25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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― 自室 ―
うん……
[おはよう、と声をかけられる。 夢うつつに答えたけれど、起きる気配は無い。 くしゃりと乱される寒色が心地良くて、薄く笑みを浮かべたのは無意識下のこと]
――
[窓から吹き込む風は少し冷たい。 温もりを探した指が敷布をまさぐる。 寝返りをひとつ。 かけたままの眼鏡がずれ落ち、かちゃんと床を叩いた**]
(603) 2010/08/02(Mon) 16時半頃
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僕次第……? そうだね。いつまでも歌うだけじゃ、 きっと空を飛ぶ事は出来ない。
でも、僕は……。
[月光の下、伏せた紅石榴が睫毛を震わせる]
生まれた時から。 花と成れと謂われて育ったから。
[佳人の望む答えであったかは判らないけれど、 鳥は事実だけを言の葉に紡ぐ。
鳥自身の想いは、何一つとして表には出さぬ*ままに*]
(604) 2010/08/02(Mon) 16時半頃
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―A棟・個室―
[騒ぎには首を傾げたが自ら近づくことはせず。 道を違えて戻っても、今度は迷うこともなく。 迷うたのは何の道にであっただろう。
花に与えられた部屋の一つ。 構えて吹くのは古恋唄。 笛の最初の持ち主が一番得意とした物悲しい曲]
(605) 2010/08/02(Mon) 16時半頃
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わたしが先に出会っていても、恐らくはそう言ったろうね。 野辺の草のまま終わらせるには惜しいものだ。
[そう言われたは己も同じ。 ただ、己は野辺に放たれる事の許されぬ身ではあったけれども。
しばらくは彼を伴いて、満ち切る前の月を眺める。**]]
(606) 2010/08/02(Mon) 16時半頃
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―裏口―
まるで、私など存在していないよう……
[人の出入りを見つめていれば、 己の存在は酷く不確かとなり、自嘲する訳でもなく呟いた。 迷い子は何に迷うているかを、いまだ知らず]
―――……この、曲。
[夏の宵、深紫は過ぎて濃く暗くなりゆく空の色。 生ぬるい夜風に響く切なげな笛の音は、此岸と彼岸を吹き渡る。 散る花の定めを嘆くが如く]
(@56) 2010/08/02(Mon) 16時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2010/08/02(Mon) 16時半頃
本屋 ベネットは、ぱち、と一つ扇を鳴らす。廊下に、少しだけ響いた。
2010/08/02(Mon) 16時半頃
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[先程の鵠の言葉を思い出す。 色切子の窓硝子越しに薄い月を見上げて呟いた]
…商品価値なんて、関係あるものか。
[そうでなければ、あれほど長く傍に置くはずがない]
(607) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/02(Mon) 17時頃
始末屋 ズリエルは、どこからか聞こえる笛の音に、ほう、と呟いた。
2010/08/02(Mon) 17時頃
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―裏口― [明――と、呼ぶ者があった気がする。 それはいつの記憶であるかはっきりとはしない。 ただ親しげに呼ばれる名は、淡い期待をもたらした。
同時に少しだけ、不安にも なる。 ――それは日陰の椿の記憶]
――……、
[近く、呟く人の声を 聴いた気がする。 寄り掛かる物陰から、影はゆるり、身を起こす]
(@57) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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―本邸・裏口辺り―
[イアンを表座敷に送り届けたあと、ふらふらとまた屋敷を見回る。 ふと、少しゆるい風を感じて、向くと、 そこにはかつて見知った花の姿。]
ありゃ、やっぱ明(あけ)じゃないか?
