いことをされた被害者を置いて 振り返りもせずに歩いていく。
これはきっと最善の別れではないだろう。 もっと傷つけないやり方があったのだろう。 今まで間違え続けていた奴には、正答は見つけられなかった。]*
(71) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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―東屋―
───。
[去っていくフェルゼの背を追いかけはしなかった。 少し、なんだか疲れた気持ちになってピアノの椅子に腰かける。 腹が減っていると、神経がささくれくれやすいと聞いたことがあるのを何気なく思い出して食べ始めるのはもうすっかり冷えてしまったレーズンパン。 暖かい時のほうが勿論うまいけれど、冷えてもあの先輩の作るパンは旨い]
(72) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[言いたいこと>>173なら山ほどあった。 今更どうやって自由になれ>>174というんだろう。 短いとは言わないけど長くもないこの人生の半分以上は母親の感情に沿って生きてきたのに。 そんな風に>>175謝られたら、自分がどうしていいのかわからなくなる。
別に、奪われたなんて思っちゃいなかった。 父親がいないことがさみしいと思ったこともある。 母親をあんな風にした感情を怖いと思ったこともあった。 音楽を、演奏家になるのをやめようと思ったのも自分の意思だ。 彼に謝られるべきことなんて、何一つない]
(73) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[だから、思うのだ。 何が、君なら大丈夫>>56なのか。 オスカーの言う事なんてやっぱりあてにならないと思う。 黙々と、パンを口に運びながら考える。 反芻して、考えて、それから]
(74) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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…。 …俺が、間違えただけか。
[最後の欠片を食べながら、気付く。 優しくしてやれ>>54と言われたのに、できなかった。
それだけのこと。 何で出来なかったんだろう。 ささくれだった、この気持ちをどう表現したらあっていたのか]
(75) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[解らない。 解らないけど、疲れたときに腹が満たされたら、体が欲しがるのは睡眠欲だけっていうのは解っている*]
(76) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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── 廊下 ──
[流れる雫は床に落ちていくだけ。
鈍い動きで移動していくのは 啜り泣くような声と、弱い弱い薔薇の香り]*
(77) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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ベネットは、イアンにこの感情の事を相談したら教えてもらえるだろうかと、寝入りに思う
2018/05/21(Mon) 22時頃
ベネットは、ユージンが卒業する前に向日葵の種をもらえるかと、満たされた食い意地ものぞく。
2018/05/21(Mon) 22時頃
フェルゼは、ふと、思い出すのは友人の顔。
2018/05/21(Mon) 22時頃
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[ …薔薇の香りには、ずいぶんと慣れたものだけれど、 慣れるは、 慣れるで 弊害もあり
──── 堕ち行くような、 死に行くような 変質した其れさえ、鼻先で感じ取れ、
全く違う、暴力的な其れに、 脳味噌ごと揺らされるようだった。 ひたひたと何処かを目指した足取りは、 段々とおもく おもく、 ]
(78) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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フェルゼは、それすらも、また眉を下げて黙り込んだ。
2018/05/21(Mon) 22時頃
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 22時頃
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[ ぽつり、ぽつりと 聖書の一節を咥内で混ぜ、
おもたい足取りは また 一歩一歩、 どこかへ、 ]
(79) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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―東屋―
…流石に変じゃね?
[くぁ、と、緊張感のない欠伸ひとつ。 パンを食べて、腹が満たされてそれからそのまま寝てしまったことは覚えている。 ピアノよ済まないついつい枕にしてしまった。 けれど、体感ではかなり長い時間眠っていたように思うのだが、何がどうして、窓の外にかかる月影。 腕時計なんてする主義ではないので、もしかして朝と昼と夕方に自分が起きないまま寝ていたのではないかとすら思う。 休日はのんびり目覚ましをかけずに眠る贅沢とはまた違う気がした]
(80) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[明けない夜。 それは何が理由なんだろう。 建付けの悪い窓の隙間から忍び込んでくる花の香りは感情を豊かにはするけれど、腹は満たさない。 チョコレートを食べてもよかったが、かといってそういう気分でもない]
…。
[古ぼけたピアノの蓋をなぞる。 少し躊躇ってから押し開けて、紅薔薇みたいな色のフェルトをまくる。 すっかり飴色になった鍵盤は、自分が音楽をやめると決めたときからそう色が変わっているわけでもない]
(81) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 22時頃
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[少し爪の伸びた指先が、飴色を押し込む。 C。 懐かしい音だ。 やめると言ったくせに、自分の指先が音を鳴らせることにほっとする。
もう一つ押し込む。 C。 先ほどよりもはっきりとした音が東屋の屋根を震わせて明けない空に伸びた]
(82) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[ 香りが届ける音は、何処か慰めのように響いた。 ──君なんだね。やっぱり俺達、どこか似てる。
大切なものが失われたばかりの汚泥が まだ呪われたまま、満たされることを求めて彷徨う。 ]*
(83) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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[ 何かを欲しいと願うことさえ許されない。 許してはいけなかった。 誰からも奪いたくなどなかった。 そう、思わなければならなかった。
扉の開く音。 同時に聞こえてきた声>>57 誰のものだなんて分かり切っている。 眸を見開いて談話室の奥を見た。
何を言おうとしたのだろう。 分からない。喉奥が締め付けられる。 口端が不器用につり上がって それから息を吐いた。 ]
(84) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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――――ごめん、……ね。
[ 笑おうとしたのだと思う。 だが、その前にぐらりと水晶体から 零れ落ちた一雫が頬を濡らした。
訳の分からないまま走る羞恥。 眉間の皺が寄った自覚を覚えれば、 唇を噛み締めて。
咄嗟にその時見たのはマークではなく、 オスカー。 酷く傷付いた、と。 隠し切れない表情を晒す。 それをマークから背けるよう、談話室を飛び出した。 ]*
(85) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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