[しかし、思う、明ならば、なぜ、奴は一緒ではないだろうと。 連れ歩くのが好きな奴だったはずだ。]
(608) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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―食堂―
[――りん。鈴が鳴る。 聞きたがる花主は、何を思うていたのだか。 頬杖ついて窓の外を見る。 月光。華月はまだそこにいたか。 いたならば、こう言葉を聞いたか。]
…――花の命は短くて、と 誰かが歌ったこともある。
それでも 花の己に、…矜持があるのだ。 笛も、舞も、…後ろ盾がなければ 続けるもままならず散るだけ――
[遠く、笛の音が響く。 己の相棒とは又違う音色だった。]
(609) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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[笛が聞こえる。 随分と古い曲だが、それはこのような場に 流れるには上手い選択だろう。 請うて、請われて、実る恋。
花と花主の関係は、それに等しいものではないけれど。
ぼんやりと考えているうちに、また手元で扇が一度、二度と音を立てた]
(610) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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[呼ばれたのは、親しげな呼び名。 ああ、やっと見つけてくれたのだ、と。 花は黒紅色を和らげて、ほころぶような安堵の笑みを]
――…主様、 お待ち申しておりました。
[それは知己であれば、 見覚えのある微笑みであったに違いなく。
少年は何処であろうと咲く椿―― 誰に対しても、芸を、笑み、を惜しまぬがゆえに、 野辺の花と変わらぬ と主に蔑まれたこともある ――それは少年自身も知らぬ記憶]
(@58) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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>>@58
[そして、振り返り溢す笑み。 かつて友人の傍にあった画と変わりなく…。
そう、そこに主たる友人がいないのが不自然に思えるほど。]
なんだ、明、おまえ、一人か? って…。
[だが、その儚く咲いた花が己を主と呼ぶのには、頬を一度ヒクつかせる。]
(611) 2010/08/02(Mon) 17時頃
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[宵の折、か細い月灯りの下、 少年の瞳は黒々と、ゆれる眼差しが覗くは、 此岸ではなかったやもしれず]
……主様が長らく戻られぬので、 ずっとこのように一人でおりました。
いえ、しょげてなどはおりませんけれど……
[白い小袖をふわりと返し、縋るようにその指先は、伸びる]
(@59) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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は?
[月明かりが薄いといえども、どう考えてもあの友人と自分が似ているとは思えず…。むしろ容姿は真逆にしか思えない。 だが、主と呼んで手を伸ばす明を拒絶ももちろんできず、
困った顔をしたが、それは強面はほんのり緩んだだけだっただろう。]
……明、お前、はぐれたのか?
[本当に珍しい。自慢の花で、いつもいつも一緒だったはず…。]
(612) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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―食堂→廊下 ―
…長居してしまったな。
[椅子を引いて立ち上がる。 りん――と鈴を鳴らし。 華月がまだいたなら、 お前はどうする、と尋ねる。
月があまりに綺麗であるゆえに、 庭にでも出てみるかと思うたのだった]
(613) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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[そろそろ宴は始まろうとしている。 花も、花主も。 そろそろ己の支度など始める頃合いではなかろうか。 なれば部屋に戻って少し休むもまた選択と足を動かしかけて]
…?
[パチン。それは扇の音。 少し奥のほうで話し声が聞こえた。 視線を巡らせ、何となくといった雰囲気ではあるが足を動かす。 見えた大きな背中は、研師のものであると言うことだけは 光量の少ない建物の中でもすぐに分かった]
(614) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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本屋 ベネットは、鈴の音色に、微かに足を止めて振り返りもする。
2010/08/02(Mon) 17時半頃
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[伸ばした手の払われぬこと、 宵闇に見上げたその面も確かに覚えのあるもの。 その困惑を感じることも出来ず、 亡霊はそこにただ己の望むゆめをみる]
はぐれたのは、私ではありません。 ――主様の方です。 そう…… かつては、私を閉じ込めるほど、 お傍に置いてくださいましたのに……
[拗ねた声音で、作務衣の裾を小さく握る。 ――研師は恐らく知らぬのだろう、 彼の知る主の元より、この花は一度学院へと戻された]
(@60) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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[そして、なぜだか、月明かりの中、 元々儚げな印象を見せていた少年ではあったが、その姿は一層、向こう側が透けるようにも思えて、 違和感にやはり眉を寄せる。]
はぐれたのは奴のほう? ああ、確かに奴は一時期、お前への確執がそれは酷かったな。
[明の主の明への溺愛は、時に異常とも思えるものも感じ、本人もその異常を感じた時、頼まれて明を数日預かったこともある。 その時、当時の己の花であった牟田と楽しげに過ごしてたこと思い出した。]
ああ、奴はお前をそれはそれは…うむ、そうか、はぐれてしまったのか。
[はぐれたという事情を聞けば、よしよしとごつりとした手でその頭を撫でる。
>>614そのとき、また別の方向から何かを閉じるような軽い音がした。 明を気にしつつも、そちらにも気が回す。]
(615) 2010/08/02(Mon) 17時半頃
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―A棟・自室―
やっぱり、好きだな。
[以前は好んで吹いた曲。友にも良く聞いてもらったものだ。 お前には似合わないと、初めての祭りで言われ吹かずにいた。 求められるような唄を。舞を。 そうすることでより彩を失っていると知らずに来てしまった。
笛を仕舞い身じろぐと髪が解れ落ちてきた。 窓の外も暮れてゆく。宴の前に整えようと頭に手を伸ばした**]
(616) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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―廊下― [ぱちん、とかすかに音がした。 鈴の音は静かに夜に落ちる。
なにやら月に照らされる しろ が 見えた気がして 誘われるように歩み行く。 途中、本郷の姿が見えれば丁寧に礼を向け。]
――… 明之進?
[向こう側の声に、 ぽつ、と 呟いた。]
(617) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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…そこで何をしている。
[別段咎めるつもりはない。 ただ、あの小さな花は主を持つのではなかったのかと思えば 自然とそんな声が零れた。
先程まで話をしていた鈴の花の姿に、 軽く扇を持ち上げることはすれど かと言って彼の行動を止めることはない]
(618) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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門下生 一平太は、メモを貼った。
2010/08/02(Mon) 18時頃
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[出戻りの身であらばこそ、 遠き外つ国の主のもとへと望んで召されたという伝聞に 周囲の者もさしたる疑問を抱かなかったのだろう。
学院へ戻った頃の萎れた姿は、友人も記憶に残していよう、 黄泉銀花の一枝を手に、理由は黙して語らなかった。
そのときも、慰められたのだ。あの笛の音に]
(@61) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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>>618
ん?
[そこに鋭い声がかかる。 いや、鋭くはなかったのかもしれないが、鋭く聴こえたのは、おそらく、やや、自分にやましい気持ちがあったのかもしれない。]
ああ、いや、この子は知り合いの花でな…。 こんなところで会って、吃驚しているのだ。
[それでもかなり焦った声に聞こえるだろう。 自分でもそう聴こえるのだし。]
(619) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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―――…奴? 主様?何を他人事のように……?
[ゆるりと傾いだ首、見上げる視界を影が覆う。 髪を撫でる無骨な手に、目を細める。 伝わる温度は、ひやりと冷たいものであっただろう]
もう、はぐれるのは、嫌なのです……
[握った裾を離さずに、うつろな瞳は砥師を見上げ続けて ――やがて響いた物音と、 呼ばれた名にゆっくりと眼差しを 向けた]
(@62) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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始末屋 ズリエルは、明の冷たさには再度驚いた・・・。
2010/08/02(Mon) 18時頃
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知り合い? …主を探している、と聞いているが。 まだ見つからないのか?
[大きな邸ではあるが、かといってそれほど人の出入りが激しいわけでもない。 刷衛の言葉に視線は彼の前にいる明乃進へと注がれる]
主の顔を見知っているなら、探すのを手伝ってやればいいものを。
[尤も、自分はそのつもりはないのである。 白拍子の主の顔も知らない]
…明乃進?
[白拍子は主と呼び、刷衛は知り合いの花と呼ぶ。 それはどういうことなのか。 幾らか険しい鉄色を薄暗い中で研師へと男は向ける]
(620) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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[呼ばれた名に、小さくこめかみを押さえる。 扇の閉じる音、涼やかな鈴の音]
――……鵠、殿?
[存在を見れば、ふわりと微笑う。 そして小さく頭を下げた]
あ……先ほどは、 ご心配をおかけして、申し訳ございません。
もう、大丈夫ですから。 このように……
[己が主と思い込んだ砥師を示し]
(@63) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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>>@62
明…おまえ、冷たいぞ? 何か病ではないか?
[手の冷たさにぞっとして、その額に手を当てる。 高熱かと思いきや、その頭も酷く冷たい。
そして、己を主呼びするのも、もしかすると病のせいかと考える。]
こんなところにいてはいかん。 部屋で寝てろ。
[はぐれるのは嫌と向けた眼差しに、ともかくは頷いて、様子を見てたらしい本郷と、別の花らしき男に、様子がおかしいといった視線を向けた。]
(621) 2010/08/02(Mon) 18時頃
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[闇の中、薄い月光に浮かぶ強面に 一瞬鵠は息を飲む。 だが、明之進は彼を主だという。]
…いや、気にせずとも、よい が
[なぜだろう、“存在する感じ”が 強面の男と明之進では、あまりに違いすぎた。 今の明之進は、まるで陽炎ではないか]
明之進、…
[視線を向けられて、おずと歩み寄った。]
(622) 2010/08/02(Mon) 18時半頃
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どういうことだ。
[そのまま、刷衛へと視線を向けた。 会話が食い違っている。
詳しい事を知るのだろうかと鵠へと視線を向ける。 歩み寄る様に、口出しはしないが]
(623) 2010/08/02(Mon) 18時半頃
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本郷様も――… 私の主様は、こちらに……
[蓮の舞殿の主が姿に、 亡霊は嬉しげに微笑みを見せる――
主と共に舞殿を、それは素晴らしい夢のよう。 この世ならざる浄土の ゆめ ]
[されど交わされる言葉。 額にあてがわれた手に、ほんのわずかに眉根を寄せる]
やまい……?
[ちがうと小さく首をふる]
(@64) 2010/08/02(Mon) 18時半頃
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